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新しい木のモノ造形才能のデビュー 記録 「木の椅子デザイン」「木のクラフトコンペ」 世紀末から創作ウエーブを辿るコンペティション歴史新資料 家具デザインベストブック-10
「実物モデルによる公募審査」というイス創作デザイン展やクラフト展は、世紀末からの「木のモノ」手仕事ブームに乗り、創作木工家達がはじめた作品展から全国公募企画展へと発展。デザインワークに伴う実作の在り方をしめすとともに、日本の家具デザイン史に好ましいものを残しました。木工の品格、家具・クラフツ、モダーンデザインや手仕事のイメージを向上させ洗練します。
「暮らしの中の木の椅子展」デザインの実作モデルコンペ 1998年から2008年まで、6回 10年間の運営とそのイニシエーション。
1998 年、名古屋市で開催された「木工家57人による木の椅子100脚展」を観た朝日新聞名古屋本社企画事業部の小倉利一氏が 筒井正久(大須木工屋正久)に椅子デザインコンペ・作品展の企画を打診し、木工家グループの井崎正治(工房塩津村)の協力を得て参画したのがはじまりでした。現在まで名古屋地域で開催されている「木工家ウイーク」の創始メンバーです。
当時、朝日新聞社では、長年にわたり事業として「朝日陶芸展」を主催しており、工芸分野の木工にも企画事案として取り上げられます。名古屋では、1998年から隔年、計6回が開催されました。
全国公募では、コンペ参加と作品閲覧者が増え、2008年には、作品展示会場は、国際デザインセンター(名古屋)、リビングデザインセンターOZONE(新宿)、札幌芸術の森工芸館(札幌)、長野県信濃美術館(長野)、小海町高原美術館(長野)と拡がり、木の椅子への関心が高まる様になります。
第6回では、作品の既視感、類似フォルムが多く、創作力が衰退してきた印象です。協賛広告が減って事業収益がみこまれなくなり、公募コンペは終焉しました。また、賞金や企業賛助、商品化の報酬特典はなく、表彰状だけのものでした。メデイアが文化的催事へコミットメントが出来た時代です。
デザインモデルの自作・他製 デザイン製品とアートクラフツ作品 創作工房手法と工場生産技術・性格の違い
応募審査では、デザインと制作が別でも同じ扱いで、外註でも参加出来るのため家具デザイン専問職からの参加が多くなりました。
造形デザイン力があり、実際に作れる技能を評価する実作展指向でしたが、誰でも参加できるデザイン偏重にシフト。はじめは、デザインも制作できる木工家の作品展の主旨でしたが、デザインコンペに変質します。既存のプロダクトデザインやメーカーアシストが認められ、作品を制作できない人も表に立つことになりました。まぜこぜ。
木工制作家の応募では、デザイン作画・図面だけでは無く、素材の調達から制作道具、加工機械設備まで自力で動かし実作します。制作を外註するのは、表現や実力の異なるものが入り込みます。イスの実用モデルは、構造耐久強度テストもクリアーしなければなりません。
作品の完成度や一貫性からみれば、家具デザイナーの基本的な資質は、実際に作れることです。嘗ては職人が流行を生み出してきましたが、図案、意匠専業が起きると制作現場と離れた分業化が起きて工業大量生産へとシフト。手仕事とは、性格が違う方向です。
「部門審査でカテゴリーを厳密に分けないといけない性格のものだった」「コンペ準備有力メンバーが選外とされてしまった」という関係者のストーリーを聞いています。受賞・入選者の連絡先アドレスや制作メーカーの所在は記載されませんでしたので、コラボレーションやオーダーに繫り、製品化できるコンタクトチャンスは少ないものでした。
その後、数年間は販売されていましたが、在庫処分されてなくなりました。(印刷部数も限られた限定版)
6回分のデザインコンペ記録資料として、オリジナル作品が多い年度のものを「創作家具デザインベスト資料」としてストックしています。新聞社では、直ぐに在庫を処分してしまいバックナンバーが手に入らないままでした。
□ 保存版のストック 4冊
1998 第1回 暮らしの中の椅子展 作品集
2002 第3回 暮らしの中の椅子展 作品集
2004 第4回 暮らしの中の椅子展 作品集
2006 第5回 暮らしの中の椅子展 作品集
発行:朝日新聞名古屋本社企画事業部
デザインコンペ受賞・入選者にその後の展開、コンペの効用を聞く
このコンペにエントリーして入賞・入選作品が掲載されている友人に、事後のサクセスストーリーを聞くことにしました。以下、その所感です。
国際的に著名なコンペの入選であったり、国内で有数のコンペでもグランプリ級であれば、メディアにも紹介され輝かしい実績となり、その後の展開も期待できます。仲間内では、それなりの1つの評価基準として観られるものの、それが一般社会へと拡がるということとは違い、リアクションは少なく、かなり限定的です。つまり、コンペ作品をオーダーしたり、メーカーが作品を市販モデルとして引き受けることはない。評価名誉を得て、実力才能の公的な証明となり、経歴を飾ることはありました。また、メデイアの工房紹介取材を受けることがあります。自営、インデペンデント、フリーランスの仕事は、自力自助の波瀾万丈、命かけでやめられません。
コンペそのものにも、様々な批判もでることは事実ですが、審査基準が曖昧だったり、師弟関係から選考が左右されたりとか。作品の販売や経済的メリットを訴求することはさらに難しいのです。つまり、リスクと貧乏の隣り合わせ、クリエーターの宿命ですね。
家具・クラフトに関わる高い水準の良いコンペの有用性や直ぐには見えない造形推進力については疑いの余地はなく、目的や審査規範には高度なものが望まれます。優れたアイデアでも、完成度はむしろコストアップになり、商品化モデルとして姿をみることは稀です。
全ての作品をみた後で オリジナリティと完成度をレビュー
・イメージが既製モデルに似ていないか 類形・既視感
・納まり・細部にちぐはぐなところは 無理へんちくりん
・誰がつかいますか どこで使うのが一番ふさわしい
・制作数は 原材料・価格バランスは
・現在も使われていますか
・この制作技術は新しい形・バリエーションを呼ぶ余地は 伸び開花
・制作手法の応用は アイデアの拡がり
・強度試験をクリアーしたか 耐久性を検証
・発表後の注目、注文、問い合わせは
・また造る意欲はありますか リバイバル
・この作品は人や仕事を曳き寄せる力があるのか タイムレスデザイン
友人に尋ねると、現在でもオーダーがあれば造り、個展に出し、定番レパートリーに入っています。手を動かしてきた制作者だけが知って居るストーリーがありました。エントリーだけでも人に出会うコンペは有意義です。
②「木のクラフト」コンペ記録
第1回 2000年 テーマ「21世紀木の文化」(小田原小木工品 情報発信・交流促進事業 / 展示会場:小田原アリーナ)テーブルウエアー部門、インテリア部門、観光工芸品部門 創作クラフツ公募の 作品コンペ
第2回 全国「木のクラフトコンペ」All Japan Wooden Crafts Competition 2002
テーマ 「人+木= 休らう」 主催:小田原 箱根木製品フェア2002 実行委員会 ISBN 4 – 901217 – 05 – 4 C3672
発行:社団法人 箱根物産連合会 平成14年 210 x 296 x 5Tmm (ストック数冊)
③ 高岡クラフトコンペ 入賞・入選作品の記録
「新しいクラフトをもとめて 工芸都市高岡 2003 ・2004 ・2005 ・2006・2007・2008 クラフト展」 TAKAOKA CRAFTS EXHIBITION 2003 – 2008
工芸都市高岡クラフトコンペ実行委員会 構成団体17 展示会場: 2003 大和高岡店 6F大ホール 他 p.71(2003)- p.56 (2007) 211 x 298 x 7 Tmm
高岡市は銅器工芸産業が盛んな地方です。行政や業界が一体として工芸品振興に取り組み、このコンペは、2017 年まで継続して運営されてきました。木のモノは、漆工・テーブルウエアー、小木工、クラフトが選考され、金属・陶芸・ガラス・染織部門など実力派の制作家が多い印象です。作品記録は、フォトグラファーの「ブツ撮り」センスも光ります。「物」がよいとグラフィックデザインも仕上がりは一段とよく、編集も上々。創作記録がアートクラフトやデザインの軌跡、ヒストリーとなる木の文化基盤は健在です。
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木の総合学研究 2018 「木の椅子展、クラフトデザイン」「プロダクトデザインコンペティション記録」「木の家具・クラフツデザイン 創作コンペ作品記録とベストブック」「 Wooden Chair Design and Crafts Design Competition in Japan 1998 -2017 」