〈木〉と人間のかかわり

案内状より

日本の文化は「木の文化」といわれます。衣食住の全てにわたって木を利用してきた伝統的な環境も、戦後の経済成長の中で無機質化が進行してきました。自然回帰、人間の感覚や生体としての要求を尊重する傾向が高まる昨今、天然素材の再評価が叫ばれています。

この催しは、単に過去の伝統をなつかしむだけではなく、木と人間生活の深いかかわりあいを見なおし、木の可能性の中に改めて将来のデザインの手がかりを求めようと企画したものです。

主催

日本デザイン学会

後援

通商産業省、林野庁、文化庁、朝日新聞社

協賛

京王帝都電鉄

企画・総合ディレクション、シンポジウム司会、デザイン

阿部藏之

 

記念講演・シンポジウム

「技術史から見た木と人間のかかわり」
京都大学人文科学研究所長 教授 吉田光邦

「アメリカにおけるハイテックと人と木」
プラットインスティチュート大学 助教授  大館年男

「李朝家具の意匠と文化的背景」
梨花女子大学 教授 裵 満實

 

「総合シンポジウム 木と技術・木と造形・木と環境」

司会
阿部藏之

パネラー
共立女子大学教授 秋岡芳夫
(財)日本住宅木材技術センター理事長 上村 武
朝日新聞社 編集委員 大谷 健
大阪市立大学 講師 北浦かほる
埼玉県立近代美術館 館長 本間正義
千葉大学工学部 教授 成田寿一郎

<木>と人間のかかわり展・1985

 

 

 

Aゾーン 材料と道具を中心に木のイメージを展開する。全国の木を一同に集め、表情や香りを味わいながら、天然素材から木の新素材までを体験する。

Bゾーン 産業や技術に主眼を置き、木の物性・加工技術・製品特性を紹介する。食文化との関係、音の領域、スポーツ・動具、先端技術の中の木の高度利用に着目し、木の多面性、多用性を暮らしの中に見る。

Cゾーン 人間感覚に調和する木の重要性を強調し、遊びのデザインや造形作品、教育分野での木の役割をとりあげる。木に関する情報・資料も提供する。

企画主旨より

高度経済成長によって、日本の産業・社会構造や生活文化は、いちじるしい変貌をとげ、物質的には豊かな時代・高度工業化社会を形成した。しかし、その反面、経済効率や便利さのみでは評価しきれないものが見過され、古い時代のものが急激に消えていった。

環境問題やオイルショックの経験を通して、「品質」や「健康」・「食」への関心が高まるとともに、かけがえのない自然・緑への回帰傾向・フィードバック現象も見られるようになった。

日本文化は、「木の文化」といわれる。古代より、「衣食住」全てにわたり木を利用し、その恩恵をうけ続けてきた歴史の流れの中で、無機質工業化材料に囲まれた現在は、資源の高度利用や人間の感覚・生体としての要求に従って、再び有機天然材料への傾斜をはじめ、確かな本物を求めてその軌道を修正しつつある。人間のバランス復元力として、「木」への再評価・再発見は、電子機器・情報化社会のハイテクノロジーを人間の感性でつつみ、ハイタッチな生活を具現するための必然的な道程として明確な位置づけられるであろう。この展示イベントは、「木」と人間生活の深いかかわりあいをみつめ、豊かな未来デザインの手がかりをめざして企画された。

JSD デザイン学研究 50号掲載・小論文
(日本デザイン学会刊)

木と人間のかかわり

阿部 蔵之〔AQデザイン開発研究所〕

生体としての人間の基本的な生理機能・形質は、古代より変わらない。しかし、この20世紀後半の工業化社会の出現は、生活空間に著しい変容をもたらし、かつて人類が体験し得なかった化学物質や電子機器等による放射光線をあびることになった。新しい加工食品が開発され食卓に上り、人工環境・無機質合成材料にかこまれ居住する場合の人体に与える影響や行動形態への変化要因は、まだ未知のものが多い。

同様にデザインも経済的効果から過度に商業化されハイテクノロジー文明と密接に結びついており、中枢体系部分でひとたびアクシデントが発生すれば、この高度情報化社会は、便利さや合理性の裏に機能がマヒし脆くも根底から破綻するという危険性をかかえていることも事実である。人間の生存は、循環生態系の一要素であり、人類の歴史・文化は、自然の中ではぐくまれ、木によって衣食住全体にわたりバックアップされてきていたが、いつの間にか、石油・電力文明の発達に連動せず、「木」の有用性が意識されることも希薄になってきている。「木」は、人間が増殖・再生産できる唯一の素材であり生産活動やデザインに欠くことのできないマテリアルであるが、同時に緑や森林をはじめとする生活環境系全体からも極めて重要な役割をになっていることを常に念頭に置かねばならないであろう。

木や緑を嫌い、拒絶反応を起す人は、ほとんどいない。むしろ、木は身近で人間感覚に最も調和する素材であり、物性上も2~3の例外を除くと安全・無害が定性である。木に対する物性上の研究は多いが、人間の感性・心理・精神面での考究は十分にされていない現状をみると、今後の研究テーマには、多彩で奥行の深いものがある。

より豊かで安定した社会を形成するためのフィージビリティスタディとして、デザイン分野から「木」と人間とのかかわりを総合的に取組むことは、あらゆる産業のテクノロジーや文化的特質を把握し、学際・業際分野の人々との親密で意味深い交流をもたらすことにつながるであろう。家具・木工研究部会メンバーは、6ヶ月にわたるブレーンストーンミングやマーケットサーベイを重ね、コンセプトの具体化作業に着手し、現在から過去・未来の2方向へ視座を向け、人間がいかに「木」を高度利用し依存してきたかをクローズアップすることにした。通常の見本市形式ではなく、1985春季大会の基本テーマにふさわしい文化的催事としてプランニングを行った。各専門分野の方々へ協力を仰ぎ、展示物品は、技術水準や品質が高く業界におけるファーストポジションにある企業体を選定し、直接に協賛方をお願いすることにした。展示構成は、基本アイディア・ガイドラインを設定し部会側からの提案を織り込むとともに、テーマゾーン相互間に整合性をもたせ、全体の流れの中で「木」の諸相にふれることができるように配慮している。折しも「人間の居住」をテーマとした科学万博つくば’85が開催され、国際森林年のプログラムにも合致することとなった。この研究活動が進捗するにしたがい、新しい時代へのメタモルフォーシスの過程で、様々な問題を止揚するひとつのヒューマンデザインメソドロジーとなりうることを予感している。

 

ポスターのデザイン

 全体を本のブックカバー・背見出しに見立てて、画家・安野光雅氏の画集「蚤の市」からイラストをお借りした。生活用品や身の回りの道具には『木』がたくさん使われてきたことを表現。駅や車内吊り広告など各所に掲出された。

グラフィックデザインと、安野光雅氏への交渉を阿部藏之が行った。

関連資料

開催企画・提案バインダー

PDFダウンロード(A4/34ページ/13MB)>

 

■ 関連コンテンツ:

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成功した「木と人間の関わり展 1985」企画書の著作・デザイン・版下制作_印刷・発行_日本デザイン学会春期大会 家具・木工部会主催| Proceeding of the 6th annual symposium of the JSD.    The beginning for an exhibition  TO HAVE, TO BE WITH WOOD 1985  for comprehensive research.  木の総合学域研究の始まり

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