「木」の道具・工具ジョイントシステム木工

楔からスパイラル・ネジ締め付け機構の先史発明  穴堀り棒木に石錘を緊結 木工ジョイント-21.

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

 現代のファスナージョイントは古代の楔から始まり、文明を飛躍的に発展させる重要な役割りを担い、いまなお工業製品の表には見えない主役です。電子機器を発展させた回路ボードテクノロジーは、基板精密ドリル加工を経てSMT表面実装ソルダリングがコアー技術にシフトし、そのベースには木工技術の基盤がありました。接合、圧着嵌合やネジ型工業用ファスナー類のアセンブリー技術が集積した主要産業分野となり、ジョイントシステムのルーツをシンプルな木の棒状道具にみることができる。楔・ネジ締まり螺旋の発明はノーブル賞に値する人類のテクノ文明起源。

「木に石をつなぐ」ノックダウン構造の祖形「楔」から「ネジ」ジョイント機構へ

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南アフリカ ブッシュマン族の種植え穴堀り棒

s:「技術の歴史   A History of Technology」図33 を模写   Carles Singer 他 編 Oxford: Clarendon Press,  筑摩書房   1978-81

 「棒木に石をくっつける」身近にある自然素材を使い、取り付け位置は好みで、使う時だけ組み立て、分解できる携帯性はアフリカの大地にふさわしい造形道具です。古代技術には、宝石の穴空けや石貨幣制作技術がありましたから、石の真ん中を刳りぬき、ドーナツ状に加工するのは容易い。石器時代から木器時代、農耕具への利用が緊結技術を飛躍させ、進化を物語る道具を再現してみました。実際につかうと、繊維・繩結びでは衝撃振動ズレが起き、ガッチリ緊結固定しないと使い物にはならない。適時、木楔の形を整え、固定位置を無段階で動かしバランスを調節できます。自然のサイクルでやがて土に帰る、人類が考案したシンプルな道具の最適な形です。
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 白御影ドーナッツ
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 黒御影ドーナツ
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砂岩ドーナツ
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 アフリカのアートクラフツイメージ
石錘は、種蒔き用穴ならば1.5kg 程度でも十分です。御影石は重く、衝撃力は農具より武具に近い感触。ブッシュマンの農耕具が記録されたのは20世紀後期ですが、長い歴史の中で原形のまま伝承されてきた結合分解メカニズムと見ることが出来ます。結び・接着と同様に文明の源流からつながる工作物ですが、重さが2kgを超えると落とした時に足指がつぶれる怖さがあります。楔の削り角度や地面の固さや穴の深さでサイズや石の材質を調節したはず。アフリカの農具や民具には、自然の制約をいかした造形デザインが沢山あるのです。
復元模造
棒:元径 38mm ー 末12 x 1,255 Lmm  白樫  楔:20 – 11 x 311L 白樫半月割り – 約70g
錘石:外径 140 x  内径55 x 70 H mm  白御影 2kg   黒御影 2.5kg  砂岩 1.6kg
石工制作:伊藤石材店  伊藤博敏
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ストーンドーナッツのオーダメイドは白御影でしたが、職人的作家の血が騒ぎ、黒御影と砂岩の形違いを用意してくれたのです。制作費は、¥5,000- でした。20000824AQ

楔からスパイラル・ネジ締付ジョイント機構へトランスファー

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 現代のファスナーに最も多く使われているネジ型緊結ジョイント機構、その高度に発達した技術の歴史の源流にある姿は、楔テーパーの単純な形でした。円柱に巻き付けるとネジの形になり、ネジ山の原理を目に見えるかたちで分解すると「楔形」に行きつきます。
始めは、枝や打ち砕いて角度がついた木片を挿入・引き離し・戻す動作から、締まり嵌合する事を直感的に有用性を知り、さらに押し回す締め付けが出来ることを発見、応用経験から回転締め付け構造・螺旋ネジ発明へとつながっていきました。形態が機能を誘発する段階を経て、新しい使い方が触発されていきます。
 木の幹に絡む蔓や挟まった隙間に木片をいれて浮かしたり、締め付けたりする作業からも、先細楔形が役立つ道具になることを思いつくのは自然な成り行きです。先突形の棒が突き刺さすだけでなく,抉り回したり梃や打撃具になることを学習。棒の先端に機能パーツを作造することも覚えて棒柄付き道具の発生起源となりました。はじめは自作ですが、体得した加工技術の集積とともにやがて専業が生まれ、楔のテーパーからネジ型締付けへと技術の高度化・ジャンプがはじまる。現代のジョイント機構は多種多様ですが、埋蔵遺産からも技術の歴史・系統を遡るとことが出来ます。まさに棒屋の歴史は長い。
 古代の木工技術・建築架構は、結び縛りから継手・組手へと進化していきました。穴あけドリルは、円筒軸にスパイラル螺旋溝を錐っていまますので、現在でも回転刃切削の恩形を引き継ぎ、遠く楔の起源をルーツとしていることがわかります。DNAと同じ螺旋構造なのです。力学的な知識も実際も構造モデルで見ると、楔から螺旋ネジの密接な関連が理解しやすい。
 古代人は、金属加工を手に入れると石割りの楔、緊結用の楔の発展へと進化して楔・ネジ締め付けの構造原理を知ることにつながって行くのは、ごく自然なプロセスです。ネジ締まりの事例は、1,500年前古代マヤ文明のリオアスル墳墓出土品「ネジ蓋式壺」(アメリカ大陸最古の宗教儀具)にも見ることが出来ます。
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  ネイティブアメリカンは、開墾して地面を堀り耕すと大地を傷つけるから「種蒔き用の穴掘り棒」が活躍していたといいます。日本では「ドン突き棒」宇治茶畑日除け用の柱立て「穴突き棒」が有ると、ふと先日、ラジオから聞こえてきました。石材の接合・組積み方法は、繩などによる結縛、ダボ・契り・鎹がありますが、錘石を楔止めする発想や民具はまだお目にかかりません。石のドーナッツは遊びを誘う形ですが、時々、重石にも使えます。

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木の総合学研究 2015 – 2019 「木と石のノックダウンジョイント」「楔とネジ締め付け機構の連関」「棒道具の起源」

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