18. 水枘(みずほぞ)

漢字の「水」の字を形象した枘型。両方向に傾斜した枘と中央の真っ直ぐな枘で構成され、組み上がり後に、水の字が現れる変形枘の基本形です。斜め枘との間にストレートの枘を組み合わせるので、収縮変化・ズレを抑制するので安定した構造になります。

「水」は、指物・大工の仕事では、「水平」や重要な意味をもち、炭火を使う長火鉢には、落とし枠を「水枘」で組むことで「火」を抑さえるという意味付けを込めています。「ことば」は、技法だけでなく、その仕事の世界独特の意味合いがあり、仕事のプロセスの中にメッセージや手順・コツが連綿として受け継がれてきました。

 

この枘型には、技術の応用展開する上で重要ななノウハウが秘められていますので、系統だった「型」を修得しないと次の高度な技に進めない課程があり、特異な高度の技法だけを表面的に真似しても、仕事が続かなくなる怖いDNAが潜んでいます。

門外不出の秘伝として代々継承されてきた組手技法の系譜は、江戸時代後期に、この水枘までが外部に漏れてしまったので類似の工作法が拡散したという口伝があります。「水は漏れる」。

模様類例:「水印提灯」町方火消し用具・器材