33. 菊枘(きくほぞ)

菊の花をモチーフにした枘型です。大輪の花弁を形象し、洗練された意匠を構造と一体化した組手。この立体図は、組上がりの横位置ですが、起こすと花が立つ形に見えます。通直の小ひび部分は、10,5mmの幅に10枚の挽き込み線が入り、茎をイメージしており、繊細な線が交差側にでて、端正な菊の花姿が表に現れます。斜めの枘外形エッジや通直な部分は、挽き込みが乱れると形が崩れるので、極めて精巧な仕上がりが要求されます。

菊模様:小袖や小紋をはじめ、印半纏・江戸切り子(ガラス細工)、錺(かざり)金具や組子・欄間彫りに菊の意匠が多く使われています。菊の花作りは品種も多く、趣向をこらした紋章から装飾工芸品まで多種・多様な形が生み出されました。

「菊枘」は、江戸時代の菊ブームのなかで生まれた粋なデザイン・究極の木工技術ということができます。