「・・・の木」「木」とともに生きる木と人間の関わり

「○○の木」樹木が育つところに人は生存することが出来る。木と人のかかわりの表現と解釈・仮託「木然・人然」の事象から

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

有史以来、樹木と伴に生きてきた「木の民 」「木人」の原生イメージ・意識を可視化することから、生命維持資源の利用と基層文化の成立、環境依存による思考への反映、美の生成、価値観の位階、信仰や慰安の対象、技術の歴史・イニシエーションを知ることに繫がる。樹木が消滅すると、全てを喪失するダメージ感覚を引き起こすのは、全能的な存在感や生命観の基軸が崩れることに近い。

「樹形」を使うと自然のイメージを違和感なく共有して、誰にでも理解しやすい。遙か昔から恩恵を受け、親密な存在であり、立木は安全で居心地よく有益であることを動物本能で直感でき、寄り集まる場となっている。無害安全、非攻撃・無抵抗が定性であり、命の拠り所であった。

樹木は根を下ろし、移動せず成長し天空に伸びて再生循環、自然界の中枢で生命環境維持を担う。花や果実を賞味し、棲まい・道具を造り重要な生存資源としてきたが、かぶれることはあっても、木をみて拒絶反応起こしたり、嫌悪する人はいないことは、人が出現した時から木の生態系に組みこまれていることを意味しているのではないか。木に寄り添い、人は生ることができる。

樹木とのかかわりに固有の名詞を付けるのは、その性格や特長・用途、解釈や意味づけをする意図が込められています。存在してきたことは、何らかの意味や理由があり、記憶や記録に残ります。

生命力を有機的な固有のイメージとして際立たせ、潜在意識に働きかけるものが導き出されます。豊かな命の表現に集積され、多様性に富み、木と人の関わりの

「○○之木」

「の」助詞・格助詞は、内容や塲所・時・位置・方向を示し、性格・所属・状況・対象、材料、属性を表します。樹形は全体を形づくり、まとまりや繋がり、根元起源と分岐・端末の関係を示し、集合・統合するシンボルやランドマークにも使われてきました。

「○○之木 The Tree of ○○」

・「生命の樹」エジプト古代遺跡絵画 紀元前16世紀
・「エッサイの木」 旧約イザヤ書  臍の緒と系統樹宗教イメージ画
・「治療の木」「医学の樹」チベット医学 四部医経典タンカ 絵解き副読本 17世紀

・「篭の木 BASKET – TREE」   by Geroge E. Fowler 「Earth Basketry」  Osama by Gallinger Tod 1933 West Chester, Pennsylvania ISBN 0 – 88740 – 076 – 0

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・「緑の木」 フィラデルフィア火災保険会社 契約家屋表示サイン

・「栄光の樹」 ベルリン五輪金メダル副賞OAK 田島直人選手京都大学植樹 1936
・「アンネの木」アムステルダム隠れ家のマロニエ  「アンネの日記」より 1959
・「Clothes-tree 洋服の木」Pierre Faucheux, Paris 1959 Pritze Design for Modern Furniture ,International Competition for Low – cost Furniture Design MOMA NY.

・「嫁の木」 小説「紀の川」有吉佐和子 嫁は実家から接ぎ枝を持参し柿とともに暮らす 1959 新潮社 TVドラマ・映画化

・「思索の木」都市建築構造エッセイ標題  曽根幸一  「木」1968 – 5    篠田銘木店 No.43

・「お母さんの木」児童文学 大川悦生作 箕田源二郎(絵)ポプラ社、1969年 ISBN 978-4-591-01143-7 映画化

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「雨の木を聴く女たち」大江健三郎の連続短編形式の長編小説 1982年発表  Rain treeは、 実在の樹

「お母さんの木」柿産地岐阜県巣南 カキ婦人学級の基準樹 2000 01 現代農業

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「鳥の木 BIRD TREE」オブジェ「鳥さがし」15歳 S:工作工芸の基礎2. 木  高山・坪内編 開隆堂出版(株)1971

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「Bird Tree」デザイン:福田繁雄 1974 季刊デザイン第4号・冬 美術出版社

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「魔法の木」デザイン:福田繁雄 1974 季刊デザイン第4号・冬 美術出版社

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「キャンディー・ツリー」「リスの木」デザイン:福田繁雄 1974 季刊デザイン第4号・冬 美術出版社

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「Vogelbaum」Erich Pollack. Wein 1981 S: Holz – Spielzeug aus aller Welt Kunstverlag Weingarten 1983 ISBN: 3 -921617 – 68 – 5

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・「生命の樹 THE TREE OF LIFE」「イメージの博物誌-15 中心のシンボリズム」から

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・創造力の樹
・中心の樹
・豊穣の樹
・上昇の樹
・願いの樹
・天上の樹
・テューバの樹

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・悟りの樹
・賢者の樹
・生涯の樹
・生と死の樹
・仏陀の樹
・セフィロトの樹
・さかさまの樹
・供犠の樹
・知恵の樹
・歴史の樹
・魂の樹
・光の樹

・家々の木

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ART AND IMAGINATION by Roger Cook

Thames and Hudson London 1974 日本語版:植島啓司訳 1982 平凡社

「TREE PEOPLE 木の民 」

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・守護の木
・神の木
・儀式の木
・雷神の木
・精霊の木
・祭壇の木
・運命の木
・崇拝の木
・幸運の木
・伝統の木
・村の木
・奉仕の木
・崇拝の木
・名誉の木
・育成の木
・魔法の木
・家庭の木
・家族の木
・一族の木
・分身の木
・感謝の木
・思出の木
・自分の木
・十字架の木

S:「Puiden Kansa (Tree People)」 by Ritva Kovalainen & Sanni Sepo 1977 Finland

日本語版「フィンランド・森の精霊と旅をする」訳:柴田昌平 プロダクション・エイシア 2009 ISBN 978 – 4 – 903971 – 01 -8

 

・「木靴の木」 Italy映画 1978  エルマンノ・オルミ監督作品

・「絞首刑の木 arbor infelix」 S:「DE GERMANIA LIBER」 Publius Cornelius Tacitus 紀元98 岩波文庫408 -1 1979

・「知恵の樹 EL ÁRBOL DEL CONOCIMENTO」by Humberto Maturana, Francisco Varela 1984 朝日出版社 ISBN4 -255 – 87028 -4

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・「子供の木」 岡本太郎 1985 岡本太郎美術館

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・「灯障りの木」 和庭園の灯籠前に木を植え、火袋に枝がかかる重ね、見え隠れの美を演出する造園技法。1989
・「鍛冶の木」 白鷹幸伯 鍛冶職 削ろう会武生レクチュア配布資料 1991

・「ゲームの木」 I.Stewart S: SCIENTIFIC AMERICAN October 1998

・「うわさの木」(根も葉もないのに良く育つ)サラリーマン川柳ベスト10  1999

・「願いごとの木」by TINA SEELING 2001 スタンフォード大学集中講義 What I wish
I knew when I was 20.

・「気の木 Soul Trees」2003   ・「集いの木 A tree for gathering 1988」  制作:島添昭義     記憶の模型 里文出版   2006 ISBN 4 – 89806 – 256 – 3

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・「パンの木」 創業100年 Zürich下町のベーカリーショーウインド 20040614AQ

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・「希望の木」絵本 Cicles of Hope Karen Lynn Williams & Linda Saport 高岡美智子訳 2005 PHP 2005
ISBN 4 – 569 – 7810 – 0
・「ハンカチの木」白い花が苞片がハンカチをつまんでぶら下げた形から。「中国西部原産のデビディア・イヌォルクラタ種」2006 産経新聞コラム

・「夜の木 The Night Life of TREES」 インドの版画集 tara BOOKS Pvt.Hd. India 2006

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・「歌の木」THE TREE OF SONGS  同上

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・「陶酔の木」THE TREE OF INTOXICATION 同上

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・「原爆の木」Alex Nabaum Nuclear sense by Max M.Kampelman International Herald Tribune April25, 2006
・「群蝶の木」目取真俊 作 小説 トリッパー夏季号・2007
・「こころの木」 読書感想文感動大賞 東邦ガス 20070701

・「煙の木 Smoke tree」ベトナム戦争小説 Denis Johnson  白水社 2010   一般俗称樹名
・「陽だまりの木」 TV ドラマNHK 2012
・「想いの木」ゲームコンテンツ AEON 100万本の植樹活動2013
・「チューインガムの木」Achras zapota  チクルの原料をとるアカテツ科

・「両想いの木」信濃吉田の鉄柵抱え込みのプラタナス 樹齢八十年余 毎日新聞長野版 20090307
・「生活の木」 コミユニティトレードでシアバターを保湿剤にした石鹸、ローズウッドからとれるエッセンシャルオイルを販売する企業名 20090323 サンケイ新聞

・「文字の木 WordTrees」 I REALLY ENJOYED IT. LIBRARY FEELS LIKE HOME.

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S:CREATIVE REVIEW : THE ANNUAL2010

 

「詩の木の下で」

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・山路の木
・寂寞の木
・秘密の木
・奥つ城の木
・東雲の木
・水辺の木
・石垣の木
・ブランコの木
・啓示の木
・虹の木
・手紙の木
・切株の木
・彼方の木
・モディリアーニの木
・ブリビチャの木
・カロの樹
・コンスタブルの樹
・フリードリヒの樹
・オキーフの樹
・セザンヌの樹
・クリムトの樹
・落ち葉の樹
・寓話の樹

S: 長田 弘 作品 みすず書房 2011  ISBN 978 – 4 – 622 – 076665 – 0

・「だっこの木」 絵本 宮川ひろ作、渡部洋二絵 浅草銀杏・戦災樹木の本 文渓堂 2011 JSBN 4 – 89423 – 648 – 6

・「希望の木」 つなぐ希望の木 東京新聞 Webフォトギャラリー 記念や歴史、災難を乗り越える生命力に託したシンボル保存樹のシリーズ記事 20111107
3.11 東北大震災記録 赤松の記事・映像・本

・「壽の木」 中国貴州トン族の来世の為の棺材地杉の良材を自然乾燥ストック 「一番広い杉の森と不思議な暮らし NHK BS TV番組「地球にイチバン」20120119

・「パンの木」ベーカリー店名

・「陽だまりの木」 TV ドラマNHK 2012
・「想いの木」ゲームコンテンツ AEON 100万本の植樹活動2013

・「デザインの樹」  エッセイ 原 研哉  図書#800   岩波書店 2015- 07
・「カ」の木  メンケの森の 聖樹 Yel Ka Forest  ミクロネシア連邦 TV報道 2015

・「願いの木」 現代アートNY  Yoko Ono June,2015

・「幸福の木」 観葉植物商品名

・「哲学の木」ベルグソン

心象・イメージに言葉の衣を着せて、樹木を強く意識するのは、どのような目的や状況で生まれ、いつ頃なのか。有史以来の宗教・産業技術・芸術・生活・医療・教育分野など、意味付けと様々な民族や考究していきます。時代背景や風土・民族・文化・宗教・アーティストなど専門分野による違いも見出すことができます。

木の枝分かれ・元末を描く系統樹的表現は、根本から本来の時間推移と関係性を説明する手法として宗教や科学分野で使われています。

数万年の歳月を樹木と密接に暮らしてきた人体には、親密な生活圏で深く染み刻まれた生理機能、感性や形質まで影響を受け、ハイエンドの姿が宿ります。自然界の恵みを受け、命の営みを持続する生存の糧とし、産業文化を進化させた結果、樹木を素材・物質的経済的価値へ偏り資源・商材と観るようになりました。

再生循環系の生存基盤が揺らぎはじめ、人知風土は連鎖して荒れ狂う。根源的な生命観・心象は拠り所を失い彷徨う。空気や水のように無尽蔵に見えた森林は、僅か200年前には恐ろしい異界でしたが、現代では地球規模で保護しなければならない。高度経済成長期、大量生産消費時代から環境や樹木にまつわる無理な出来事が多くなりました。

「木」は自然の仕組みで知性を呼び醒まし、人を豊に支えてくれます。

*木は,化学的、実用的利益を与え、暖炉のように人間を暖めるだけでなく魂を暖める。そして、人生の美的な歓びの最も必要なパートである。
Besides giving me its chemical and utilitarian benefits, like the fireplace that ” warms the soul as well as the body ” the tree and its wood area most necessary part of my life’s aesthetic enjoyment. S: 「A REVERENCE FOR WOOD」Author’s note  by Eric Sloane 1965 Ballentine Books, N.Y.

樹木に対する安全で親密な感覚は、動物の原生的依存からはじまり、根源的つながりが引き継がれ、自然物への体感価値や親和性が強まります。刺激は増幅され、ミクロの体細胞レベルまで活き活きして輝くようにみえます。印象だけでなく、リアルな増進作用は、微細でも好ましい効果が起きてくるようです。

*掲載した個別の事例は、実際の資料で辿り、知ることができます。19世紀以前の図象は研究途中にあり、未出の事例は随時補完します。

ⓒ 2016 , Kurayuki, ABE

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木の総合学研究 2016 – 2019   「木と人のかかわり」 「木と宗教・哲学・芸術表現」「樹態表現・木の造形」「樹木テーマ」

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