クラフトフェアデザインの目工芸

クラフツ作品発表の場・好ましい展示構成を観る目 造りたい意欲、売れ筋を意識しないスキルは才能を感じさせ説得力となる。CFM 2016・続  C/R 工芸家育成アワードの選考基準

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

 クラフト展示・造形作品に値段タグをつけると、作品は商品イメージとなる。観賞対象を品物選び買い物に変えてしまう。出展を出店と間違えて。

売るための展示構成ではなく、自作をアピールして視線を集めていた幾つかの小間が目に止まりました。来訪者は、開始時間前から一斉に出動。寄り付き、人だかり切れ間無く,人出が切れるころには、作品は 売れて無くなり、日が落ちくたびれ、記録本位のカメラマンに徹するのは難しい。

そんな時、注目された作品や良い感想を聞くと別の視方ができるので、再び足が向いて行きます。作品に値段表示をつけないほうが「売り場感」は低減し、好感度が高まるようです。先達常連が見て歩き、好ましいと言った事例を掲載。クリエーターやキュレーターの視点から。

好感度・好印象をうける作品展示に共通しているもの

① 造りたいもの、既視感のない造形・手仕事。難しいものを正面からチャレンジ。(K)
② 作品発表の場であり、小間物、雑貨荒物類に手を染めず、スケールが大きい。(K)
③ 前例類似のない創作で、売りに依り傾むかず、才能を評価してもらう姿勢。(A)
④ 主力作品を魅せ、値段は表に出さない。手にとってから見えるがよい。
⑤ 時間をかけて到達した仕事ぶり、手の痕跡が語りかけエネル技溢れる。
⑥ 尖った若さ、型にはまらない年配にも刺激的な感性。(T)

作品発表で多くの人に観てもらう期会。本来は、造形センスや手工才能をアピールするプレゼンテーションのステージなのです。

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加生智子
白樫牡丹・欅・桑・コナラ 堅木縦・横木取り、轆轤挽き物 木理を魅力的にビッグサイズにチャレンジ

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安田ジョージ
異質素材ハイブリットで迫力を纏う異色のアニマル造形エネル技。鰯の首掛けは意外性、生々しく初見。「ソフトアクセサリ」の登場。

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studio fujino   藤崎 均
材質感を尊重し、高い精度のカテゴリーを拡げた安定感のある修行を経て 素材を曲げない丁寧な造り。
開閉機構金属パーツは、そのまま使わず、もうひと仕事。金属工芸加飾も木工技能の内にあり、膠接着・金物自作で完成度をあげる余地。木工芸には金物装美がツキモノ一体。

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アトリエMORO  秋谷茂郎
手美ねり再見、伊藤五美から触発されて以来、独自の手法・型を見出し上達しました。並べるだけでもレパートリーは察知できるけれど、工房制作プレゼンは未出。売り場ではないのですから。

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吉澤裕子
あれやこれ沢山あるとうるさく、手仕事の良さが混濁します。シンプルで心地良い雰囲気の単品展示は印象深い。アダンの葉編み

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上田裕之
丁寧な鍛造造りは、鋭い刃物感・無機質金属をあったかい雰囲気に。妥協しない鍛造工房の空気を伝える。

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大久保ハウス木工舎 大久保公太郎
左キキ用も配慮。手数は多く、篦箱荒物休む間もない水車小屋。作家的職人をめざして邁進中。

 

因みに、The Krenov Foundation (College of the Redwoods ,CA)のAward 2016 選考基準は

Selection Criterias

① Demonstration Craftsmanship /Talent – 30%
② Relevance of Residency to Professional Goals – 30%
③ Financial Needs – 25%
④ Letter(s) of Recommendation – 15%
クラフツマンシップ・才能を感じさせる作品プレゼンの要件は普段の工房生活から滲み出てくるものでしょう。大変な努力が人を魅了することは、どの分野でも共通です。「クラフツフェアまつもとアワー奴」にも参考にしたい。

作品鑑賞や評価の別間帶があれば出展参加者も交流できる

全ての出展作品と訪問ゲストシーンを記録するだけでなく、優れた才能に出会うには、専門職・ベテランの評価印象や視察意見が役立ちます。順次撮影していると、気がつかず、見逃しがあり、視点は偏好的に。観賞して後から引き返すと、作品はドンドン売れて撮影未了になります。遊行・催事の記録は、静止カット・物撮りと違い、人の動き次第で構図が変わり、待機していることが困難。毎年、出たとこ勝負で巡ります。

作品鑑賞や評価の時間帶がないので、素速く観て回るも疎漏があり、観客に紛れて撮影していると同じような作品イメージで既視感が重なり、類型化してきている事を感じました。画像ビューだけでなく、直に作品説明をうけ、工房を訪ねないと本当の作品評価は難しい。

展示作品の撮影は人出と共に難しくなり、数量が多くでると主張や見栄えが食い合い邪魔します。見逃しがあり、観賞していると作品はドンドン売れて撮影未了も。

アナウンス・かけ声も無く静かな会場でゲストが寄り付き、そぞろ歩く流れもでき混雑するほど。購入客応対で作品解説もゆっくり伺えない。静々と移動する来訪者は、品選び・買い意欲ランラン。フリーで一日楽しめる心地良い文化的遊行フィールドとなりました。

ゲストも出展参加者もゴミ・ノイズを出さないことも定着しています。展示台倒壊もありません。嘗て、ここは青年の学窓勉学の跡地で文教文化を支えてきました。

クラフトフェア出展者の意識・理念と「出店・公園直売所」行列の違和感ざらつき

展示会場に買い物待ち列ができるのは、数年前から気がついていました。
マスコミで有名な評判のプロの指導的陶芸工房という。上手な作品が列び、
直売所で店舗よりお買い得人気。午後には売り切れて作品も無くなり閉じました。
屋外直売所として収益が相当あり、毎年エントリーしており審査が問われます。
並んでいる買い物客には好評でしたが、本来の開催趣旨を逸脱しそぐわない。

作品の造形デザインやセンス、才能・手仕事を観てもらいたいアピールしたい人は、展示も作品オンリーで地味になり寄り付き話しかけにくい。

商品販売目的の売り場風展示ならば。手にとり見やすいので来訪者は立ち寄り無言で済みます。値札をあからさまにしていない展示ブースは、作者と会話するので寄り付きにくいようです。

すっかりモノ売りに占拠されているオープンスペースを作品展示・交流の場へ戻すためには、参加制作家の意識を本来の趣旨に沿い才能を魅せる場であり、商才が目立つとうるさくなってきます。営利目的ならば、他の類似イベントが沢山ありますから。

Crafts 工芸は、人を惹きつけ楽しませる。

学生時代に読んだ本に「ホモ・ファーベル Homo faber 工作人」がありました。人間の知性の本質に創造的なモノつくりが備わっているというベルグソンの哲学的な解釈ですが、アートクラフトは人を惹きつけ楽しませるものがあります。「用の美」は難解ですが、素敵な好ましい手仕事で生活を豊かに彩る平和な時代の姿を反映します。
個性が尊重され、創造的な造形活動としてカテゴリーが拡がり、社会的な信頼性を得るムーブメントへ発展してきました。
「クラフト」を嫌異する人はいないので、集客・イベント企画に組み込み、営利を狙う御仁が寄りついてきましたが、姑息なプロヂュースはやがて疲弊、離脱して行きます。

総人出は一万五千人増え「人酔い」するほどでしたが、管理モードを抑制し、ざわつかず整然としたスタッフメンバー運営はお見事。「作品発表の場、個展の集まり」としてきた非営利の基本姿勢を一貫して崩さないことも大事です。スピーカ放送は「養護担当呼び出し」だけでした。当初から指導的振る舞い、干渉統率管理を抑制しているのです。

ⓒ 2016 , Kurayuki, ABE

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木の総合学研究2016 – 2019  「クラフツフェア展示構成の印象と評価」「木工用金属工芸ワーク」

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