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日本の木工圧締具「端金ハタガネ」は、あまり大事にされない端役も寸前で無ければ困り慌て、仕事は進まない。クランプとは、ひと味違う半端ではない係止締め付け機能をユニバーサルデザインから再評価  ネジ締め付け・カシメジョイント機構のベストハンドツールコネクション-16

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

Jハタガネは、嵌め合わせ・締め付けから外しまで素速く係止、仮締めも即座に外せ、締め直し後もアジャストできる。修複・組立てに便利で丈夫で能率的。平型コンパクト、収納場所を取らず、強引につぶすような力ずくトルクではなく、ほど良い圧締力の日本のハタガネは作業ダメージが少ない。本来の優れた使い易さをアピールし、品質を高め再興したいユニバーサルハンドツールの一つです。

普段は、あまり大事にされない端役で注目されず、意外に本数が必要で、いざ足りないと大変困るもの。サイズやモデルの違いを揃えると、置き場所も費用も半端ではありまっせん。

「端金ハタガネ」の考案と普及から衰退へ 産業事情

 江戸期からの紐固め縛り工法が洋式家具の流行で時代に合わなくなり、ネジ螺旋締め付け具「ハタがね」が考案され、常用道具として広まるのは大正期でした。加工部材を合わせ挟み固定し、取り外しが素速くでき、かさばらず、シンプルな構造で締め付け力がほど良いハンドワークツールです。わずかなズラシぐらいなら、ハンマーで叩ける適当な緩さが持ち味。

明治時代には、洋家具と渡来とともに刃物・道具類も輸入されても、従来の切削工具は、そのまま応用がきき、西欧化することはありませんでした。

 江戸・明治初期までは金属バーで締める道具はなく、板幅矧ぎは「太紐縛り固め」でした。良質材に恵まれ、膠・続飯を使う指物木工技術に「切った貼った」も最小限でした。膠は抑えて直ぐに初期接着力が適度にあり、高度な組手技術がある日本では緊結締め具はさして必要ではなく、昔から発達しないまま無風で幕末まで続きます。

家具生産が増え、木取り数量が多くなると材料を有効利用するため、板厚・幅矧ぎ接着作業は増大し、仮締め定寸幅カット、接合作業が多くなると専用の押さえ締めるクランプが必要になります。

当時、欧米のネジ締め付け機構を改良した木工用締結具は、その便利さから一気に使われ出し、どの作業塲にも必需品となります。新製品、改良モデルチェンジが続きますが、スタンダード化する時期に速乾接着剤の登場とプレス機が使われ始め、次第に需要は減り、拡大発展の道を閉ざされました。因みに、ハタガネは小僧・徒弟の仕事でした。

使う人が減り、売れないので製造販売がとまり、見たことも無いと、いつの間にか廃れてしまう。上質の製品が消えると安い粗末な代換え品が跋扈してきます。真鍮製は材質が柔らかく、品物に傷がつきにくいので、無理な締め固めを避ける融通性があります。造りの良い真鍮製定格モデルは、需要が減り姿が消え、現在では廃番や店頭販売されていないものが多くなりました。

ハタガネに関する製品技術資料が少なく、惜しまれて20世紀末に消えてしまったた実物モデルの記録とクランプを併せて掲載します。ネジ締め付け機構とカシメジョイントのシンプルツールデザインとして着目しました。

ミニサイズ・小型端金の真鍮製、とりわけ締めネジ・ローレット頭は、海外向けモデルで丁寧な造りの「豆端」は、微妙な締めつけができる。当時、ハタガネ製品の中では、菱HS印が品質が高く、造りも丁寧で定評がありました。細工や修複用にも復刻再登場させたい貴重なミニモデルから。

豆端・ミニ 小端 中端

 

①豆端ローレット頭:呼び寸:三寸112mmL・五寸160mmL 棹(軸)■一分3mm角 押さえ金五分 22g /26g   締めネジ M3.7/M2.8   M3.7/ M2.8   真鍮磨き仕上げ  菱HS印と蝶印  TOKYOオリンピックの頃製造。

 

②小端 蝶ネジ(ハート型鋳物): 呼び寸:五寸・一尺 170mm – 300mm L  棹■4mm / 5mm角 押さえ金7x 22mm/ 8 x 27mm   53g / 107g    菱HS印:締めネジM4 / M5   蝶印: M6.8 / M4.4  真鍮磨き仕上げ

  

③小端 蝶ネジ(翼型)  呼び寸: 六寸180mm/ 七寸230mmL  棹 ■ 4mm角/ 5mm角 蝶印・ 菱HS印 押さえ金 7 x 22mm / 8 x 25 mm  締め付けネジ 径 M6/4.5  M6.5 /M4.7    57g / 88g   真鍮磨き仕上げ

 

④小端 蝶ネジ(翼型)  呼び寸: 六寸180mm 棹 ■ 4mm角   蝶印 締め付けネジ 径 M6.5 / M4   57g   真鍮磨き仕上げ

⑤小端 廻し腕ネジ(ハンドル型)  呼び寸:七寸230mmL 棹 ■ 5mm角   菱HS印 締め付けネジ 径 M6 /M4.5   88g   真鍮磨き仕上げ

 

HS印は、最上質品として評価されていました。真鍮棹(軸)は軟らかいので留め傷がつき易く、ズレ止めの受け穴ぐり(30mmピッチ)を付けたり、締め金を一定にホールドするリンクをつけるなど、改良新製品でコストダウンや利便性をたかめる工夫がみられます。

製品仕様の違い

数社の製品をよく見ると、マーク刻印位置と締めネジ頭形を微妙に変えています。外形が似ている製品は、細かなデティールに違いを出し、そっくりさんは業界の良識節度で棲み分けしています。品質差が値段の違いでした。

大端

 

⑥大端 蝶ネジ 呼び寸:2尺 600mmL   当て金リンク付き   棹■15 x 6mm角 菱HS印 亜鉛クロムメッキ仕上げ 締め付けネジ径 M8 /M5   尻固定穴 φ5 – 9  30mmピッチ 690g

⑦大端 廻し腕ネジ(戻りハンドル)呼び寸:4尺 1300mmL    棹■ 19 x 9mm角  菱HS印  亜鉛クロムメッキ仕上げ 締めネジ径 M14/ M12  尻固定穴 φ5 – 6   43mmピッチ 2.4kg

⑧締めハタ Gluing Clamp 使用品  I.6mL x  (棹軸)9 x16 x115Hmm   ハンドル回転スリーブ付き・実用新案第8349号   3kg   KEIBA 印 (廃番) 接着剤汚れ・錆つき

二本一組、使う本数が多いので箱買いでした。真鍮製は直ぐにくもる。仕舞う内に鉄製はサビ付き、綺麗な姿は短く、出動活躍より待機時間のほうが長い消防のようだと。置き場所は隅っこで埃をかぶる運命でした。

欧米型オールドクランプ  Iron Bar Clamp とTow -bar Clamp

■欧米のクランプ事例

S; Old Ways of Working Wood by Alez W.Bealer 1972   Barre Publishing Company,Inc. NY  ISBN: 0-517 – 517426

三点締め縦型 木製バークランプUSA    締め付け設置不安定

Tow – bar Wood Clamp  8″ / ”6″  Jorgensen  USA PAT. (白樺材 China Copy品)

逆対向締め付けインチネジ 7/16 45x150 x 30 x 420 Lmm  クロスインサート丸ナット組み合わせ」 900g / 35 x 156 x 31 x 310Lmm  418g  (当て間隔調節ズレ穴ざぐり加工)嵌め込み締め付けは手こずり、落ち着かない。

Pony Clamp USA  スティール鋳物・ガスパイプ3/4 “   締め付けトルクは高いが、無骨で傷がつき繊細さに欠ける、大型長尺板矧ぎ用。ストッパー先端エッジがパイプ表面をソギ、金屑粉を落とす。

■桐箪笥板ハギ用「はたがね」東京型

松本箪笥店 1934年「日本箪笥の制作仕上法」松本朝之助著 /1960 年「桐箪笥のデザインと制作法」松本錫蔵著

■工房春夏秋冬  藤原哲二の当て金傷防止「木鞘 」ハタガネの改造

 

 締め付け力が強いと僅かですが材面は痩せます。当て金に木製鞘をつけて傷を漬けない独自の配慮です。アテ金に刃モノが触れても刃こぼれはなく、ハタガネを丁寧に使えるので作品は自ずと綺麗で良い仕上がりになりますね。この木鞘の考案で端金の完成度が上がりました。

藤原さんは、松本民芸家具工場長を経て松本民芸家具市川教室・ (有)筑摩民芸家具を経営された市川棟雄に師事、22年間勤務後、独立して活躍してこられたベテラン木工職。近年は機械・電動工具を使わない、卓越技能と自然素材の魅力を尊重し、無理のない手仕事を続けています。機械を凌ぐ手業の練達が望ましいという姿勢です。

クラフトピクニック2018  参加出展 木挽き製材・木工実演   20181013ABE

工房: 長野県松本市寿小赤 848 -3  TEL: 0263 – 57 – 9696

締めハタ「端金」を使う職人とクランプを揃える木工人

道具は、制作技術を習得した塲所で大きな違いがあります。親方筋を引く人と学校で履修した人では、道具だてが異なり、相伝されていく目立たない道具にも仕事の本質が乗り移ります。汚れをとり、磨けば綺麗ですから、鉄くずにしないでいただきたい。

棹(スライド軸)に当て金と押さえ金を装着し自在に締めつける西洋型木製クランプ

 欧米型ダブルクランプ締め付けは、ネジ廻し作業にかなり時間がかかり、手が疲れます。素速い圧締が出来ないので、大正時代に当て金・押さえを軸にスライド式にしたシンプルな使い勝手のよいモノを開発し普及させました。考案は、古いIron Bar Clampの締め付けネジを上にして両端ではさむ構造に改良したアイデアです。締め付けネジ部を外側に出すことで定位置で同等の締め具合を揃え、締めと分離して両側ではさむことで自由度を高める、機能性は遙かにアップ。(大正時代の実用新案)

端部に「押さえ金」を当てるので「端がね」と呼び、板矧ぎ接着の便利な道具を拡めました。一気に使われ出し、旗の棹先に止め金をつけた形から「ハタガネ」にピントくるイメージも重なります。(「カネ」は矩・直角度とも語韻が繫がります。)

■自家製木製クランプ 日高工房 2005 -2015 

A アサダ・真樺材、 市販汎用ネジパーツ使用  M8 x 165(くわえ顎フェルト貼り)270Lx165x19mm   284g – 293g   (P1.25  スチールユニクロメッキ+鬼目ナットD M8 x 20 )ダブルクランプは、締め付け調節、ネジ廻しに時間がかかります。道具は安易に買い揃えるのではなく、小型ならば自作自前でコストセーブ。

 

B Two -bar Clamp アサダ材 真樺 木製ネジ切り M12 (P.3.0)x220mmL  288g – 292g

C  Wooden C Clamp  アサダ材 182 x 24.5 x x 330mmL   259g   ネジ部 M8

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木の総合学研究2017 – 2019 「木工圧締具ハタガネ・クランプ」「ハタガネとクランプの違い」「和洋締め具の比較・製品来歴」「ベストハンドツールコネクション」

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