ジョイントシステム修複・保存木工産業イノベーション

精螺・締め付けネジ部品から接合組立用「ジョイントシステム」への発想転換 ハイエンド木工ジョイントシステムの開発イニシエーション 1978, 2017

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

ネジ締め付け着脱・テーパー楔作用の原理は、古代のインカ帝国遺跡発掘品にもみられ、人類史上、道具メカニズムの偉大なイノベーションでした。ジョイント部は、構造物を成り立たせる最も重要な接合部ですが、切り欠き応力集中により最も傷みやすく壊れ易い。木工・住設建材・家電産業用のネジ型ジョイントシステムは、ユニバーサルアセンブリーパーツとして業界のスタンダードになりました。

現在では、ネジ型ファスナーは非常に多くの種類がりあり、大型架構物建築から工業デザイン、精密機械・電子IT機器のマイクロジョイントまで「ネジなし」では成り立たないほど。この基本ジョイント機構が現代の高度工業化社会・機械文明を支えてきましたが、ハードだけでなくデザインアートテクノロジーからも再構築して、更に総合的な専問性を高めたいと思います。

因みに、「ジョイントシステム」「ジョイントテクノロジー」の造語は、木製家具の接合構造全体を一つのジョイントアセンブリー機構としてとらえるため、1974年に私がネーミングを考案したものです。以来、産業基幹部品として製造・販売されてきました。ボルトとナットの商品名がプロだけでなく、一般にも普及していき、やがて「普通名詞になり、多くの産業分野で構造基本部品として認知されるようになりました。一般に「ジョイント機構」は、構造体の強度や耐久性を左右し、架構方法、組立ツール、工程そのものに影響してきます。更には、点検修理やメンテナンスの付随作業性、デザインや外観、品格を支配します。

「締め付けネジ」から「木工用ジョイントシステム」へデザイン・専問高度化を図る。「ネジ屋がジョイントシステムという新次元プロダクト製品をサプライ」が インターツムメッセで注目されニーズが拡がりました。

家電・住設建材・木工産業用の汎用ネジ製品を締め付け緊結・装着パーツとしてだけでなく、デザイン・構造・材料・仕様別の組み合わせで選択できるように互換性をもたせ、分解移動、修複も保証する先駆的な使い方を提案するとともに、相互の組合わせが拡がる接合システムとして使える合理的な構造手法を実用化しました。海外見本市でもスンナリ受け入れられ、クライアントのメーカーは業績を伸ばし、このジョイントファミリー製品は増えて、取付け金具というイメージを大きく変えることに繫がりました。「ネジ」という標準工業規格部品のデザインを構成するハードウエアー、要素ジョイント製品に仕立てたわけです。

「埋め込みナット雌ネジ」を鬼目インサートと言い替え、係止機構の違うタイプや「ジョイントコネクターボルト」という商品カテゴリーを設定。締め付け・アセンブルイメージをまとう造語を創作し、新しいKD ノックダウン用金具のネーミングをつけました。

「精螺」や「ネジ」では古めかしく、当時のモダン工業デザインにはしっくりしないので、ジョイントという総合的なイメージを打ち出したわけです。当時は、まだ国内に活字鋳造工場があり、ナット類は製品化するのに好都合でした。単価が低い量産パーツですから、信頼性と品質が高い精密ダイカスト技術を蓄積してきた専業サブコントラクターの存在が重要なのです。

ユニバーサルデザインテクノロジーとしてのアプローチ

1970年から、物と物を繫ぎ構造体を支えるジョイント機構の重要性に着目し、デザイン開発業務のメインテーマにしていました。単純なネジ締め廻転作業ならば誰でも出来ます。ボルトとナット相互の組合わせが広く、身近で便利で安いユニバーサルタイプとして推奨。ジョイントファミリー製品は、家具・音響・家電製品のデザインとハードウエアーイメージを大きく変えることに繫がりました。

  

「埋め込みナット」を鬼目インサートと言い替え、係止機構の違うタイプや「ジョイントコネクターボルト」という商品カテゴリーを設定。締め付けアセンブルイメージをまとう造語を使い、新しいKD ノックダウン用金具のネーミングをつけました。「精螺」や「ネジ」では古めかしく、当時のモダンインダストリアルデザインにはしっくりしないので、接合ジョイントという総合的なイメージを打ち出したわけです。1974 – 1981 「木工用ジョイントシステム」の開発プロジェクト ジョイント設計アプリケーション・専問解説文・コピー・翻訳・作図・版下制作・印刷管理・カタログ類デザインを担当 :GUD 1977 – 1981  (株)村越精螺製作所  / (株)ムラコシ )

時は流れ、最先端の修複・保存額装アートワーク、工房手法やアーキテクチャーにふさわしいジョイント部デティールにフォーカス。

先日、MoMA ニューヨーク近代美術館修複師と共に上田美術館を訪問した際に、修複保存額装の専問家工藤正明氏からConservation Framingの解説がありました。アート作品をいたわり、最善の展示環境で収蔵保存する額装バックアップユニットの埋め込みアセンブルインサートを「鬼目」という呼び方をされており、既に埋め込みナットの名称として通用していることを知りました。接着剤を「ボンド」というように、商号が緊結金具・ボルトナットファミリーの普通名詞になっていることと同様です。当初のプロダクトデザイン開発と販売から40年あまり経過した現在も供給され続け、次のステージへと飛躍移行していくべきタイミングとも重なりました。保存額装ワークに投影されたアーキテクチャーには、新しい独自のジョイント構造パーツが生まれてくる気配を感じます。(保存額装ワークショップの訪問見学記録は、http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/17925 に掲載。)

アート作品の保存額装をアーキテクチャーとしてとらえ、作品にふさわしい高品位ハイエンドジョイント機構の共通標準仕様を確立するために、信頼性や、専問性を高める専用ハイエンドハードウエアーの開発が必要になります。部材コンポーネントのユニバーサル仕様、推奨構造等の提案など、現業工房手法から、テクニカルイニシアティブにつなげて行きます。

従来の接合金具・ボルトナットネジ類は、最低限の品質と安全性を考慮した標準規格でした。長期間保存と修複・再生を前提とする貴重なアート作品の装着アセンブリーには、材質と加工精度や耐久性も最上クラスの品質が要求されますから、ローコスト汎用市販パーツの使用は避けたい。量産家具用構造ジョイントのクオリティでは、ブランクの材質、精度、表面処理・耐久性に問題があり、アート作品用のアセンブリー金具は、更に格上の高品位部品が必要になります。ネジ型ジョイントは、世界共通規格が整い、造り変え・代換え部品も使えるという最も信頼性があり、追い締め取り外しも可能。汎用普遍の優れた締め付け接合デバイスとして評価されます。デザインのカナメです。

これから、保存額装やアートワークの分野では、共用できる世界品質のハードウエアー、ハイエンドパーツ仕様のコンセンサスと要請がでてくるでしょう。国内市場だけではニーズが限られ、ワールドクラスのジョイント製品になれば、供給製造メーカーも成り立ちます。長年にわたり集積してきたジョイントデザインノウハウとデータベースを活かし、ハイエンド・ジョイントシステムの実用化を手掛けたいと思います。

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木の総合学研究 2017 「ネジ締め付けによるウッドジョイントシステム」「木工用JOINT SYSTEM」「アート作品用高品位ハイエンドジョイントシステムの開発」「Screw Joint  Fastening」「AASCFI: Art – Archi Scientific Conservation Framing  Initiatives」

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