「樹も涙する」ヒマラヤ松の台風揺振倒木・胴打ち 樹木は致命的なダメージをうけると緊急治癒・樹体内ショック反応を起こすInsight 木の内科-33
台風21号暴風で倒れたヒマラヤ松倒木の翌日伐採。現場玉切りカット直後から連続挽き割りで傷身の樹体内反応を観る。急激な治癒活動が拡がり、部分害傷と異なる俊敏な組織異変を起こす。至急のレア−カットから、衝撃ダメージ受創時のダイナミックな動きが明らかに。
公園樹台風倒木のため、即刻切断処分になり、被災しダメージ発生初期段階でパニック反応を観る希有なチャンスとなりました。暴風で激しく揺さぶられ、倒れて衝撃を受けると樹体には大きなダメージが残り、即座に内芯央部から緊急反応を起こします。
打撲裂傷や虫黴びによる部分的害傷とは違う、細胞組織を超えてダイナミックな治癒出動を行う様子。芯央部(芯材・赤身)、入り節・脂溜まりも同時に抗体・治癒物質を分泌し拡散。
風圧・衝撃をうけた直後に樹体内変化を察知することは難しく、内科的には切断してカット面と木肌の異常や変化をみることが唯一の方法です。伐採チェーンソー切断面やバンドソー鋸挽き、高速回転切削では、樹木のデリケートな生体組織や表情はわかりません。急激なダメージを受け倒れると、樹体内ではどのような反応が起きているのか。大木が生息していた場所で即ぐにカットでき、連続して観察できるチャンスは、これが初めて。
森林伐採の現地では、大型の重量生物をフリー撮影できる状態に動かし整えるのは制約が多く大変です。平地で隣木樹間が空き、幹反り根ムクリ状態、太い力枝が接地という作業しやすい好条件が重なりました。
根付き倒木 片もち玉切り撮影 二番玉末口
三番玉 烏上
上層樹幹:揺さぶり衝撃によるパニック反応がダイナミックに現れています。
枝伸び方向に倒れ、力枝が地面に突き刺さり浮いた状態
バッサリ伐り倒せば地面に寝て動かせません。リフトで上げないと中空切りは出来ず、根ムクリの時は順次切り分け、手際良く枝葉も払うことができます。隣木に気をつかって倒れました。
サンプル材の現場玉切りからみる生木の防衛・治癒アクション
公園樹の風倒木で緊急処分のため、枝幹切断同時のトラック搬出。ゴミ集積場へ運ぶ合間にサンプルカットさせていただきました。市場では必要な部分寸法では切れず、原木丸太購入になります。大型重量物の処置は、労力と費用は多額なものになるのです。原木は土場に転がっているので、リアルな内部の変化には気がつかれないまま処分されています。生木の防衛反応がみえる短い時間のオペレーションは、セルフキュアの実際の動きを具に見ることができました。
倒木ショック反応 脂・色素抗体の分泌・放出・噴出
倒木一日目 玉切り直後 木口プレーナーかけ・生木の木口切断面
木も白い涙を流します。
年輪層細胞壁を貫通してハイスピードで拡がる
倒木二日目 突出する治癒色素抗体 周辺組織からの集中
倒木四日目 約40mm 成長して拡がり停止
15日後ブロック材カット 黄色部は香油成分を含み、強い芳香が漂う。虫・黴びは寄り付きません。香木類
ハンドプレーナー・手鉋で木口切削すると、抗体キュア色素が年輪組織を貫通し突出る様子が鮮明に顕れています。時間が経つと次第に薄くなり、自然乾燥が進行してもわずかな痕跡を色差で察知できます。人工乾燥炉に入れた板材は、対流熱で樹脂分や色素は動き、組織劣化を起こし材色は薄まります。
倒木翌日の樹体内EM反応
地下のマグマ上がりをイメージさせる緊急キュアー出動反応
入り節・脂溜まりからの滲出・拡散
突き出て拡がる脂成分と色素移動の浸みだしの源は小節でした。放出されて周縁部へ、さざ波状に滲みだし拡散。秋材脂成分は芳香が強く、入り節も同時にキュア反応を起こす。
酵素等のミクロの動きもあるはずですが、さらに経時変化を記録します。若い樹体が生命維持の素速い反応をしていることが明らかになりましたが、数百年を経た樹勢では様相が違うのです。
球果と雄花
高い枝上に結果し、重量級ビッグサイズで上枝に座り、全体に脂分が多い。2 – 3年の成熟で翼果を飛ばします。伐採後一ヶ月、自然乾燥で松かさが開きはじめ翼果が覗く。
伐採当日の見学者 隣接保育園児は球果を嬉しそうに持ち帰り
伐期タイミングの良い幸運な風倒木玉切り
樹木が水揚げ期が終わる時期に、根元から枝先果実まで大木全体を現場で診る機会は少なく、さらに、伐採即日の玉切り、時間をおかずに巨大な重量物を移送、そのまま製材・切削まで進むことはまず不可能です。絶好のタイミングで、得難いレアーサンプルとなりました。(素材販売となると商材ですから無闇に触れず、手続きを踏み入手しなければなりません。)伐採作業:(株)上地緑化 20171024ABE
「木は涙をながす」歌詞にもありました。
以下 内田樹ブログ2017/11/24 に言及があります。このヒマラヤ松と同期。
「木も涙を流す 日本のフォークとロック:1969―1973」Even a tree can shed tears: Japanese Folk and Rock: 1969-1973 というタイトルはこのムーヴメントの先駆者西岡たかしの歌に由来する。このアンソロジーは日本のポピュラー音楽における決定的な出来事をはじめて欧米に紹介したものである。
実際、樹は傷つき倒れた時、密かに涙しているのです。
1年後の球果松笠と翼果のバラケ
堅くびっしり詰まっていたヒマラヤ松の実は脂がいっぱい。じっとり滲み出ます。乾燥するにつれ種鱗が開き崩れて飛散します。20181103追記
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木の総合学研究2017- 2019 「ヒマラヤ松の倒木ショック反応 治癒・抗体の分泌、噴出出動」「樹体内害傷ダメージ抗体のダイナミズム」