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崖っぷちに立つ極薄樹皮「タムシバ」の雪氷倒木 傾斜樹の応力レジスト 倒れまいとするミクロの向芯交差組織は、クロス・チェンジアップ、シンカー、ダイビング、ツイスト、ワープして捩れ絡む樹体 Insight 木の内科-35
厳冬期一月末、積雪後の氷雨3日間過重耐抗限界で倒れたタムシバ若木の樹幹。外部応力による変形、害傷セルフキュアー、抗菌バリアの総出動。樹体維持のためにダイナミックな不倒耐久構造を造り出す。
極薄外皮の樹木は、樹体内で外力負荷に耐える微細逆ラジアル組織をつくりあげ、立ち木の倒れまいとする動きが木理に顕れてきます。複雑な構造と杢目は、風雨積雪や菌類昆虫による外力への抗体・耐性が造り出した姿。倒れまいとする立木の内側の成長は、耐え凌いだ苦難を刻んでいます。
複雑な挙動をみせる水平向芯逆放射組織(ラジアルグレイン)
内皮から芯央へ入る水平向芯組織は、縦繊維束に潜りからみ、捩れて横筋・楔的な応力負荷を分散させる補強機能を発揮。辺材部から不連続で芯部へワープ。傾斜地での負荷に耐え、引っ張り持ち上げたり、捩れ外力を吸収する複雑な構造体をつくります。言い替えれば、バランスをとり倒れまいとする立木の内側の成長形です。
山側背 圧縮部分に複雑な挙動をみせる水平向芯逆放射組織(ラジアルグレイン)
生育地:亜高山帯海抜950mmの南面林縁崖上 樹齢17年
表皮:約 0.25 – 0.3mm, 内皮:約0.8 – 1.0 mm 生木材比重: 約0.7 ㎤ 元木径18 cm 樹高:約5m
伐期:2016.01.31 積雪氷雨災害による倒木 軒下自然乾燥MT:22ヶ月 1年後にピン虫・木喰い虫が入る。
倒木伐採時 ピンク色素が出る元木・木口
内皮から芯央へ向かう逆放射ミクロ組織と芯色素移動
部分的なセルフキュアー抗体・色素移動
外部ダメージ部へ向かうセルフキュア色素
節周り抗体バリアー・色素集積
外皮気孔から芯央へはいるセンサー組織
引っ張り側は、導管の紡錘型が肥大し、筋力を高める繊維束が集積_斜面に存立する特長が現れています。
■用途:ホウノキ、辛夷、タムシバ、桂は木地加工品に多用されてきました。普通の材質は、刃物アタリがよく、変形・狂いがすくなく抗菌性があります。
明治後期から、「木材の工藝的利用」や「闊葉樹材利用調査書」に材質・用途・産業技術等の記載があります。極薄の樹皮は、虫・菌類の寄りつきや損傷から身を護る能力が高いようです。
ⓒ2017 , Kurayuki Abe
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木の総合学研究 2017-2019 「タムシバの不倒グレイン、ミクロ向芯細胞(逆ラジアル放射組織・髄線)」
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