「木」の高等専門校産業イノベーション

木材・木工産業のためのスイス国立高等専門学校、大学格上げへ 技能訓練校が工学部・大学院課程につながり、木のスペシャリストを養成する森林国の教育理念

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

職業技能訓練校から1986年専門技師育成校格上げ、1992年木工産業のための専門技師養成学校、最近の教育システム改造の流れで2009年木工高等専門学校と改名され、更にベルン大学工学部・大学院課程へと発展

Schweiz Hochschule  für Holzwirtschaft, Biel
Higher Technical Schools HF Wood Biel
スイス・ビールBielの町外れにある木工専門学校。地場産業である木材産業のための技能訓練校から技師養成課程をへて工学専門学科へと変化した最先端の事例です。国立の高等専門学校に格上げされ,教室増設の必要性から、1990年, 長期展望にたって新校舎建築コンペが行われ、1977から工事、1999 新校舎竣工。元からある木造平屋の作業場は、そのまま残し、隣接している時計工場を彷彿させるつくりで地場産業の木材産業にかかわりのある印象を強調した最新の立派な建物が完成。その後、Biel 大学工学部木造建築系学科の専攻課程に組み入れられて現在に至っています。スイスは、森林立国ですから、建築資材・加工技術の分野での将来展望から、木の産業の重要性が早くから提唱され、民間産業ー政府間プロジェクトで取り組み、技術者養成の方向が定められています。
専攻は、Timber Construction ,Wood Technics, Woodworking Indusry – Lumber Industry  卒業生は、スペシャリスト認定、マスターコース卒業資格取得可能。
「この新校舎建築にあたり卒業生が多大の寄付をして、次世代への期待をこめて総員で支えたと。」木の育児玩具・知育パズルデザインやオブジェをプロデュースしてきたNaef 社 Kurt Naef の話です。
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建築デザイン:Marcel Meili, Markus Peter
書名:Schweizerische Hochschule für die Holzwirtschaft, Beil
出版社:Verlag Niggli AG, 2000  ISBN 3-7212-0393-3
Bern University of Applied Sciences
Architecuture, Wood and Civil Engineering
・The College of Forest Products was awarded the ” Prix of Lignum”

S:「HOLZ, EINE MATERIAL HEBT AB 」DU   DIE ZEITSCHRIFT DER KULTURE   Nr.698    1999 Aug.

教育分野の進取的イメージとは違う、行政・業界に横たわる様々な林業木材産業の課題

スイス森林行政機関や業界の実情を紹介した雑誌特集記事の一部には、様々な政策問題と批判や外圧、環境保護、森林管理・景観資源を総合的にみる転換期にあることを明らかにしています。スイスは世界最大の森林産業補助金制度を続け、現在では環境重視へ大きくシフトしていますが、森林喰い荒らしの歴史、産業経済優先の時代の様子を詳述。多くの記事の中で教育分野と就業についてふれている部分  「 O DU MEIN WALD!  von Oswald Iten  p.17 」を一部抜粋。

「Hegemonialdenken und Wertekonservatismus sind bei den Forstbehörden weit verbreitet.

Wer Forstwissenschaften studiert, stellt sich besser darauf ein, denn praktisch kommen fast nur diese Stellen oder parastaatliche Organisationen als spätere Arbeitgeber in Frage. Bloss etwa zwanzig Prozent der Absolventen der forstwissenschaftlichen Abteilung der Zürcher ETH können damit rechnen, einen Job auf ihrem Studiengebiet zu er gattern. Es scheint, dass das Studium des Forstingenieurs dringend eine Neuausrichtung nötig hat.

「縄張り意識や保守主義が林野当局の中で支配的である。

森林科学を学ぶ学生達は、後にはこれらの機関あるいは、他の政府関係機関が唯一の就職先であることを覚悟しておいた方が良さそう。専攻分野の仕事を期待できるのは、チューリッヒの連邦工科大学ETH森林科学部の卒業生のたった20%。「林業工学士」の教育は新しい方向付けが極めて重要であるように思われる。」

S:「HOLZ, EINE MATERIAL HEBT AB 」

DU   DIE ZEITSCHRIFT DER KULTURE ) Nr.698    1999 Aug.  「木材・高揚されたマテリアル」 SWISS芸術文化定期刊行物  ISBN 908515-31-90

 森林国ジャパン木材加工・木のスペシャリスト育成のさびしい現状

だいぶ前から、日本では木材関連の専門家育成学科・教育課程がどんどん消えています。工業高校木材工芸科は、インテリア科に。職業訓練校は、統廃合、その指導教員養成のための職業訓練大学校も廃校。木材加工・工芸の大学は、建築系に統合廃止。訓練校は廃止が進みます。教育學務機関ではなく、労働者訓練で労働省の管轄。訓練生には、木工機械を使わせないという所も現れました。深刻で愕きを隠せません。国内では、わずかに数校が存続しています。

木造建築伝統技能専門校は、大工さん養成コースとして数校。国立大学教育学系に木材加工学専攻がのこっており、刑務所では、服役作業者に伝統工芸指導員が技能を伝承しています。
木材産業の経済ボリュームがしぼんできており、産業活性力は低迷し、魅力も薄れて主要産業ではなくなりましたが、環境・資源・健康・安全という評価軸では魅力的な可能性が出てきました。「木工」という用語が、古びているだけでなく、新しい産業創出イメージがないのです。
訓練校(木工)関連情報Link http://blog.koubou-yuh.com/?p=914 
木工家を目指す若い人が技能取得を目指す都立品川高等職業訓練校(都立城南職業能力開発センターに変更)に木工技術科、全国から集中する長野県立上松技能専門校には、木工科・木材造形科があり、狭き門になっています。訓練校減少、産業変化による行き詰まりを前に、従来型の育成プログラムの他に、新しい分野で直ぐに仕事ができる専門課程への脱皮が望まれているのです。上松技専は、これからブレークする可能性があると感じています。木曽地域の木の産業ベース、周辺の木造民家群、赤沢休養林等の観光学習スポットがあり、松本 – 安曇野、高山・古川、更に白川郷、荘川・輪島へとつらなる木の産業ベルトがつながります。
職業技能訓練校として卒業後の進路、就業先は家具産業や建材、住宅産業、伝統工芸分野ですが、生産現場工員・モノつくり作業者の養成から、時代の変化に適合する職務、環境・資源、教育・文化まで多領域の実学・実務・実技、専門知識の取得を可能にする新しいカテゴリーの木の高等専門校・大学、総合的な研究拠点の設立が必須と考え、構想実現までをスコープ。カリキュラムを考えるだけでも楽しく、新しいアプローチが見えてきます。現場を踏む実学・実際に作れる実力、マネージメントを身につけて事業を運営出来る実務をマスターできれば、自力で仕事を切り開ける次世代の人材スペシャリストとなります。実際の専門知識を学び、木を育て、伐採し、機械操作・加工技能、デザインワークや経営実務能力を身につけるには、横断的に従来の専門域をこえ、長期の社会変動を見極めるコトから始まります。専門大学がないということは、事業の指導的人材育成が出来ないことを意味しますので、木の国・日本に、独自の高等専門履修校をつくりたいと願うものです。「日本木工院」では工芸的で古めかしく、年寄りのイマージ。「木の高等専問学校」では物足りない。
新しいカテゴリーの「木工産業のため高等専門学校」ができれば、多くの課題のソリューションを可能にします。再生・循環資源、生命維持装置、生存基盤に据えた思考から、「木」と人との関わりを考究しつつ、実生活に直接結びつく職能が生まれるような仕組みを創出する試みのほか、次のステージに必要な準備を積み重ねていきます。モデル試校をはじめるのが早道かも知れません。
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木の総合学研究2013 – 2019 「木の産業のための高等専問校を大学・大学院へとつなぐ」「森林国の技能訓練と高度な専問教育課程」

 

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