「木」と教育「木」と芸術デザインデザインの目工芸木工

中等教育美術科「工芸デザイン」は導入されず ワークショップクラフト、アート・デザインの真髄・本流を見失った教職メモリー 工房スタイル・工房手法の再考 クラフト・デザインベストブック – 11

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

美術工芸教科のためのワークショップスタイル建築プランニング、作業スペース・設備設計は先進国から部分的に導入され、スクールファニチャーの標準規格化による工業量産へとシフト。金属パイプ・成形合板・プラスチックに代わり、建物・教室から木製は放逐されて無機質合成工業材料に囲まれるようになりました。

1972年、海外の先進的な教育施設、学校用家具の近代化のためのデザイン手引き書や最新の研究レポートに出会いました。美術科工芸デザインの明るい未来があるような新鮮で充実した内容は、木材工芸・デザインを専攻する学生には、輝かしい卒業後の進路が拓けるように感じられ、教職課程を履修しましたが教科内容の研究や大きな改善はなされませんでした。科学技術を強化する方向へ政策転換したのです。

前年、文部省外郭団体でRIEF 教育施設開発機構(Research Institute of Educationaly Facilities)が発足した間もないころ、イス座姿勢やベットクッション性の人間工学的研究から、学校用家具の標準化や人体計測・設計寸法データの整備、家具の規格体系化プロジェクト等が進行していました。家具インテリア産業が輝くようになり、高度成長期で海外のデザイン製品や技術情報がどんどん入る時代です。

美術の教科目にアート・クラフトワーク、デザインを組み合わせ、教育施設設計をするという斬新な政府レポートがウッドワークの可能性と将来を明るく感じさせ、デザイン・クラフト図書の収集をはじめる。

実際の施設設計、設備まで網羅され、国の教育施設設計リーディングデザインとして英国の教育・科学省から発行された冊子 Building Bulletinに出会い、直ぐに海外図書専問店に発注。工芸デザイン専攻として将来に備えて資料収集を始めるイニシエーションとなりました。

在席した建築学科木材加工室内計画研究室では、学校用家具の標準・工業製品化と家具・室内の人間工学的は海外と同じレベルに近づき、「Ergonomics」設計寸法基礎データの集積やイス座・ベット寝姿勢の解析などに研究成果をあげる一方、家具の耐久強度試験のスタンダードや性能評価基準の整備までは至りませんでした。

当時、海外動向を察知して施設ハードだけでなく、教育理念ソフトにも注目し、中等教育美術科に「工芸・デザイン」が組み込まれていたら、工業高校等の木材工芸からインテリア科へ名称変更、技能訓練校の科目も変わっていたはずです。今なお、美術と工芸・デザインの領域や境界は混沌としています。

アート・クラフツ教科内容に反映される時代性・産業文化の方向「工房スタイル・工房手法」の重要性

工芸美術科目のはじまりは、明治期の殖産振興目的で海外輸出品の産業育成、専問學務局主導の「手工科」徒弟教育からです。やがて、家庭・工作になり、科学技術に関する指導強化から「職業・家庭科」と「図画・工作」を再構成するかたちで「技術・家庭科と美術」を新設。手仕事は薄まり「工芸」は無くなり、現在にいたります。工房スタイルの手仕事を経験できることは、感性と生活基本技能を修得できる好ましい成長期でベストタイミングとなります。知識勉強だけでは偏ります。専問の教職がいないので絵画や彫刻専攻が担当していました。
工房体験の身体記憶は長い人生の様々なシーンでとても役立つはず。教室だけではなく、本物を実体験できるワークショップ方式が最も望ましいと常々考えてきました。

先進海外事例の参考と部分応用に終始して本質深堀はしないままにお座なり

英国の施設モデルを手本として日本ナイズする手はずでしたが、部分的な転用・応用、参考資料にとどまり教科内容の検討や設備設計の本質的な部分は導入されません。このバレッティンに掲載されたワークショツプ Woodworkスペースの設計や運営にたいするアドバイス、実際のツールには伝統技能をひく様々な分野の手仕事で複合構成したプランニングに注目しました。

例えば、ウインザーチェアー制作の作業台は、ワークベンチへ発展する祖型であり「Shaving Horse ウマ」が削り体験用に作業室に配置されていることも伝統職能に配慮する現れです。ものつくりは生活技能に役立ち、幼少期の身体記憶は永く消えません。

ワークショップクラフツの一般教科目 及び 特定科目

・Woodwork 木工
・Cray Stone 粘土・石工
・Metalwork 金工
・Rural Crafts 地元の工芸
・Drawing & Painting ドローイングと絵画
・Blocks & Print 版画
・Textiles テキスタイル
・Basketry 篭編み
・Bookcrafts ブッククラフト
・3D Works Sculpture 立体制作 彫刻
・Clay & Pottering 粘土と陶芸
・Fabric prints ファブリックプリント
・Spinning 糸紡ぎ
・Weaving 織り物
・Needlecrafts 刺繍
・Typography タイポグラフィ
・Drama ドラマ
・Cosutume 衣裳制作

「WORKSHOP CRAFTS 」 ワークショツプクラフツ (工房工芸科目)

Building Bulletin 31 ビルヂングバレティン 31
Secondary School Design   中等教育学校デザイン     Department of Education and Science  教育科学省 1966   Published by HER MAJESTY’S STATIONARY OFFICE
SfB(97)/ UDC 727 – 2 SBN 11 270049 7 p.45 210 x 298 x 3 Tmm

Contents   目次
Background 1 -16   バックグランド
1 Some general requirements common to most workshops 17 – 35  ワークショップ共通の一般的要請事項
Safety
Lighting
Heating and ventilation
Power supplies
Finishes
Display
Storage

2 Provision for general woodwork 36 – 65   木工のための一般規定 ウッドショップ

Teacher’s base
Planning and reference
Bench area
Machines
Woodwork:working space around machines
Gluing and small scale assembly
Polishing, painting and finishing
Large scale construction and assembly

3 Provision for general metalwork 66 – 107 金工のための一般規定

Teacher’s base
Planning and reference
Bench Area
Forgework, brazing, soldering, casting,and grinding
Metalwork : working space around machines
Machines
Storage

4 Combined provision for general wood and metalwork 108 – 111 木工と金工のコンビネーション一般規定
5 Provision for a widening range of work 112 – 154  作業拡張のための一般規定
6 Grouping the workshop crafts and their relation to other parts of the school 155 – 163   ワークショップクラフツのグルーピングと他の学校施設との関係
Appendices 附録

「DESIGNING FOR ART AND CRAFTS 」   美術・工芸ためのデザイン

Building Bulletin 34             ビルディングバレティン 34
Secondary School Design             中等教育学校デザイン
Department of Education and Science               教育科学省発行

1967 Published by HER MAJESTY’S STATIONARY OFFICE
SfB(97)/ UDC 727 – 2 SBN 11 270215 5 p.48 210 x 298 x 3 Tmm


Contents   目次
1 A time of changing emphases 1 – 16 変更時の強調

2 Some aspects of design common to most studios 17 – 46  幾つかの様相

General character and finishes
Lighting and colour
Provision for display
Provision for reference and study
Provision for storage
Base for the teachers
Provision for working outside
Safety precautions

3 Some requirements of particular processes 47 – 128 特定のプロセスの必要事項
Drawing and painting
Block printing
Bookcrafts
Three – dimensional work generally
Clay modelling and pottery
Fabric printing
Weaving
Design with materials in relation to embroidery and textile design, design and making, drama and costume design
4 Some planning arrangements of studios discussed 129 – 151  数例の議論されたスタヂオアレンジプランニング

5 Grouping and relationships of accommodation for art 152 – 171  アート施設のグルーピングと関連性

Appendix 附録

■この他の刊行物 HMSO Government publications London

・ Building Bulletin 1964 CONTROLLING DIMENSIONS For Educational Building
・ Building Bulletin 4 COST STUDY 11972
・ Building Bulletin 27 BOARDING SCHOOLS FOR MALADJUSTED CHILDREN 1965
・ Building Bulletin 39 DESIGNING FOR SCIENCE 1967
・ Building Bulletin 38 School Furniture Dimensions STANDING AND REACHING 1967
・ Building Bulletin 44 FURNITURE AND EQUIPMENT DIMENSIONS 1970
・ Building Bulletin 46 BRITISH SCHOOL POPULATION DIMENSIONAL SURVEY, 1971
・ Building Bulletin 52 SCHOOL FURNITURE Standing and sitting postures 1975
□Primary Schools
□Middle Schools
□Secondary Schools
□Other Educational Building
□Technical Subjects

工房スタイル・工房手法は、ものつくり創作の世界だけでなく教育現場でも世代を越えて有効です。

日本の学校用家具の標準規格化、工業製品化は無機質で同じ仕様の味気ないものを教室だけではなく、ほとんどの公共施設にも流し込みました。
実習室、学校用特別教室家具の定型の御粗末な仕様は、1970年から始まる統一標準規格化の成果なのです。手仕事より機械生産が近代先進的であり、工芸・デザインは手仕事イメージがつきまとう古い職人芸とみなしてきた行政サイドの観念が強く影響しているようです。美術科にワークショップクラフト・アートを取り込めるチャンスは Wind eggとなりました。このレポート冊子は、現場作業の説得力があり、教科目には現在でも魅力的なものがありまは、その後の英国のデザイン造形教育の成果がクラフツ・デザイン界に目だっているようにはみえません。北欧デザイン、イタリアモダンのハイウエーブにのまれてブリティッシュデザインは、ウイリアムモリス、マッキントッシュ,ゴードンラッセルを超えるのが極めて難しい。

*「Shaving Horse、 Green Woodworking  ベストブック」は 次項につづきます。

ワークショップスタイル、ワークショツプメッソドは、デザイナークラフトマンをはじめ、クラフト作品から食のクラフトへと拡がりを見せています。良識の手仕事は素材も吟味しますから、目が届き手が動く、信頼できる品質を確かなものにします。教育現場もヒューマンタッチ、人なりです。

「学校工房教科とクラフト・デザイン・テクノロジー」ベストブック

「クラフト- デザイン-テクノロジー 」

by John Penfold  1988
日本語版 織田芳人 訳  玉川大学出版部 1993
ISBN 4 – 472 – 10361 – 3 p.258 160 x 2167 x 22 Tmm

目次

1章 学校工房教科の産業的な起源  15
王立技術教育委員会 芸術協会 職業教育を冷遇する伝統 他
2章 学校工房の女性・女子 − 教育上の挑戦、衰退、再興 57
教育的な起源 – 「スロイド」アーツ・アンド・クラフツ運動
性差別禁止法と女性CDT 教師たち 他
3章 教師教育 ー 混乱それとも戦略? 111
職工 = 実技教師それとも正規教師  教師供給の危機
4章 手工芸からクラフト – デザイン – テクノロジーへ 159
創造性 – 1960 年代の風潮 デザイン教育の誕生 教育と産業の結合  他
5章 CDTの未来 221
初等学校におけるCDT 作業能力単位 – 評価  他
参考文献 240
索引 258

デザインと制作は、手工教育の源流木工技能から始まりました。現代のものつくり、デザインワークの真髄・本流を再考し、クラフツ造形手工の有るべき姿と具体的内容を詳述。産業界と教育の葛藤の歴史も明らかにされています。

 

ⓒ2018 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2018 「スクールデザイン:ワークショップクラフト・アート」「ウッドワーク,アートクラフトのための工房デザイン規定」「学校用家具・建築設計バレッティン」「アートクラフト教科目 資料」

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