イギリス型・スイス型シェービングホース(削り馬) 工房クラフトスタイルを支える自作作業台詳細 床作業姿勢からイス座ベンチワークへ 「あて板考」 -2 +「グリーンウッドワーク」 ベストブック-12
「ワーク・削り物」をいかに素速く固定するか」立ち姿勢やイス座では、バイス・クランプにより固定締め付け、日本の床平座作業姿勢では足を使う。両手両足が自在に、精密な素速い動きをします。一度マスターした高度な動作身体記憶は、小脳でコントロールされ、再現力は失われません。当て板・作業台には、民族による職種や作業姿勢により、様々な固定締め付け機構が考案されてきました。
腰掛け座り削りは、西洋中世からシェービングホース、立ち姿勢のワークベンチが使われています。イギリスではウインザーチェアー、フランスでは高級家具指物、イタリア・スイスでは桶樽職の仕事場に描かれたものを本で観ることができます。当て板作業台に関心をしめするのは並の人物ではない。
西洋鉋や中国の手鋸・手鉋は押し削りですが、棒・小幅板削りは銑による手前引き削りで日本式と同じです。江戸期の手鉋が出現する以前、切り刃を長台の下端にいれた桶屋の「正直」は押し削りで西洋鉋と似ており、桶屋・下駄屋・杓子造り用の銑は西洋型とよく似ています。
指物 家具職は当て板を定盤に使いますが、最近では木工家具、楽器制作家、クラフトマンが削り成形仕事に「西洋ウマ」を使いはじめ、細かい工夫もされているので工房スタイルの変化に注目。鋸・手鉋は手前に引くので、銑をつかう「シェービングホースの座り削り、ワークベンチは次世代にスンナリ導入されてきました。
因みに、シェービングホースには構造スタンダードや定型寸法はありません。手足筋力、手仕事にあわせてバリエーションはフリーです。
フランス型は専問特化・洗練され、イギリス型は、ビギナー、アウトドアー出職・移動作業に向いており、スイス型は、プロ専問居職・工房常設装置というイメージです。北欧では、農家工房作業の伝統を引き、英仏の影響を受けた構造に発展しています。
①イギリス型:ウインザーチェアーメーカーのShaving Horse (削り馬)English Bogers Style
梯子型レバーアーム
「WORKSHOP CRAFTS 」 Building Bulletin 31
Secondary School Design
Department of Education and Science 1966 HMSO London SBN 11 270049 7
Neville Neal Chair Maker Workshop in near Rugby, England
S; Decorative ART and Modern Interiors vol.65 1975 / 76 Studio Vista , London
English Bogers Style 柏木工房 美麻村 柏木 圭 1992 本体:栗、脚と梯子アームはリョウブ二つ割り
イギリス型カントリ−スタイル 制作:柏木 圭 2000 年
長野県立中条高校美術室 非常勤講師・8台制作納入 Photo. by Kay Kashiwagi
イギリス型 ラダーアーム構造 Shaving Horse の特徴
・Greenwoodワーク 棒形 生・半乾材削り用
・生木で簡便に建造できる
・発祥はチェアーメイキングや木地師の出職屋外作業用で移動しやすい
・アーム押さえ幅があり余長棒材・イス長尺材もくわえる
・固定アームが外付けで大きく動くので邪魔な時がある
・アームを両足で踏むので大腿部から腰に負担がかる
・押さえる部分が枠付き棒状で当て材をかませるので押さえはあまい
・精度の高い工作にはむかない
・ブリッジ固定位置を先端部につけると長棒削りができる(柏木)
・三本脚は不陸な屋外地面で安定します。(柏木)
組み立てジョイント機構からみると、楔打ち、摩擦弾性力、捻子、ピン固定で分解・修理・再生ができる経済的な構造です。
S; 「Make a Chair from a Tree : An Introduction to WorKing Green Wood 」
by John D. Alexander,Jr. 1978 A Fine Woodworking Book
The Taunton Press ISBN 0 – 918804 – 01 – 9 p.125 230 x 230 x10Tmm Paper back
「Green Woodwork Working with wood the natural way」
by Mike Abbott 1989 Guild of Master Craftman Publications Ltd. ISBN0 -946819 18 1 p.208 200 x 251 x 13 Tmm Paper Back
Swiss Coopering Style
「 GREEN WOODWORKING 」 A Hands – On Approach
by Drew Langsner 1995 (Previous publication in 1987)
ISBN 0 – 937274 – 82- 8
Lark Books ,Asheville USA p.176 215 x 254x 9 Tmm
A COUNTRY WORKSHOP HANDBOOK $18.95
Contents
Acknowledgement 4
Preface: An Adventure in Woodworking 5
Part One : An Introduction to Green Woodworking
Chapter One: What is Green Woodworking 12
Chapter Two: A Cultural perspective 18
Part Two: Working Green Wood
Chapter Three: Materials 29
Chapter Four :Knife – Work 48
Chapter Five: Hewing 66
Chapter Six: Riving 76
Chapter Seven: Shaving 92
Chapter Eight: Boring 107
Chapter Nine: Bending 117
Chapter Ten: Joinery 126
Part Three: Profiles
Chapter Eleven: Meet Some Green Woodworkers 143
Appendix A: Making a Shaving Horse 164
Dumb head by Swiss Kufermeister Ruedi Kohler
AppendixB: Bark Seating 168
A Topical Bibliography 173
Index 175
所蔵:柏木工房 柏木 圭 1995
*この本が生まれるきっかけとなった雑誌「Fine Woodworking」投稿
Der Schweizer Küfer (The Swiss Cooper) Shaving horse
「HAND MADE」Vanishing Cultures of Euro and The Near East p.180 – p.183
by Drew and Louise Langsner 1974 Harmony books, a division of Crown Publishers Inc., NY
ISBN0-5197- 51241 – 4 p.192 217 x 277 x 15 mm Paper back
②スイス型:Swiss Cooper 桶職 のShaving horse 再現モデル 1983
原寸実作:1992年 柏木工房 柏木 圭 美麻村 970304ABE
SWISS COOPER SHAVING HORSE 「Green Woodworking 」 1995 記載図面寸法により制作 「Fine Wood Working #40 by Drew Langsner 1983 」に解説図面記載
削りモノに応じておさえ角度・ヘッド調整ができる構造 欅材
軸傾斜角度、ヘッド交換、(セントラルアーム)首伸ばし、顎板、当てブロック材入れ替え
「クラフトフェアーまつもと1999」実演展示 柏木工房 柏木 圭1999 CFM 100選 出展 松本城三の丸
スイス型:日高工房 (佐久市) 日高英夫 2015年 (1998 年制作)
ブリッジに下敷きプレートを噛ませて安定した微細成形を可能にする工夫
イスの他、小物類は削り受け治具をセットして食器・カトラリー等を切削 真樺材
スイス型イメージ 絵になるワークベンチ
Swiss Cooper(Küferi / Kufer) 「アルプスの少女ハイジ」 アニメ−ションより Alm-Öhiの削り馬(模写)
ブリッジ先端の座のような厚板は、構造バランスから、使わない時は狭い小屋で立てて仕舞うようにみえます。
スイス型シェービングホース:セントラルアーム(首付きヘッド)構造の特徴
・無理の無い姿勢で長時間連続作業ができる
・ワークを固定するペダルアクションは押し戻しで軽く、ほどよいリーチ
・ペダルの踏み込みでヘッドの圧締強さを加減できる
・手足を同時につかうので全身動作になる
・スイングアーム梃の原理でヘッド先端が下方にしっかりアタリ、咥えがずれない
・ペダルをはなすとぱっとリリース
・材料のサイズや刃物の動きに併せて調節しやすい
・ドローナイフは引き削りなので余長を先方へおくりつつ、しっかり押さえてくれる
・ヘッド・アーム、ペダルは楔嵌合で分解移動しやすい
・いろいろなサイズの被削材に対応
・ドローナイフの押し当てブロックを噛ませると、突き当て削りができる
・ブリッジ先端の樋状カットは短材も咬みおさえ、安定させる
・駆動する軸首(アーム)は芯央にあるので左右のスペースは空いて、動きも邪魔にならない
・上部ブリッジ幅はヘッドと同寸で安定した作業が出来る
・ワイドヘッドに差しかえ、ブリッジに広幅の当てを噛ませ板削りに切り替える
・ブリッジの傾斜、高さを低くすると目が遠くなるので背を丸めるようになる(柏木)
作業台は仕事振りを魅せ、仕舞うまで乱雑にみえない。工房の雰囲気を演出、職方はいかにも仕事上手にみえます。一派師。
③フランス型ワークベンチ Encyclopedie 百科全書 18C
S; Tavola dall ‘ Encyclopedie che rappresenta gli utensili falegnameria settecentesca.
Ottagono no.49 1978
*「ウマ」:日本の木工では「馬」は、削りモノや鋸作業の台脚をさします。背板につけた脚を「ウマ」に見立てた用語。
家具・建具職は、木取り、墨付け、切削の下台脚に使い、大工・造作現場作業ではアシをつけた簡易脚立を用意して材料置き、脚付き台とします。欧米では寝かせる「Bed」。
「足を使えれば一人前の職人」手は四本、日本の諸職は足を使う作業が多い。
生活スタイルが洋式に変わり、「足を使える」職人技能者はぐっと少なくなりました。クランプは締めつける手間がまだるい。足を使うと手は四本。足はホールドしつつ、自在に動かせるので素速く手仕事ができる、見事な日本の伝統職人の至芸でした。家具・建具、桶樽、篭編み竹工、刳り物、棒屋、手打ち鑢職では、本来、足が使えることが一人前なのです。親方筋を引く人は、足技を継承しています。
板、箱物に比べ、イス・デスク・ベットの脚物は棒形で足でつかみにくく固定治具が必要となり、明治以降の洋家具職は腰掛け・立作業と変わります。
ライフスタイルの洋風化、足長の体型では、イス座・立ち作業が楽になります。昔からの床座り作業は、アイレベルが低いので這いつくばるようなイメージを与えかねませんが、体型や引いて切削する道具の使いからみれば、無理のない自然な姿勢です。体型が変わって下腿高が長くなり、胡座、正座、平座がきついので、ベンチワークが好まれるようになりました。
「仕事は素速く、身体記憶は瑞々しい若いうちに」刃物がむき出しの木工は、陽がおちて疲れるまでやってはいけない。怪我やミスを呼ぶからです。
ⓒ2018 , Kurayuki Abe
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木の総合学研究2018 – 2019 「シェービングホース 削り馬 English Bogers Style & Swiss Kufermeister style」「ワークショップスタイルと削り作業馬台・当て板」「グリーンウッドワーク 生木割り削り木工」
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