ジャポニズムとアートクラフツの世紀 Japonaises Art Noubeau Art et Décoration 120年の装飾アートクラフツムーブメント、モダンデザインの源流伏流水に21世紀新ジャポニズムの好ましい予感
アールヌーボーを触発ブレークしたジャポニスムは、19世紀末から機械工業化をたどり120年。今、無機質シンプルモダーン偏重に疲れ始め、装飾アート新ジャポニズムの予兆をデザイン造形世界は待ち焦がれている。
19世紀末から20世紀初頭、ヨーロッパを中心としたアールヌーボー新芸術運動に影響してモダンアート・デザインは一世紀あまり。新ジャポニズムの台頭・うねりには遠く、表層がはじけ、素地が顕れるのは間近。時間をかけて到達したものの本質は失われず。それは、まだ気が付かない灰の中の残り火で高度な身体記憶の卓越技能かもしれない。
「アールヌーボー」に大きな造形的インパクトを与えたジャポン美術工芸には、漆工・蒔絵を筆頭に、陶芸、錦絵、玩具のコレクションが美術專門誌・書籍に度々掲載されてきました。木工芸品、染め織り物、刀装金工など他の工芸分野は、当時のアート装飾専門誌上でその紹介記事は少ない。雑誌は傷み、稀観本や型録は失われていきます。
私蔵の 「Art et Décoration 1910」に「ジャポニズムの布織り物、刀劍鍔コレクション」が特集掲載されていますので120年前のざわめきをご紹介します。学生時代の古本ですが、劣化していないコート紙金銀特色フルカラー印刷品質は今尚輝き、たいしたものですね。
Étoffes japaonaises 日本の布織り物
ジャポニズムとアートクラフツムーブメント
当時の建築・室内装飾、家具・調度、服飾・テキスタイル、細工物の工芸領域に新しいモチーフとして賞揚され、装飾芸術分野の雑誌や型録に掲載。和の美の実相エッセンスを観ることが出来ます。
丁寧な手仕事、高度の緻密な細工、東洋的な装飾が個人コレクションや美術館収蔵ブームとなって大量の日本美術工芸品が輸出されていました。国策で輸出できる工芸産業を育成したのです。
江戸後期から明治初期に輸出されたり、模倣された絵画工芸品の事例は多く、モチーフとなった漆工蒔絵、錦絵、陶芸作品はすでに明らかにされていますが、細工物・染め織物や室内調度品も雑誌やコレクション型録資料は当時のパリの書叢出版刊行物にみることができます。
Art Noubeau Japonaises「ジャポニズム」装飾美術雑誌の特集と見本型録
Gardes de sabre japanaises 日本刀の鍔
縄文時代から続く「縄目」をあしらう変り鍔 縄束円形模様を見事な鉄細工 刀刃ガードが縄束という洒落
石塔 旅僧(鳥羽僧正) 菊、月に楓鹿、カマキリ・ムカデ、骸骨をあしらい、死生観読み解きの風流象嵌意匠(加賀1680)
鍔には、刻まれた様々な意味や願い、由来や表現がちりばめられています。命に関わるこだわり、凶器に負託したアイデンティティや意味するものがあるのです。
美術・デザイン系の書籍雑誌には、表紙カバーや広告に重要な関連産業界の情報があります。
S;「ART ET DÉCORATION」装飾芸術 REVUE MENSUELLE D’ART MODERN , FVRIER ・1910
発行 LIBRAIRIE CENTRALE DES BEAUX ARTS PARIS
210 x 296 mm p.72 + SUPPLEMENT
Sommaire 目次
Étoffes japaonaises 日本の布織り物 M.P.-VERNEUIL p.37 – 44
Gardes de sabre japanaises 日本刀の鍔 COMTE G. DE TRESSAN p. 63 – 74
他「L’ART DÉCORATIF」装飾的アート REVUE INTERNATIONALE D’ART INDUSTRIEL ET DE DÉCORATION JUILLET・ 1900
1900 – 1910年に刊行された建築、室内装飾、家具調度、絵画・彫刻、織り物や刀装鍔のコレクションが雑誌掲載やギャラリー展示されハイライトをあびた工芸美術を展観します。シルク・漆から錦絵、陶芸、染め織り、細工物まで装飾工芸品は世界を魅了し、制作工房技術に大きな影響を与えました。流行したスタイルは、Beaux – Arts ファインアートも例外ではありません。
世界の先端でリードする造形美的感覚は、漫画アニメ、ゲーム類のグラフィックス、クールジャパンやモノつくりなどに「新ジャポニズム」の拡がりを感じ取っているという、アートクラフツ、デザインマーケットプレイス担当者の先見も耳にはいります。フレッシュで刺激的、魅力的な造形センスは、水位は下がりましたが、まだ深い地下水に溶け込んでいるかのようです。
建築からファッション、グラフィック、生活用品にまで有機的なフォルムの新装飾芸術ムーブメントが拡がり、花・草木自然物の自由で流麗な装飾モチーフが新鮮な感覚として絵画、建築からファッション、造園まで取り込まれ、華やかに躍動する時代様式となりました。社会を揺るがす戦乱のない300年の時間に醸成され、発展した様々な手仕事に刮目するのも、蓋し当然です。
ⓒ2018 , Kurayuki Abe
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木の総合学研究 2018 「ジャポニズムと装飾アートクラフツ Japonaises Art Noubeau Art et Décoration」「江戸後期から明治初頭の工芸美術の世界品質」「桐紋・縄目意匠」
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