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「擬木論 2018」 模木の始まりから「擬木」「偽嘘フェイ木」「ニューツリー」まで   今、日本人はポリ・ビニール袋の中に寝ている。

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

セメント擬木破損をいぶかしく見つめる木の玩具スイスデザインメーカーKurt Naef

2002年4月 都立井の頭恩寵公園・武蔵野市にて

木目は好感度が高く、樹木を嫌いな人はいない。樹木をみて触れれば気分はよくなり、木目プリント・イミテーション、擬木にも寛大。木目をつけると見栄えよく、ボード・コンクリート・金属にまで転写。プリント木目・擬装イミテーションが感覚を歪め、視覚・触覚を狂わせる。自然林は減り、プラスチック化粧人造グレインは増え続けます。

木を伐り削り、樹体の「木目」を見たのが約一万年前。人体の視覚は、擬装木目、偽嘘「フェイ木」不実を見抜けない。

コンクリート・鉄骨造擬木工事 コナラ・クヌギの似せモルタル丸太・杭の武蔵野仕上げ 井の頭公園1993年4 月ABE

 このセメントコンクリ擬木の前は、丸太杭立て・棕櫚縄ロープ柵でした。梅林と桜木があり、花見時に酔客が入り込み、武蔵野の自然植生が残る林床を踏み荒らすので頑丈な鉄骨コンクリ製に変わりました。

樹肌・木目を模倣したい動物的感覚

 木目縞模様は、樹木の生長・自然のフラクタル現象から生まれ、倒れまいとする樹体の内部斷相が木目を造り出します。生物素材の「ゆらぎ」の本質は、生命感そのもの。樹木があれば安全で安らぎ、寄りつきたくなり、魅了されます。 休み、安心できるランドマークにもなってきました。樹上生活を経て、数万年間DNAに刷り込まれてきたからです。

木目プリント化粧、プラスチック合成化学物質が身の回りに氾濫する現代。嘘っぽい、気味が悪い、不自然でおかしいという反応もふえてきました。木目を貼りつける工業デザインや建造物・住まい、景観アーキテクチャーの引き起こす環境ダメージや動物感覚の嚇乱とその影響を実際の模倣モノつくりから考究していきます。

 本論考は、次の様な構成でたどります。

①木目を整え、模倣する「似せ木、模木」カモフラージュの始まり、美装・修複テクニックの歴史

②合成「樹脂」という名の石油化学合成物質の拡がり 本物に近づけるプリント化粧製品の実際

③行き過ぎた合成木・偽装デザイン 騙し偽木フェイ木製品が引き起こす違和感、錯誤 素材感覚を歪め、損傷ダメージが懸念される使われ方

④擬木の許容範囲と製造物エンドレス責任、デザインソリューションと有るべき本来の姿について

生命維持資源のプラットホームである樹木に寄り添い、「倣う」ことは、様々な困難な課題を解きほぐす確実な手立てになりそうです。

はじめは、木目を整えるための類似材の代用「摸木」

 江戸中期になると建築構造用材、工藝品や着物・装飾品の流行は奢侈禁令をうけ、商工品は弾圧されるようになります。指物火鉢・箪笥類も需要が増え、挽き板の良材は足りないため、職人達は似ている材質の木材を代用で使いはじめます。見立てや隠し別装、逆手間など、意外性をこらして潜るレジスト気質で耐抗し、屈折した美意識が生まれた時代ということができます。

 

模木代用は火鉢・箱物に多い 欅・桑・桜・黒柿・黒檀に似せる

 江戸中期には、染め織り、金工・刀装・漆工、陶芸分野でも装飾意匠や技法を発展させ高度なテクニックを競いました。とりわけ木工芸では、錺金具をつけたり、いろいろな仕上げ法や加飾の工夫がされるようになります。表面の材質感が近似して誤魔化せるというのではなく、リッチな材料は制限されて高価な品物に仕立てる、工手間を上げる作風だったのです。

国産材には、個性的で際立つものは少なく、近似の材質や木目が多いので着色目止めなどを施すと「木目合わせ」ができる。材料が足りない時には、揃えるために異種材を併用します。同類の材質で見立てて、上手に似せ、そっくりに仕上げるので、第三者は気が付きません。完成度を高め、いかに上等で魅せるかがプロの腕前。

 

 

模木用ソリッド材例:欅・桜・桑・ブナ・白樫・シオジ・楡・栃・ホウの木

似せ木から「偽木・擬木」へ

 幕末から明治期には、海外向け調度品の寄せ木、漆工藝品に加えて洋家具の製造へシフト。高級材に見せる仕上げ法で塗装擬装が使われるようになり、更に木材素材の輸出拡大が優良材の枯渇を木材市場に影響して樹種の流用が広まりました。

明治末期には、高級輸入材の摸木も工夫され、高度の偽塗装テクニックも変身していきます。本物ではない別の木材木地を塗装色でカモフラー樹したのです。擬木化は明治中期の欧米輸出木工芸品に多くみられます。大正・昭和期敗戦前まで続きました。

高級材「摸擬材」の發明 明治14年 1881

「東京浅草の医師木村春東が薬品を用いて紫檀、黒檀、桑等の銘木摸擬材を製造する事を發明した。」

 「木材工業史話」p.173   宮原省久 著  昭和25年12月(林材新聞社出版局)

木材の着色法を開発した背景には、当時、博覧会に出品され、欧米にむけて輸出用家具・工藝品の需要があり、輸入高級材の代用品が嘱望されていたのです。木材の欠乏による木材の化学着色・仕上げ法は盛んになり、昭和初期には優秀材に擬せるための専門技術指導書が刊行されるほどでした。木材を化学薬品処理する紛いの材質感は、「代用、揃え、似せる模木」から木ではない「偽木・擬木」へのはじまりです。

模木材と木地色 近似・代用樹種

「木材の工藝的利用」他      ABE擬木論2018

美装・修複技法としての美術塗装テクニックWood Graining の歴史

象嵌木画の壁面装飾絵 ルネッサンス時代のフェデリコスタヂオ

Lo studiolo di Federico  nel Palazzo Ducale di Urbino    S; Ottagono #49  1979

 イタリーでは、木画象嵌・寄せ木技術から細密木目ペインティングが派生。 フランス・イギリスでは、室内美装・家具工芸美術塗装の専門技能が生まれ、いずれも装飾材料の木材が高価で入手が難しくなる時代に代用されています。18世紀末には、装飾美術 Decorative Artとして技法が確立され、現代では、Victorian & Albert Museum  Londonに専門教科があり、Wood Grainning は、修複・美装技能として継承されてきました。目止め・着色は、模木・擬木ではなく、木地の仕上げ法の範囲と見なします。さらに、修復の部分カモフラージュは、「似せる」化粧技法として許容されるテクニックと考えます。

Oak木目塗装玄関ドアーChêne (Paris オペラ座の裏通りにて 1975年5月ABE)

木目調・木質に寛容な人間の目線

 木目模様は、粗雑なタッチでも、描かれたグレインパターンは、違和感よりも、案外それらしく見てしまう。ドアー材メンバーの微細な年輪幅や色調もおかしいのですが、ほとんど「き」になりません。例えば、縦框と横桟は光線の吸収・反射率に差が生じ、フラットではない。付け枠やフレームは収縮して接合面、端部・留めにはズレがおきます。玄関ドアーで外気に曝されている塲所の建具は動いています。

目は、ファーストインプレッション、全体の印象で捉え、細部をシビアにチェックしない。理屈ではみないのです。もっともらしいので疑わず、寛容で木目調にとても弱い。好ましく感じてしまう。室内装飾・キャビネットメーカーによる模擬塗装には、銘木・稀少材の木目描写がパターン化されています。

最初の人工合成熱可塑性プラスチック「Celliloid セルロイド」の開発と「合成樹脂」用語の由来

「セルロイド」は、ニトロセルロースに樟脳を混ぜ、加熱・圧縮した人工化学物質です。1856年、イギリスで発明され、1870 年代にアメリカで実用化。明治末期には国産化されて広まり、汎用合成樹脂として20世紀中期までプラスチックの主役でした。模様色柄の再現性がよく、吸水性性があり、質感もすぐれており、天然樹脂の松脂ロジンや琥珀にも似ているほか、原材料のセルロースと樟脳は木質系ですから、当初は「合成樹脂」というネーミングは、違和感がないものでした。製造手間・コストがかかり、発火性が系プラスチックに替わりました。

色つけ合成樹脂を積層したWOOD LOOK 眼鏡フレーム 発色・質感・加工性・肌触りがよい

燃えやすく硬質のセルロイドから発色・質感の良いアセテートへ

プラスチックを「合成樹脂」と呼ぶのは、世界で日本だけ

 プラスチックを「合成樹脂」というのは、セルロイドが開発された時からでした。セルロースと樟脳を加熱・圧縮して合成するため、樹脂から初めての合成物であり、「Resin」を「樹脂」と翻訳した専門用語が使われたことと重なります。以来、熱可塑性化学合成物質を「合成樹脂」と使われてきたので、現在ではプラスチックのことを意味するまでになりました。本来の樹脂は、松脂ロジンやコパール、トール油、蠟など、自然由来の物質で、植物体がつくりだす油性分や脂が樹脂なのです。琥珀は太古の樹脂が化石状になったもの。

「天然樹脂 Resin」は、植物体が生成分泌する脂・油性類縁物質で主なものは、松脂から精製するテレピン油と残渣ロジン松脂、松材パルプ副成トール油、天然ゴム、バルサ、ウルシ、琥珀、蠟には、ウルシ、ハゼ、いぼた、カルバナム蠟、蜜蜂蠟。動物性ではラック、いぼた蠟、鉱物系ではコーパル。

 オイル・油性分には、バーチオイル、桐油・胡桃油、亜麻仁油、椿油、クロモジ・丁子油、オリーブ油、オレンジオイルなど。香料、塗料・ワックス・医薬剤・化粧品原料、研磨剤、洗浄、燈火燃料、封印、電子材料等に使われます。「樹脂」は鉱物製アスファルト、コーパルも含まれ、自然界の油脂性分を「天然樹脂」としてきました。熱帯雨林を伐採して拡がるプランテーションの椰子油パームオイルも含まれます。

 現在、樹脂といえばプラスチックを意味するようになりました。石油化学合成の熱可塑材料を「合成樹脂」としたために、樹木の近似類縁のイメージを与えてきました。

天然樹脂とは違う成分の人工合成化合物は性質がにていると厳密に区別せず、「合成樹脂=プラスチック」が「樹脂」の代名詞となってしまいました。同じように転覆したものに「レザー」があります。Leatherは、本来、動物のスキン肌のことですが、日本では、椅子張りに使われる皮革を「レザー張り」。はじめは「ビニールレザー」でしたが、何時しか「レザー」に。

 ファッションの世界でもイミテーションレザーは、「人工皮革」を意味します。石油とメリヤス布地が原料ですが、本物と見間違うほと精巧になりました。安くて耐久性があり、手入れがいらないので、本革は高級特注品だけになりました。「レザー」は、カタカナ外来で違う響きがあり、石油化学製品をさすようになりました。化学物質名や「合成」をつけないと別物と判らない。誤用にもつながるのです。

また、「塩化ビニール化合物」は一旦燃えれば有毒ガスを発生。火災に気が付けば、逃げる前に致死状態になります。エレベータ箱やホテル内装には、粘着剤付き壁面化粧フィルムやシートを防火・不燃建材として多く使われていますが、下地構造材は木質、室内の人体・衣服や家具物品はよく燃えるのです。下地だけでなく裏地同等が望ましい。 ABE擬木論2018

「Resin・樹脂」と 「Rosin・松脂」

 

黒松・松脂ロジンの採取 「溝付け切り付け・鉋法」 Odenwald ドイツ中部低山地帯  1987年5月ABE

電子材料に使われる主要なジョイント材料には、天然パインから採取する樹脂材料があります。

 琥珀 Amberは、古代の植物の樹脂が化石となったもので、古い地層から発見され、美しい宝飾品に賞揚されます。半化石状態のCopal は溶剤に溶かしワニスなどの塗料に。琥珀はこすると静電気を起こし、18 世紀イギリスで Electron と命名され、Elecric 電気、Elecrron 電子の用語になりました。樹脂の利用は美しく奥深いのです。

 松脂ロジンは、ハンダ付け材料Fluxの重要な原料で金属表面の酸化皮膜を除去してソルダージョイント接点を形成、最先端の電子基板、チップデバイスのマイクロソルダリングに活躍。バイオリン・弦楽器のボウ摩擦剤は松脂ですし、「天然樹脂」は、時代毎にその有用な役割をになってきました。製紙原料、バインダーなどにも多くつかわれ、溶解混濁し物質間をつなぐ役割をはたします。樹脂は重要な産業マテリアルですが、石油系合成物と一絡げにすることは間違い。

 

印刷化粧板・壁装材の商品化 木目柄製品の全国的な普及 イニシェーション

暖房器具電気コタツの普及でパーチクルボード(チップボード)ハードボード(硬質繊維板)開発からのコタツ板、ダイニングテーブル天板の製造へ

 多量の印刷化粧板が使われ、塗装工程を省力化した量産品は、ヨゴレが付かない耐久性をPR。どの家庭でも化粧繊維板の炬燵板が使われ、全国的に普及しましたので、角館の専門メーカーでは、膨大な生産量でした。敗戦後の経済復興期から欧米の建材製品を導入する傾向は強まり、高度経済成長期から量産資材として自然素材の手加工から次第に工場生産品へシフトしていきました。

プリント木目化粧板から化成シート・フィルムへ

壁装紙及び塩ビシート「木・石・煉瓦模様」サンプル  木目柄114種類 (1994年版 株式会社ニップコーポレーション)

樺・楢・栓・タモ・イタヤ楓・槐・楡・シナ・トネリコ・白樫・杉・屋久杉・赤松・漆 チーク、パドック、ローズウッド、ウォールナット・メープル・他

1994 -1995  木目印刷壁紙114種  (株)ニップコーポレーション  この頃の内装壁紙には、プリント製品であるぎこちなさを感じさせる雰囲気がありました。

 塗工紙に木目写真製版・印刷から、木目イメージをリアルにした導管押刻、立体感をつけた発砲エンボス、塩ビフィルム立体印刷エンボス加工シート製品へと拡大。集成材模様、漆塗工柄や煉瓦・大理石模様も現れ、インテリア装飾産業の代表的な資材となります。

メラミン化粧板・印刷木目柄の登場

メラミン化粧板デコラ製品では、木目系製品が最も多い。1990年版サンプル

プリント柄 : 松・杉・樺・楢・タモ・シオジ・樟・桜 チーク・ウォールナット・ローズ・ブラジリアンローズ・紫檀・花梨・黒檀・オーク・ビーチ・アッシュ・パイン 他

 1912年、アメリカで開発された熱可塑性合成物質「メラミンレジン」をクラフト印刷紙に含浸させて、高熱加圧成形したもの。 耐熱・耐衝撃・摩耗性、耐水、電気絶縁、接着・成形加工性等に優れ、はじめは、単色モノトーンで鉄板塗装擬似塗装面の表面仕上げ材として市場に登場。軍事戦略物質から派生した汎用化成品です。木目や大理石、抽象柄が加わり家具・内装化粧合板として工業建材市場にデビュー。1970年代、不燃・耐熱・耐水・汚れ傷防止の院アテリア装飾材として使われ、小職も水廻り・工場機材・内装工事につかっていました。国内では、始めに製造販売した住友ベークライトのメラミン化粧板「デコラ」が一般名詞となりました。因みに、商品化された当時のアメリカ及びヨーロッパでは、現在も「FORMICA」というブランドです。スイスなどでは、高級化粧板に入ります。

印刷木目柄のコタツ板の普及と家電製品、住宅設備機器の木目つけプロダクトデザイン

 敗戦後の経済復興期から欧米の建材製品を導入する傾向は強まり、高度経済成長期から量産資材として自然素材の手加工から次第に工場生産品へシフトしていきました。炭や練炭コタツは、堀込みで灰の始末が面倒。直火の火災、火傷の危険があり、電気ヒータ器具が小型化されると、櫓の上部・天板下に取り付ける構造になり、家電メーカーや建材・住設部品からの参入、コタツ布団とのツキモノから繊維・インテリア産業も商品化されました。

木目調・木肌調・漆風・家具調という名の「優しい、うるわしい」くつろぎ

 冬期だけの暖房商品から一年中使える「家具調コタツ」へ移り変わり、発熱体を装備して家具メーカーも製品ラインナップ。「コタツライフ」というスタイルが流行します。

 暖房器具電気コタツの普及でパーチクルボード(チップボード)ハードボード(繊維板)開発からのコタツ板の生産に多量の化粧板が使われ、塗装工程を省力化した量産品は、耐熱性で傷ヨゴレが付かないなど耐久性をPRしました。

量産ものが出回る以前、コタツ板は建具・家具職人が制作して、地域内で使われていましたが、木の板は重く、汚れやすい。熱い食器で塗装が変色したり、煙草の焦げあとがつくので、耐水・耐熱で汚れにくく、見栄えのする化粧板張りになりました。どの家庭にも化粧板炬燵板が使われ、全国的に普及しましたので、角館の専門メーカーでは、膨大な生産量でした。花柄・蝶・ポップなども登場。性能や機能ではなくデザインなどの付加価値で差別化をはかる販売戦略から、プリント柄は安物イメージがつきまとい、1980年代には、シンプル・モダーンへと移りました。ABE擬木論2018

「木目調」「木目風」の工業製品デザインは売れ筋 工業デザイン・広告媒体に刷り込まれる木目イメージは、印象操作につながります。

 プリント木目に違和感がなくなると、1976 年(昭和51年)TVキャビネットに「ウッディ」が登場。樹木イメージが利用されて自然素材感を被せました。以来、石油ストーブ、空調機器にも木目柄が定番となります。

 

スチレンレジン成形TVキャビネット「Woody」木製イメージを訴求

木のぬくもり、格調、重厚感、手造り感。木目印刷・プラスチック成形家電製品・ 住設機器が増えた1970年代。

 木目が金型彫刻でほどこされ、スチレン成形の箱体を「ウッディ」と謳い、ヒット商品になりました。「格調の高い重厚感・「木の感覚・自然の木目を忠実に再現」「高級家具の美しに手作りの味わい」「住まいに落ち着き・温もり」とコピーは踏み込み、あたかも自然素材風の印象操作。「木」が木ではない工業製品に「リアル」「手作り感」も添え、「リアルウッドの存在感」とキャッチコピーはエスカレートしていきます。TV コマーシャルで違和感は掻き消されていきました。 やがて高級品需要が天然木極薄突き板0.2 -0.15mmラワン合板張り、鉋屑同然で導管割れ目から接着剤が滲み出るため「接着剤塗装」という仰天建材が現れました。建材メーカーは競って天然杢を謳い、極限までのウス削り張り物は、大工・木工家具職を追い詰めることになります。因みに、ヨーロッパの突き板は、0.6mmがスタンダードです。

暖房器具・空調機器も木目柄が主力製品 の1970年代

 

バブル時代には、家電・AV製品の粗大ゴミ不法投棄が目立つようになり、数年前からは、リサイクル・エコ回収制度が発動されました。

 

「焼き杉板目柄」転写化粧鉄板は見た目はそっくり。量産しやすく、見栄え、耐候性・防火性能があり安い新建材で人気がありました。

土佐中村市 海辺の民宿

秋山郷民宿防雪壁板

 

接着集成・ラミネートからプリント、含浸・塗工コーティング、加圧熱プレス成形、複合材、合成材へと擬装ステップをあがる工業生産方式  現場加工、仕上げから工場生産、切り貼りもの組み立てへ

  高度成長期には、生産効率から、それまで現場制作されていた内装部材・構造材が規格かされ工場生産のセミオーダー建材がカタログ販売されるようになります。直ぐ使いの表面仕上げ・集成積層建材が需要を高め、手加工仕上げ・現場施工から半加工建材製品が登場し、1970年台には材木店が林場に並べ揃えるより、仕入れ建材販売に変質していきました。

1980年代には、木材にモノマーを木材に注入する木質系複合材Composite Matrialsが開発され、木の良さに違う素材の特質を合成したWPCが強化木として工業材料にもてはやされる。板材を接着積層し、安定した強度特性をもつ集積材エンジニアリングウッドが使われるようになりました。この段階では、木材主体の製品形態ですが、化粧材や擬木は紛い物と見下されていた時代。表面塗層から化粧板張りものへと木材をベースにした二次加工材が切り欠きだけで便利なので浸透し、擬木美装へのステップを推し進めたのです。

 品質より価格優先、手間をかけない。工場生産で省力化された建材が職人技能、手仕事を圧迫してしまい、コストに見合わない削りモノや塗装工事は消え、現場仕事がスピードアップ。良質の役物あれば手当し、必要な木材を予めストックしておく職人気質やまっとうなプロの姿勢は過去のものとなりました。

新聞記事に掲載された木製プラスチック、変性・化学薬品処理、改良新素材の礼賛

1980年代は、公害・環境負荷ついて言及があります。

「印刷 好みの木目が自由自在」1979年9月 朝日新聞

「おがくずプラスチック見参」1980年12月 朝日新聞

「鉄より強くしなやかで木目の美も」1983年10月 日刊工業新聞   

「内装パネル 木の手触り 質感コート」 2015 年9月 日本経済新聞

造園・土木工事修景のカモフラージュ、擬木コンクリートの工業製品化

 1960年代の多摩川河川敷には、砂利・砂を採取してヒューム管製造(排水・側溝)コンクリ成形品メーカーがありましたが、セメント流し込みのまま。表面に木目をつけるなど思いも付かず、環境に配慮した土木仕様はまだありませんでした。公共工事のコンクリート・鉄骨むき出しから塗装・カモフラ擬装するのは、高度成長期から始まります。

「整備」という河川・橋・公園・公共施設の総コンクリ擬木化

事例−1.総擬木の野川不動橋   国分寺市南町 昭和54年11月竣工 橋欄干・橋板・外構柵:焼き杉模様転写・ペイント ベンチ:コナラセメント擬木 藤棚:鉄パイプ押し出し成形組立材の黒塗装 子供がいる通学路です。 撮影:1986年6月10日ABE

事例−2. 真姿の池 武蔵野はけの湧水保全地区 国分寺市 コナラ擬木柵・焼き杉コンクリ側溝 1986年  土留め:コンクリートコナラ丸太風 エッジ鋭く転ぶと怪我する怪段 排水側溝:コンクリ杉板風

事例-3.  平取町児童公園  1986年10月ABE     樺・桂・針葉樹擬木 コンクリベンチ 寒冷地にコンクリ座面はそぐわわない。転んだら骨折、ぶつかると大怪我。下敷きになると動かせません。手の込んだ木肌感、節付け、割れ目刻み仕立て。

   

事例-4.  観光遊歩道の車止め損壊  山桜風モルタル塗装・鉄骨むき出し 衣類は引き裂かれ、血が出る立山室堂  1995 年8月ABE

事例-5.  松本城擬木コンクリート柵  白樺・櫟ミックス擬木+丸太半欠きジョイントカモフラ コンクリート外構焼き杉仕上げ  1991年3月3日ABE

嘘丸太・無理な構造も自由自在 あり得ない丸太・木造変態施工   ABE擬木論2018

松本城内掘り

 

事例-6. けやき橋 鉄筋コンクリート 大野郡大八賀村

 

事例-7. 松本市県の森公園 コンクリ東屋 酸性雨劣化 2017 年  酸性雨でコンクリート劣化・亀裂が入り落下 2018年建て替え

   

事例-8.   八ヶ岳ペンション村立て看板 モルタル白樺塗装  MILKY 牛乳屋号 白色・清潔なイメージは好感度が高い 好景気の時代には、明るいホワイトカラーが流行ります。近くに牧場あり。

 事例-9.  小海町養護施設の緑地休憩ベンチ 鉄パイプ芯に白樺風セメント塗装+唐松材座板 ネジ止め  丸太半割コンクリ擬木ベンチは木裏木理を描いています。 2015年7月29日 – 2016年6月30日 ABE

事例-10.   武蔵野美術大学キャンパス コナラの擬木に樟の樹皮剥き脚・コンクリート、アスファルト固め  2002年5月ABE

落ち葉の掃除が大変なので地面はアスファルト舗装、老木は養分・酸素不足で衰弱。

 モルタルで樹皮や木口・板目を描くと精巧な木肌でなくてもそれらしい。木目線画ならば模倣しやすく、金属より違和感が少ないため、公園・公共施設、アウトドアー資材として工業製品化されるようになりました。施工現場での擬木造形から工場製造製品まで擬木が使われていますが、そっくりにみせる樹種は限られています。

安直な造りは醜くなるのも速く、プラスチックス化粧、金属・コンクリートにしても耐久性・メンテナンス作業はたいして変わらない。

擬木コンクリートは、振動でガタがきて、屋外の風雨・太陽光線など劣化損耗すると塗料や色材は汚れはとれず、醜い姿となります。メンテナンスで塗り直しても修複はおぼつかない。木材は腐り、強度が弱いという先入観があります。

事例-11.   高速有料道路SA  階段プラ擬木 クヌギ風 ジョイント部は刃物 2011年7月ABE

手摺・柵・杭・段端 金属パイプにプラスチック絞目成形  ボルトジョイント緩み鉄板剥離 刃物感あり

 金属・コンクリートならば耐久性がある、管理が楽であるという思い込みは、安易な擬木製品を増長させてきました。土へ帰る自然素材から、金属・コンクリート、プラスチック製品への乗り換えは、ゴミ処分を先送りにするもの。お座なりの姿勢も問われます。転べば怪我骨折、触れば指切り。ABE擬木論2018

事例-12.プラ擬木の振動脱落 ボルトジョイントは必ず緩む。時限接着 クヌギ風緑地柵 南相木村2018年10月ABE

 

 

事例-13. ショッピングモールの総プリント木目不燃材・難燃材   松本市 2018年4月ABE

 

床壁天井・店舗什器は、プリント化粧シート木目仕上げ、柱・桁・ルーバー・スティール押し出し成形屋根棰木に木目印刷・転写仕上げ。

事例

建築基準法は住宅までも木材使用を制限、人工乾燥材を規定してしまいました。消防法内装制限は、防炎・難燃建材指定で不燃材ベース石油化学合成シート貼りだけを認可。鉄板・アルミ・石膏ボード、セラミックにプリント柄木目転写、プラスチックコート。居心地の良さや生体フィットより、火災防火対策で本物の素材は全く使えないのです。誤認・錯誤、転落・手指切傷、打撲・骨折怪我は現実のものとなりました。

人工乾燥材は、木の良さを殺し、イミテーション偽木目へ繋がる。

 実際は、長期間熟成した自然乾燥材を削ると人乾材料との違いが別物のように感じます。木味・品質格差が歴然。生物素材を燃えない程度に炉焼き殺して、反り収縮を抑え、安定さえるけれども、樹体生身のもつ油脂や抗体色素は高温で抜け、変質してしまう。がさがさ、カリカリの切削肌になります。真物は高価になり、材料管理や加工手間がかかるので、塗装濡れで木目肌は蘇り、綺麗にみえますからコスパ納得。深みどころか、時間が経つほどに劣化していきます。

安く速く、短い消費材として見栄えが重視されて、模擬材や化粧板でも十分とする営業センスが支配するようになりました。ユーザーは知識も浅く、木材加工分野の専門的な知見も貧弱でした。

 全て無垢材で建築する宮大工の構造材は、自然乾燥・半生で切削しないと困る。欅などは人工乾燥したら堅くて鑿・鉋刃はへたり、組み上げた後にゆっくり自然乾燥して全体が締まるという無垢太材の性質や伝統技術手法が台無しやがてガタピシがはじまりゆれ始める。法規で決めてはいけない性格のもの。ソリッド感覚を損なう大きな問題となります。棟梁たちがひそかに「数十年後あぶねぇー」とつぶやいています。プロも危ういと感じることが多くなりました。

伝承されてきた木造建築技術は、現場での身体記憶が紛い物をはねつけ、誤魔化せない本質をまなびとる姿勢が基本です。 嘗て、宮大工・一級建築士 木村忠紀棟梁(京都東山)、堂宮師 佐藤 猛 ( 気仙大工棟梁 志津川町)にご教示を受けましたが「継手・組手」修複については別稿「根継ぎ」で述べ、マテリアルトリートメント効果と自然乾燥と人工乾燥・KD Kilin- Killing Dry材の違いは別稿に記載します。

 

模様、柄にすぎない木目は、建築・土木・造園に使われて危険な事例を取り上げましたが、コンクリート、モルタル、鉄骨・鉄板・アルミ成形建材まで木目プリントをつけるのは、素材の質感を惑わし、本来受けついできた子供の感覚を間違わせます。実際に擬木に囲まれた空間にいると、おかしい、落ち着かない、気味が悪い、居心地が悪いという経験をします。鼻や肌でも、まがいものを感じているのです。外見だけでなく、重さや手触りからも危険を察知する体験や身体能力にも影響します。化学物質だけでなく、デザインプラ擬木の外見も誤認や害傷、不安定な環境を造り出しています。ABE 擬木論2018

 

事例-14.  突き板風怪粧グレイン・矧ぎ目溝ツキ擬装「ダブルフェイ木」「インチ木」商品  ホワイトオーク調 総プリント木目塩ビシート張り  山辺ワイナリー2018年4月

ホワイトオークとレッドオーク無垢材の幅剥ぎテーブルと木目プリント塩ビシートモールドデスク練物

木目柄に導管絞目を付け、更に幅剥ぎ加工擬装。フラッシュパネルは、パイン材練芯フィンガージョイントランバーコアー。板材矧ぎ加工に付け縁を擬装したあざとい商品です。精巧なフェイクを見抜くポイントは、木口切断面、下地裏に現れています。こんな手のこんだことをする神経は偽小判造りに近い。

突き板マッチングのパターンも不自然で違和感があり、エッジの擦り傷にソフトな下地層がみえる。ひっくり返して持ち上げると構造が判明、ソリッド材は重い。本物の天板があり、木口で判りますが、デスクの外見は、おや変だなとい感じでプロでも見抜けません。矧ぎ目のズレまでつける。あまりにもリアルに造られていて、紛らわしくてわからなくなりました。困ってしまう、どうしてくれる。

事例-15  フェイク菓子・枝型チョコレート 10年黴びない腐らない擬枝菓子 白樺イメージとブルーベリー香料砂糖固め

 白樺林が多い長野県下で2003年新発売の「白樺の小枝」森永製菓株式会社製、樹とフルーツイメージを被せたチョコレート風菓子。高速道路SAで販売キャンペーン中に購入。人造おやつの食品成分表示・添加物は十分に開示されていない時代でした。2003以降、未だ腐りません。

木の実を使った菓子は多く、上質な銘菓も記載しませう。「菓」子は字のごとく木のもの。

くるみ「香木の実」 包装木箱は米松 長門屋製 会津若松市 2015年3月

美しい真物を見ても綺麗過ぎて「嘘ぽい」という。「木離れ」が起きている。

木の優れた性質をアピールし続けた結果、顧客の木離れを起こす林業・木材住宅会社のパラドックスも深刻です。

2016年、SNSに掲載されていた「木育活動グループ」の森林ジャーナリストの記事を偶然に拝読しました。「木を遠ざけるのが教育関係者で、木を知らないのが製材所。木材住宅メーカーは、木離れを起こす」という深刻さです。

 木の魅力を訴求して営業販売している大手住宅メーカー自身が、水廻りのメンテや施工トラブルを避けるために、プラスチックコーティング剤をふんだんに使うあまり、ユーザーは逆に「木の住まい」に懐疑的になり木離れ。

では、人工乾燥で殺さない、ナチュラルシーズニングしたソリッド材を使えるメーカーはありませんから、建築基準法で定めた人工乾燥の構造材を使い、狂い動かないことを求めればプラスチックで処理するのが必定。消防内装制限・防炎・防火材料は全て合成無機建材ですから、自然素材の良さを謳うのは無理なおさら。

「ニューツリー」 電波基地局タワーの新たなカモフラージュ樹形

ROBERT VOIT: NEW TREES   The nature of our future : phony – and telephony – trees

ロバート ボイテ   フォトグラファー写真作品  ニューツリー・新樹:我々の未来の自然:偽物 – 電話と通信 –  立ち樹  樹形でカモフラージュされたGPS, Cell-Phone 基地局の撮影記録

フェイクツリー「ニセ樹」のランドスケープやポップアート、携帯電話配線接続技術の進行と自然界との和解を気遣う配慮の必要性を提示している。

S; 「aperture 」Spring 2010 / Issue no.198   p.44 ON LOCATION

 優れた写真レポートの力作ですが、擬装ツリーの先進事例・問題提起として学びたいと考えます。「ニューツリー」は枝葉を少しつけてカモフラしていますが、それとなく不自然さを残し、人工物と感づきます。「スカイツリ−」には、土台はあっても枝・葉はなく「タワー」。巨大電柱をツリーという様なもの。

 

作品集「New Trees 」by Robert Voit   2014

Steidl Verlag,  Göttingen, Germany

Christoph Schaden (Epilegomenon)  ISBN 978 – 3 – 86521 – 4  

150 pages   260 x 317 x 21mm   Clothbound 

結び

 以上、模木からフェイ木、ニューツリーまでを経時変化で辿り、さまざまな用途の事例を解説とともに記述しました。どんどん増殖するニセ木を観れば、これほどまで樹木に執着するのは、人間が誕生してからずっと樹木に依り添ってきたという、本性を再確認する作業でもありました。既に、重要な金属・石油埋蔵資源を70% 以上を使い果たし、そう遠くない未来の生存資源は生物材料しか手当できません。

 マイクロプラスチックが海中生物から地上まで拡がり、石油精製・エネルギー燃料は、厄介な酸性物質を降らせています。様々な影響やダメージが出てきた現在、プラスチック・合成化合物の蓄積を放置できないデッドラインにきているという懸念が強まります。同時に、生存基盤である自然林は伐採が進み、木材消費は加速され「偽木・フェイ木」は増えるという、危うい状況なのです。

人間と木の関わりやプロダクトデザインからみると、解決に結びつく手掛かりは見えてきましたので、確かな手法をプレゼンテーションしていきたいと思います。

① 天然性樹脂と人工合成物質を混同しない

 熱可塑性合成物質プラスチックを「樹脂」というのは日本だけ。本来は、植物体がつくりだす物質で油性分や脂が樹脂なのです。 まず、論文・専門書から直しなさい。

2018年8月、白馬村オーガニックマーケットでお会いした合成樹脂トップメーカーの研究開発職A氏は、「樹脂というのは日本だけで、他は全てプラスチック。おかしいのですがが定着している。」「これからは、自然の樹木に倣い、分解して土に帰るものを研究すべき」という意見でした。

② デザインと人造物表示、錯誤化成品総量限度

 周囲を擬木・偽木で固め、馴れてしまうと、五感の素材センサーは誤作動し、誤認、錯覚を引き起こします。見た目で木製ではない形状、手で触れると直ぐに判る。おかしいと感じ、接近すれば騙し絵のように気が付くように造る。もしくは、部分的に「造りモノ表示」サインを。また、使用面積は全体を蔽うのではなく、限定部分的であること。住宅建築材の化成品総量規制とか表面擬装制限、製造メーカー回収エンドレス責任はどうでしょうか?

③自然物に似せてもよい限度 許容される擬木のサイズと形状

 

・BURT’S BEES   CANDLE   18 x 280mm  WS-10  Guilford, Maine  USA  蜜蝋キャンドル

・2 BRNCH HOOK ハンガーフック鋳物 86 x 130mm   S355-92ABR   (株)ダルトン 静岡市

・家具引き手  ABS モールド  Germany

・コンソールパネル Mersedes Benz E240

 擬造物は大きくするほど異物イメージが強まり、馴れると逆に鈍感になります。表面積・寸法を抑える配慮が必要です。幼児・子供の身体記憶を歪めず、誤認・怪我に配慮しなければ危ない。明らかに人造とわかるような造りが賢明です。寸法は、手のひら腕長さ程度ならば始末できます。手におえる範囲のもの。木に近づけるならば、燃やしても安全で、自然の腐朽菌が分解して土に帰るように倣うのが本筋なのです。

③ 育児教育施設、病院、修復・保存作業、美術館施設には化成材料を使わない。

 経年劣化過程での変色や化学反応、物質崩壊で時限接着がおきます。

④ 化成商品の製造物責任範囲は、製造過程、回収・廃棄・再利用まで。

 使用原材料と物質変化・終末を明らかにする。「無限責任」を表明した日本の鋸鍛冶 山口介左ヱ門という職人が昭和時代にいました。

⑤ 林業、木工制作、建築設計、造園・土木技術者、デザイン職に最新の研究成果を届け、プロフェショナルに高度な専門知識と現場での上質な仕事に役立てる方途をつくる。

 保護・安全性、メディカル、環境性能、修複・保存などの木の優れた特性についても語れる、木の仕事に携わる人びとであれば幸いです。つまり、身体記憶を磨き、現場で実務ができる人物に教育・指導を委ねたい。

⑥室内木材環境装置としての純木ソリッド材比率を上げる。

 マンション・集合住宅内は、家電製品・空調住設機器・PCやモバイル機材が揃い、建物上下・左右から電磁波が入り込みます。いわば立体電子レンジアパートメント状態です。

インテリアには、多くのプラスチック建材が使われ、化学物質が溢れています。おまけに、水廻りには、合成洗剤・香料・シャンプー・化粧品がゴッソリ。着色剤・芳香も化学合成ですから、匂い嗅覚、視覚・触覚は誤魔化されています。標題のように、ポリビニール袋に寝ているのです。

⑦分厚いソリッド材で室内木材率をアップして安全な居場所、治癒、保護、保存性能を高める。

 厚板を張ると電磁波は減衰され、木目の縞模様ゆらぎが目や皮膚の疲労を軽減。居心地を良くします。小職の経験では、木材ソリッド率が15%以上あれば、部屋の落ち着き、居心地は格段に良くなるのです。光線遮蔽、音波・電磁波の吸収、絶縁・被覆・保護の性質は生体を護ります。

人体は、脚元から疲れるように出来ていますから、コンクリートや塩ビポリタイル床に厚手の合板を敷くだけで作業が楽になります。

長い樹上生活と進化の過程で獲得したDNAは、樹木への回帰欲求・親和感が刷込まれています。因みに、枝渡りで手指の触感センサーは鋭く、木肌を瞬間的に識別できるのです。危期には、すべらないように手に汗をかくのも同じ。木目イメージや樹形に弱いのは、樹体に保護されてきた本性によるものです。

⑦人間が増やしたり、再生循環できるマテリアルは、家畜と樹木だけなのです。

 人類は、森林、地下資源・海洋生物を喰いつくす勢いです。厳密には、地上の樹木が生長肥大した増量が真の成長ですが、工業生産統計やマネー換算では、先送りの未来後負担分は無視されています。

⑧木の内科は、未知の領域に入ります。

 有史以来、最長地表生物である樹木が長い時間で獲得した生命力と、本来もっている抗体・抗菌性やケミカル吸収、遮音・断熱、絶縁、電磁誘導、紫外線・放射線遮断、保護・保存性質も含めて、さらに詳しく研究することも忘れてはいけません。人工乾燥材は焼き殺しであり、ナチュラルシーズニングの木材は、木の本来の良さが生き続け、安定した樹体内組織が人体や貴重品を修複・保存し護ります。

⑨イメージを買わない。

 広告宣伝は、巧みに印象操作をしてきましたので、実態とかけ離れた似せ偽もの・贋擬木が主役になりかけています。意図的に偽木目や擬装されたあざとい商品はむしろ詐欺・騙しに近いもの。見破れないほどに精巧な造りは、不遜で危ういテクノロジーになります。フェイクが流行していますね。

脱プラ、オーガニック素材の再生循環・再帰、ソリッド材の勧め

 石油プラスチックは、便利で大量生産・大量消費を加速し、モノを大切にしない文化をつくり出してきました。本来、石油は不安定な物質ですが、地下資源を使い果たしてから、樹木の恩恵や重要性に気が付くことになりそうです。

これほど人工材料が増え、生活環境が変わり、擬装・擬木で囲まれて生活していれば、動物感覚は歪められ、意識もおかしくなりかねません。小職の周囲でも化学物質過敏、金属アレルギーに苦しむ人は目立つようになりました。化学物質の匂いに耐えれないという新築シックハウスクレームは増えてきました。壁装塩ビクロス、合成塗料、プリント化粧板、接着剤・可塑剤、コーキング・充填材、断熱材、合成繊維カーテン、人造浴槽、樹脂製システムキッチン、成形照明器具、家電・住宅設備機器、建具、家具・衣服まで総プラです。プラスチックの中で生きているのです。

 不安定な石油物質がまん延してしまい、人の感性や思考を歪め、嘘フェイクが満ちて、明らかに環境バランス、産業経済・政治までおかしくしているのではないでしょうか。推論とするにはあまりにも危うく切実ですね。

コンピュータグラフィックス、PCゲームが生彩なイメージ画像となり、バーチャルリアリティ(仮想現実)フェイク情報やイメージ操作も進みます。質量がないデジタル化では、生身のアナログ感覚はちぐはぐになります。樹木は人体同様、アナログ・オーガニックそのもの。

 環境に支配される生き物は、身につけるもの、見るもの、食べるもの、休む塲所が異変をきたせば、身体は拒絶したり、異常な生理的な反応を引き起こすます。化学物質や電磁波・放射線にも注意しなければなりません。人の体は数万年の間、形質はほとんど変わらず、有史物質文明以前に完成しているのです。新大陸・桃源郷はないので移動は出来ず、予防もできません。擬木免疫はまだ出来ず、生き物の感覚を歪め、精神もおかしくなる現実が広がってきました。人は木から離れてはいけないのです。

「山・森林が荒れると、川下・社会が荒れる」人間は、森林が伐採されると喪失感が大ききいので、一層不安に感じます。生命維持基盤がなくなるからです。これは、地表森林から発生したルーツ、DNAに刻みこまれた本性ですが、今、世界中で森林伐採、枯れ死異変がおきて広がり、人体も少なからず影響を受け、自然環境はすさび、社会も錯乱しはじめているように見えます。

繰り返し強調したいのは、石油化成品は不安定な物質であり、激増するプラスチックは、モノを大切にしない生活文化を作りだしました。崩壊してゴミ微粒子となり、海洋に浮かび漂い、地表に溢れています。化石燃料による大気変動だけでなく、人体も気がつかないうちに大きな影響をうけていきます。

この擬木論は、木工技術のゆらぎから木目、樹肌擬装が進む過程、偽木「フェイ木」の出現までを捉え、安易に化成材をつかう産業動向とその影響について総合学的考察を試みました。

 

* 江戸初期から昭和初期まで使われた様式家具に「箱形火鉢」の用材・構造・技法については別稿で詳細を明らかにします。

* 「熱可塑性化学合成物質」:学術的に使う時は、Plasticsではなく、Synthetic resin とします。

* 模木から擬木、フェイ木までの変遷をフローダイアグラムにおとした年表は未完です。新たな知見は順次追補、既往の文献や参考資料は補足します。

*擬木用語:Resembled wood  (E)  False wood  / faux bois (F) legno simile・assomigliava al legno(I)

WOOD LOOK (E) :木に見える・木柄

Wood Graining :木目描き( 着彩・塗装) Grain Style  :木目風 Wood Pattern :木目調

Woodyは「木の、木が多い、木質の、木ような」  原意には、人造・イミテーションは含まれません。

 

ⓒ2019 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2019  「擬木論」「現代木と人間の関わり」「樹脂と人造合成化合物の違い」「擬木・偽嘘フェイ木の歴史」「擬木デザインソリューション」「木目・樹形イメージの利用」「Kurt Naef  in TOKYO」

 

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