James Krenov アート作品を生み出す傑作手鉋_James Krenov’s Wooden Hand Planes
It’s like a musical instrument that you have to tune up a little bit before you start the concert. by J.Krenov
College of the Redwoods 校 Fine Woodworking Program では、入学すると基礎的な講義と機械加工ガイダンスの後にとりかかる実技は「手鉋」の制作です。
クレノフスタイルのWooden Hand Planeが「ロールモデル」なのです」。鉋刃・鑿の研磨は、一年中するのでこの作業が作品制作の大事なスターティングプロダクツ。Jimによれば、この自作鉋は生徒の資質をみる重要な過程で、次の3タイプがあると言います。
A: 器用型 仕事が正確で技術力があり、腕が良い。 職人的。
B: タレント型 仕事は少しラフでも造形的なセンスがある 。有望。
C: 普通・個性ナシ つかいものになるかどうか怪しい。情熱が身を助く。
才能は、道具にも顕著に顕れるものです。
Jimは、手頃な優良材のブロックがあると作品制作時の気分で度々、手鉋を楽しんで制作していました。モチベーションアップに繫がり、生涯では、かなりの制作点数です。卒業生が所望すると気前よく渡していたので、生涯大事に保有されているはず。ワークベンチでは、自作鉋、スクレーパー、鑢、鑿、鋸、切り出し、玄奥、クランプ等が目につきました。鑿・胴突き鋸、砥石などは、日本製が良い。出来るだけ道具は自前で、既製品をあまり買い込まないという卓見。身の回りに沢山のメーカーの異物が有るとそれぞれが主張し、工房の雰囲気が乱調になることはさけたいと。
このジエムス・ クレノフが率いるワークショップでは、道具つくり・使いこなしと共に作品制作に取り組む基礎的なノウハウも身につくように生徒自身の進度にあわせて指導・フォローしていました。講義時には、全員がそれぞれのワークベンチで対面受講し、教師が適時アドバイスしながら、生徒自身の個性や能力を引き出す仕組みを構築しています。
ちなみに、生徒たちはJimを巨匠とは思っていないようで、ズケズケもの言い、対等に付き合う。(時々、尊敬していましたが。)ウイークエンドは、ご近所や訪問客も混じり、裏庭で楽しいパーティ。親密なコミニケーションが続きました。生徒の作品も随時見学し、直接購入予約できます。
ワークショップ創作現場は、作家の造形センスが閃き、独自のテクニックは練達、身体動作自体が素晴らしいものです。教えながら、実際の作品制作を生徒の傍で続けるのは相当の集中力と情熱がないと続きません。生徒は、先達の最高の仕事を身近で観ることができ得がたい崇高な時間、有り難い「場」を共有できます。作品の講評やプレゼン経験を通して様々な教示を受け、親方とともに仕事をすることが極めて重要なのです。
同じように、日本の職業訓練校でも台鉋の自作を経験させます。規格化された標準モデルを全員同じように作る。それぞれの個性を尊重すると教えにくいし、技能専門学校ゆえ教科達成度が一番大事です。技能認定試験もあり、何よりも自由な作家育成ではなく現場工員養成ですから、生徒の基礎技能修得が目的で全国画一的な教科になっています。中世から使いこなされ、江戸期に完成された台鉋はこれ以上シンプルには出来ないほど洗練されたものですが、
近年、ヨーロッパでも評価され、使い手が広がりつつあります。引き削りの台鉋と押し削りの鉋の性能・機能を比較すると、鋸と同様に日本式が有利。刃の材質が高く、加工精度やシンプルでコンパクトな形状、作業労力など。(海外では、台直し調整だけがネックですが、習熟すれば問題ないようです。押して切る文化と引き切りの文化の違いもやがて便利なものへ移行、和食と同様に和包丁も世界的に評価されています。)アメリカでは、次第に日本の工具が増えてきた印象です。地元に定住して工房を構える卒業生が増え、仕事場を訪ねると、いろいろな日本製品が通販などで手に入るので関心が高い。
アーティストのその手から生まれるオリジナルの道具類も同時にアートワークを象徴していると言うことが出来ます。自作手鉋は、洗練された「クレノフスタイル」そのもの、観るほどに魅了されます。鉋の世界の優品。仕上げ・中しこ、外丸、長台のエクセレント4丁を拝受し、記録作成とともに、日本国内で収蔵保存していますので公開しました。和鉋は、鍛冶職の刃物刻印銘で評価、取引され、鉋台は規格仕様、下職扱い。JKスタイルは作家の造形作品になり、作風や個性を表現してやみません。創作手道具も存在感を漂わせる魅力的な役者です。「音楽」を演奏する楽器の製作であると。
James Krenovの手鉋 詳細 /上:JK Museum Case
①仕上げ鉋 725g in Tulip wood ② 中しこ 790g
③ 外丸 620g in Cocobolo wood ④ 長台 1,265g in Lignum vitae(底部)
45mm /寸五 長台:押し引き比較 (刃口は、同寸9mm)
上・J. Krenof 長台 : 60w x 50h(56)x450l 1,265g , 1994
下・赤樫寸五長台:67w x 32 h x 374l 1,000g , 1993 (鉋刃:神田も作、台打:青山駿一) 青山駿一は、ウッドワークサミット1991 招聘ゲスト (名古屋市中区露橋 青山鉋店)
JK長台は、L : 長さ12% (尻部 35mm ,頭部 45mm )長い。引き削り和鉋は、摺台としてコンパクトで手指の握りが安定、細かな仕事にも適応するので、押し削りより有利。鉋の制作・刃物仕込み勾配等は、著書 The Fine Art of Cabinetmaking 1977, p.80 – p.103 に詳説 ( 鋸・鉋の切削・削り方向の違いは、歴史文化・風土に根ざしているので使い勝手の単純な比較は難しい。長台の比較は、通直精度を出す台彫り寸法の長短を知るための検討です。ベンチワーク立ち作業とあて板座位姿勢の差違もあります。)
刃幅45mm 刃口9mm 同寸
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木の総合学研究2013 – 2019 「鉋・和洋比較」「JK作品 Wooden Hand Planes1992 -1999」 「木工房の切削道具」
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