「木」と芸術サミットワーク工芸木工木材加工機械

巨匠 James Krenovのテクニカルメッセージ・ウッドワークサミット・レビュー 

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

天才木工アーテイスト James Krenov のサミット事後 突き動かすもの

Woodwork Summit 1991 参加予定ゲストのジェイムス・ クレノフ親方が直前に体力不安で訪日を取りやめになり、私は翌年12月中旬に カリフォルニアCollege of the Redwoods 校を訪ねました。サミットに来られなかったので、こちらから出向き制作作業やテクニック等の取材記録をすることに。カレッジで教鞭をとり、ワークショップで生徒と共に普段は一番奥のワークベンチで作品制作に打ち込んでいました。

Jim (クレノフ愛称)は、いろいろなメディアに紹介されていますが、学内では、授業で実技を指導、講義を通じて教えていますので、特に制作作業をつきっきりで記録すること有りませんでした。卓越した手業は、身近な人々には特別なものには見えず、全体の流れを記録する必要のない日常的なシーンですが、私は技能の主要部分、演出のない普段の姿を記録したいと要請。 ちなみに、プロの写真家やメディアは機械操作のシーンより、作品や手仕事の完成間近なワークベンチサイドを撮影します。(通常、取材はレンズ埃も嫌うので機械操作のカットはない。)高度の技は連続動作にあり、動画でないと練達度が伝わらず、その場にいないと体感会得出来ません。

J.Krenof in C:R -3-1J.Krenof in C:R 2-119991210
J.Krenof in C:R-9-1,19991210
 Jimは、バンドソー挽きの名手で、作品の挽き板、角材からの木取り・脚木理削りだしのセンスは秀逸。特にキャビネット箱体構造の単板挽き板・矧ぎは、2.5 mm (± 0.1 – 0.4 ) で加工精度を維持、下ごしらえが見事な独自のテクニックを披露、自然木を最高度に活かせる名人です。(薄板挽きの前に、扉エッジ貼り用の供材を先にカット。)
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単板挽き(Sawed veneer)は3mm でも小型自動盤にかかるが、2.5mmのほうが厚板から良い部分を沢山とれる。
薄いのでゆっくり途中で止まること無く、注意深く挽く。途中で止めるとブレードが揺れる。自動盤にかけ直し材料のロスがでる。ソーブレードのくせでどっちへ動いて行くかを見極め、箱定規をバンドの動くほうへ合わせる。材を無理に強くあてない。無理に力を入れて定規につけるとバンド自体に負荷がかかり曲がって真っ直ぐに挽けない。木口年輪、木裏・木表の組織とソーブレードの横動きを良くみる。
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挽肌に段つきが発生するとブレード交換 2.5 mm T    JKの挽面
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挽単板2.5mmTは、マッチング順にセットで並べるBook Matching , 長台で矧ぎ面を削る
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クランプと楔で矧ぎ面を固定 カリフォルニアでは、Yellow Glue 速乾タイプ、水溶性がベストだが、多湿の日本では耐水性がよいのではないかとのアドバイス。 矧ぎ面下に新聞紙を敷く by James Krenov
Photo.  by Kurayuki Abe , 19921210       CLE 40mm –  25mm , ASA 400
 ご高齢ではありましたが、絶頂期のノーブルでパワーフルなアーテイストの作業シーン・雰囲気を公開します。Jim親方に特別出演を頼む神経も太いのですが, 二十世紀を代表する作家を記録保存・次世代へ伝承するために足を運び、尊敬するウッドワークサミット招聘ゲストの記録もこれでフルムーンです。
バンドソーワーク実演・作品について
 この技術は、キャビネット制作で最も重要な要素技術ですのでサミットの「事後参加」の役務コラボで実演していただきました。特別実演は、ワークショップで前例もなく頼むことはばかれるのですが、上機嫌で気前よくノウハウ・要領を解説してくださり貴重な画像とともに残すことができました。更に、自作道具でユニークな「手鉋」も日本国内に残したいと希望し、四度の訪問ごとに一丁づづ譲り受けました。作品は、日本国内で数点がコレクションされています。アーティストJimの自作鉋はやがてアメリカ重要文化財・遺産にもなるでしょう。作品や著作、資料を数年前からカレッジ卒業生や先生たちがスミソニアン博物館の収蔵コレクションにする計画を進めています。スエーデン時代の初期作品からアメリカ国内制作作品・ギャラリーでの展示記録やカレッジのショップ維持管理教務Mr. David Welterが長年撮影したフィルムなどが散逸することなく集まれば天才の全貌が明らかになると期待します。お会いする度にご教示を惜しまず、オーラが出ているお人柄は、日本でいう人間国宝(Intangible Living National Heritage)にもふさわしい巨匠でした。今頃は、天国の工房でクラウドキャビネットを制作していることでしょうね。
 閑話休題、滞在中の夕方は、町中のビール醸造レストランでJimと一時を過ごし、支払いしないできたことがありました。ただ飲みでも、町中の人が知っている有名人ですから彼に付けがきます。「お前が払ってきたと思ったョ」と、ホテルに電話があり、慌てて精算。遊び場所もなく、多彩な経歴の受講生に混じり、Redwoodsエリアに位置し、のどかなコーストサイドで1-2年間 Fine Woodworking Programを修得する時間に明け暮れる最高の場所です。
www.facebook.com/pages/College-of-the-Redwoods-Fine-Woodworking/514069361977568

ⓒ 2013  kurayuki, ABE

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木の総合学研究2013 – 2019   「木とアートクラフト」「Fine Woodworking」「James Krenov」 「College of the Redwoods」 C/R ワークショップ、道具類は、次回掲載。

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