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「木工」巨匠の本 ベストブック-4. 日本家具文化への強い関心| James Krenov’s Books
阿部蔵之|木とジョイントの専門家
ソリッド材から挽き削り出す木の表情やフォルムをデティールが協奏し、作品が音楽へと昇華。シンプルで美しく端正に仕掛け、ハーモニーに酔いしれる時間を手にした。
・THE IMPRACTICAL CABINETMAKER
ISBN 0-442-2458-0
1979
Van Nostrand Reinhold Company
A division of Litton Educational Publishing, Inc.NY
225 x 283 mm p. 192 ハードカバー
$16.95 / JPN 4,750 - 東光堂書店 TOKYO 2冊購入
目次 Contents
Woodcraft Today p.8
Some Thoughts about Solid Wood p.16
Using Solid Wood p.23
”Real Veneer” p.36
Logic p.48
Repairing Mistakes? p.56
MarvelousThings p.58
Composing – Another Approach to Design p.59
Starting Pont p.72
Color plates follow page p.72
A Writing Table p.73
Carved Curves p.86
A Playful Thing p.100
Accuracy p.115
Showcase Cabinet p.125
“Those People” p.152
Conclusion p.156
Index p.159
独自の木材美を際たたせる使いこなし、ハンドワークの痕跡の味わい、キャビネット制作の頂点ともいうことが出来る具体的な工作方法が詳説されています。文章は、翻訳が難しい表現もあり、写真やスケッチ、図版で大部分は理解できます。更に、木工実技を体現する人は、読み込むと深い知見にふれることが出来るでしょう。相当の木工経験がないと理解出来ない納まりや構造の記述があり、発想やデザインの意味などは少し難解ですが。
モデリングは、イメージスケッチのあとに原寸モックアップで検討しながら各部位の納まりを決めていきます。引き手一つでも表情が大きく変わります。制作途中でのパート作り替えを楽しんでいました。作品は、一つの音楽として奏でるように作り込む。自作の道具は、美を演奏する楽器なのだと表現しています。至高・練達の境地から出てくる言葉として味わいたい。
日本家具文化への強い関心
1988年8月、訪日時に奥様と来松。交流の一時を過ごされましたが、私は1992年から1999年の間, College of the Redwoodsを4回訪問、組手(國政流)の特別レクチャーをしたり伝統工具の運び屋を実行。貞介作胴突き鋸、東敦史の南京鉋、鋸身を使った真道特製スクレーパーが刮目品。
交流の中で、日本人の生徒がいるとクラス運営によい影響があり、出来れば毎年受け入れたいとの評価でした。礼儀作法がよく、場をわきまえ器用で熱心、日本語が読めるので木工具や取説など通訳要らず。協調的で好ましい卒業生がほとんどだったからです。
木工の世界では、現業・現場体験がなくても伝統文化の重みを背中にしょっており、意外にも国外に出て教室の中で伝統を意識させられる。クールジャパンを強烈に思い知る貴重な体験をします。一見ありふれたモノが長い時間をかけて到達し、得がたい質実を運んできた事に目が開けば幸いです。
海外コレクションと日本の実情
明治以来、海外の美術館コレクションになった逸品が想像を超える数量ですが、家具類は様式化した実用品であり、漆工を除くと名工の「木工作品」は限られていたため、かなり国内に残っています。
和家具の名品は、箪笥・長火鉢・箱物がその代表格ですが、敗戦後、都内表参道のオリエンタルバザール*では長火鉢が格安でアメリカ軍将校に山ほど売却され、帰還とともに海を渡ったことも記憶しておきたい。アメリカの家庭にTea table として室内調度にされた長火鉢には、江戸時代から職業身分により誂えた優品が数多くありました。特に組手技術が注目されたのです。欅や桑の銘木を使い、手仕事の細工がすごい。
戦後、木炭を使う人がいなくなり、関西上方と関東江戸型と形式の違いや職業でも形が違うことも識別出来ないようになりました。様式の考証が曖昧になりそうです。また、伝統的な和家具をデザインできるデザイナーがいないのも不思議です。只今、伝統的木工職人養成所は、更正刑務所の中にあります。
箪笥やアンチークのコレクション本が英文で多数でていることも国内ではあまり知られません。海外の目から、日本文化のエッセンスが再評価されてブームになりましたが、気が付かない内にコレクターにどんどん運ばれているのです。数年前、松本市内のアンチーク家具店からごっそり時代箪笥をオーストリア・ニュージーランドのバイヤーが買い集め、トラック満載で持ち去りました。店主に尋ねると、修復して結構高く売れるのだそう。
木工イノべーションは、デティール・「組手」ジョイントからおきる
江戸期に起きた技術革新・開発の中で、長火鉢の流行と構造的要求から生まれた「変形枘」は、組手の進化につながる大きな考案でした。エネルギー革命で炭の出番は、暖房から姿を消しましたが、長火鉢使用経験のある人は、現在どのくらい居られるのでしょうか。暖房・煮炊き、飲食、収納と便利な長火鉢は高価で長屋の住民が手の届くものではなく、商人・富裕層のステイタス調度でした。
明治以後、庶民階層にも手が届く家具になり関東大震災まで一般家庭で使われていました。関東大震災で火災の原因となり、瀬戸火鉢へと一変し、職人の仕事が激減したのです。大震災は、生活スタイルを根底から揺さぶり破壊。江戸初期から戦後まで350年以上の歴史がある世界でも有数の様式家具として、そのデザインの発展プロセスや構造・デティール、「指物」の頂点「Joinery、組手・ジョイントテクノロジー」を明らかにしていきます。
Jimは、天秤・Dovetail Jointを抽斗・箱組につかい、割り付け方、綺麗な納まりを解説。「組手」への関心も高く、日本の伝統木工技術に注目していました。構造や機能にとどまらず、作風を支配するデティールには作品の神髄が顕れます。細部に宿る重要な効果が、存在感や佇まいを生み出すと言っても過言ではありません。デティールは、大事な造形要素です。
長火鉢組手骨董 神宮表参道の風俗先進地化
敗戦後、駐留アメリカ軍宿舎ワシントンハイツが明治神宮をはさんだ代々木練兵場に建設され、そこで暮らす軍人家族向けの洋装・骨董店が参道に並んだ。中でも同潤会青山アパートの向かいにあった「オリエンタルバザール」が一番店構えも大きく、オリンピック後、1972年頃まで営業していましたので、オーナーから戦後の様子や変遷を伺うことができました。
長火鉢は、「美術家具」として人気が高い出物だった。落とし枠の中にガラス厚板をおき、リビングルーム・キャビネット型テーブルとして使われました。精緻な組手仕事がキャビネットワークとして目を引き、相当数の作品がアメリカ本土へ。
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木の総合学研究2014 – 2019 「Fine Woodworking 」 「Artwork of Cabinetmaking by James Krenov 」
「組手」ジョイント
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