「木」と芸術「木」と遊び「木」の本工芸木工

「木工」巨匠の本  ベストブック-5. James Krenov’s Books

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

卓越した才能にふさわしい上質の制作記録は、絶頂期の前に優秀なプロの編集者が関わることで自身も創作意欲が高揚、次々に秀作を生み出すイニシエーションとなりました。

JAMES KRENOV WORKER IN WOOD

 P1110558-1P1110446-1
ISBN 0-442-26336-8
1981
Van Nostrand Reinhold Company、NY
235 x 312 mm   ハードカバー
$24.95 / JPN 7,730 - 東光堂書店 TOKYO 2冊購入
目次 Contents
Foreword   p.8
The size objects   p.12
Cabinet of Andaman Padouk   p.16
Wall Cabinet of  English Brown Oak   p.24
Box for Berndt Freidberg’s Ceramic Pieces
Cabinet of Spalted Maple   p.34
Details   p.42
No-lass Showcase of Lemon Wood   p.46
Writing Table of Italian Walnut   p.52
Cabinet of Swedish Elm   p.56
Bits of Maple Wall Cabinet   p.60
Details   p.64
Music Stand   p.72
Only in Ash?   p.74
Pipe Cabinet   p.76
Table for a Chinese Horse   p.78
Game Box   p.80
Details   p.82
Kitchen Cabinet   p.88
Violin Cabinet   p.90
Showcase of Ash   p.92
Chessboard   p.96
Details   p.98
Candlestick   p.104
Showcase of Doussie   p.108
Showcase Cabinet of Cherry Wood   p.110
Some Favorite Tools   p.120
Afterword   p.124
Index   p.127

美術書でも希な連続作品編集出版

今まで刊行された木工作品や職人技術記録など図書は沢山出ていますが、美術館印刷物以外は簡便・安直な本が多い中で、この出版が際だっているのは
・作品や人物の本質を見抜いている優れた編集者が担当した
・写真撮影、ブックデザイン・装丁もプロフェッショナルを起用
・取材から編集・出版まで時間をかけて本格的に制作
・出版社が高邁な使命感を有し、教育分野なのでアートの捉え方が商業的ではない
・価格に比べ上質な雰囲気の装丁、品質
・テキスト・参考書の体裁でありながら、同時にアート作品解説本として編集した
・「箱物家具」ではなく、オブジェ・彫刻的な目線で捉えている
・タイトルコピーが的確。本棚にあると趣味の良さを感じさせる
などの品格があります。

プロの仕事の連鎖・波及効果が高い完成度を引き出す

 削り出された木材は美しく自然が創りあげた芸術品と言われます。色調・材質感がとても綺麗ですがパーフェクトに撮影するのが大変難しい。撮影は高度なライティング機材からレンズ選択、経験豊富なカメラワークが必要です。 Kurt Neafも写真撮影・カタログデザイン・ロゴマークなどのデザイン制作関連作業は自分でやろうとはせず、プロの力量を使うことが良い結果をもたらすと言っていましたね。
手書きスケッチは、特に効果的です。自前の写真媒体は、自分好みで選びますので安上がりで安直ですが、一般の人が高い評価を与えるコンテンツとならない場合が多いのです。イージーな編集デザインでは作品の本質が伝わりませんが、家具調度を大切にするアメリカ+カナダの購買者数が日本と桁違いですのでハードカバー本が出版出来る事情もあります。
その後、VNR出版社の編集ディレクターが入れ替わり、会社の営業方針も変化し再版されませんでした。(カバーデザインは異なりますが、他の出版社からペーパーバックで発行されています。)
P1110594-1P1110560-1

P1110595-1P1110536-1 P1110538-1P1110539-1

巨匠作品の行方と展観

個々の作品は、楽曲であり、自作道具は音楽を奏でる楽器のように制作すると言います。誰も踏み込んでいない木の造形の世界に単独遊行していたようにも見えました。

 ユニークな個々の作品は、コレクターがいてアートギャラリーも注目。1992年から1999年までの作品は、さらに洗練されて素晴らしいものがありましたが、当時、作品が完成すると間も無くNYなどのギャラリーに渡り、一般公開展示や出版物にすべては現れませんでした。スエーデン時代からコレクションをする人がおり、画像の版権や所蔵先のクレジットなどが制約になりますので、主に雑誌記事、制作途中のスナップやプレゼンテーション等の記録が残されているものを観ることになります。
巨匠の秀逸な作品と道具やテクニック、制作プロセスを知ることが出来るまとまった貴重な4 冊、生前のエピソードや記録とともに全作品の集大成が望まれます。数年前に、スミソニアンに残そうという企画が立ち上がりましたので、JK作品総覧の作成準備が進んでいる事でしょう。日本国内にも、スエーデン時代の作品が個人蔵され、C/R カリフォルニアでの作品数点が美術館、関係者に収蔵されています。
・4冊の後にワークショップでの様子や作品と生徒作品を編集した「With Wakened Hands – Furniture by James Krenov and Students  」
Cambium Press ,  2000
ISBN: 1-892836-07-6
($39.95   ) が発行されています。

© 2014, Kurayuki ,Abe

All Rights Reserved.  No Business Uses.

複製・変形・模造・転載作り変え・画像転用、ロボット・Ai、業務利用を禁じます。

木の総合学研究2014 – 2019「Fine Woodworking 」  「Artworks of Cabinetmaking  by James Krenov」

▼ お気軽に一言コメントをどうぞ

次の記事: