「木識・木学」フルーツウッド木の内科木界自然の造形

フルーツウッドオニグルミの抗体・治癒、材色の発出・分泌をつきとめる | 芯央・節枝・幹根系へのサプライと生命維持・ダメージ修復 | 気が付かないことを、見えないものを明らかに  Insight 木の内科 – 63

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

肥大成長にあわせ増殖する芯央材色素・木理はどこでつくられ、樹体内にどのようにサプライされているのか。その抗菌抗体・損傷治癒機能を備える物質の生成分泌組織の動きを突きとめ、広葉樹芯材赤身の基底部と生命維持の仕組みを明らかに。

 抗菌・バリア−、治癒修復を担う色素の動きは、それぞれ別に生成分泌源があり、損傷部、樹皮、白太辺材への供給の動きはダイナミックです。切断すると空気に晒され酸化し色変り、やがて安定して芯材色は固定されます。速い経時変化と同時進行のステップワークを診ることができます。広葉樹の抗体・材色の動きを診る初めてのオペレーションに刮目しました。

オニクルミの元木伐採 伐り株・根元中枢部の経時変化

太根への抗体出動

木理・芯材赤身の生成源は根元下地中にありました。地中にあればダメージを受けにくく安全であり、根系へ伝達するにも地表上部との中間で合理的です。広葉時の材色・木の生命力の源なのです。

伐り口にオレンジ樹液を吹き出していたセルフキュアー分泌組織

左側の炭状組織からは、白太辺材・内皮へタンニンを含む淡黄色成分がでてくるので、それぞれ活発な分泌機能の分担がされています。櫟も同じような材組織をもち、類似の組織の成分分析を放散物質とともに明らかにしたい。

分泌物質と材色変化

株・根元のカット直後、伐り口に紫・オレンジ・ダークブラウン、淡黄色が現れ、大気に触れるとブラウン灰褐色へとダイナミックに変わりました。伐採ショック危機反応から、更に株・根元切断が続き、生命維持物質の激しい分泌・治癒のリアクションを診ることができました。「木目は自然の造り出す芸術的なマテリアル」と言われますが、この自然素材の色調や年輪模様に心地良いイメージが醸成されて好感度が高いのです。ウオールナッツ、クルミ材は美しい木目の代表格。

「株」はTree Stock  まさしく生命維持・供給物質を蓄えているのです。樹種毎にそれぞれ固有の生命維持の仕組みがあります。伐採後の株・根系のオペレーションは、土砂混じりで道具・刃物が傷み、木樵職は元木根元伐りを嫌います。土壌の状態や周辺生態に配慮しつつ、根肌も傷めないようにと、慎重に遙かな長時間継続の作業となりました。

根掘り・根切りは、大がかりで難渋しますが、材色変化は素速く、人任せにはできない。自力カット、ケーススタディを重ねていきます。木目のもつ美質は、このような生命活動を切り取り、マテリアルとして削り出し、賞揚しているのです。専門教科では、芯材赤身は活動を止め死んだ組織と教えてきました。そんなことはありません。人任せにしないで自分でバッサリ切れば、すぐ判ります。

立木の基低部中枢_生成される生命維持・抗体防衛物質が蓄えられて芯材色や節となります。

 樹体が幹・枝葉、株根に損傷を受けると、即座に感知して防衛・修復反応を起こすことが判ります。木には神経はありませんが、細胞間で伝達され、抗体・治癒物質が発動される。成分色素が緻密な細胞壁や管腔をスルーする素速い動きは不思議なもの。

切傷には、樹液吹き出しで塞ぎ、打撲では組織崩壊や色変が起き、虫や菌類の侵入にはバリアをつくり取り込む。体外へ排出はできませんが、包合したり被覆ガードを続け、修復していきます。

 細胞レベルの動きや治癒力の強さ、パターンなどの観察測定は困難ですが、芯央材色や節・瘤からのバリアによる抑止効果や分泌・放出の動きは鮮明です。

抗体治癒物質を造り出す所とそこからの分泌・吸収と給送経路がわかれば、防衛反応解明のエビデンス(証明や根拠となるもの)や解明の手がかりとすることができます。様々な樹種の材色や香り、分泌物、放散・抽出物質からメディカルウッドワークスへの応用が次第に見えてきた所です。

鬼胡桃 B

株元にある抗体・芯央色発出・分泌中枢組織  ( 伐採24時間後)

 

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木の総合学研究 2019 – 2020 -2022「オニグルミの芯央材色・抗体・治癒物質の分泌給送」「芯材色赤身のもつ抗体・治癒物質ストック」「抗体・治癒成分放散とメディカル・キュアーウッドワクへの応用」

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