MT マテリアルトリートメント「好感度自然素材」「木識・木学」テンセグリティ樹木論木と人間の関わり木の内科木の総合学生命構造と機能

アイヌ樹木名「シウリ」苦木ニガキ_抗体を分泌し抗菌作用・治癒力をもち、外部応力に耐え、自ら樹体内部構造を造り変える。|The SHIURI _ AINU named tree’s ultra bitter ingredient worked repellant effects,self-curing and transfoming centeripetal rays and proofing external stress . The upright fine grain works away blade cutting so well.|健やか緻密良材に潜む耐え続ける樹性を明らかに Insight 木の内科 – 99

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

地表で存立する樹木は、倒れまいとして生命維持をはかり、構造パターンや固有の木理モクメを造り出します。風雨積雪、氷温・紫外線に耐え、揺らぎをしのぎ、害虫や細菌を寄せ付けないように独自の護身抗体成分を巧みに造り出し、損傷を治癒する仕組みに目を見張ります。

 シウリは、あまり知られていない優れた有用樹種ですが、専門資料が少なく、伐り尽くされるので現在までのケーススタディから、具体的な知見と重要なことを記載します。

コンテンツ:

① シウリ樹体存立構造を造り出す向芯髄線のトランスフォーム

② 枝元・入節の抗菌バリア_抗体分泌・防御の動き

③ シウリShuri 樹名の由来 _アイヌ語樹名の苦い木〈swi ni〉ニガキとの比較

④ 虫喰い無防備で寄生微生物に寛容な樹性

⑤ マテリアルトリートメント・長期自然乾燥_養生寝かせ・熟成材質

緻密で刃物アタリが良く、変形・狂いが少ないプロ好み好感度良質材

⑥ 樹性・材質感総合評価

⑦ 二風谷アイヌ資料館_創設者による森林相・樹木案内

■ コンテンツ・続

⑧ 抗菌材質_20- 28年間の長期自然乾燥・寝かせ_熟成・富貴化

⑨ シウリ大径木樹体の芯央構造造り変え

⑩ 養生・熟成材を慎重に扱い、屋外から人間の暮らしへ近づけていきます。

以下、実際のフィールドワークから実学的な内容を記載しました。根掘り根系は、人足がたりず後回しになります。

❶ シウリ樹体存立構造を造り出す向芯髄線のトランスフォーム

 内皮から辺材に入り、揺らぎつつ、芯央へ向かう髄線の形と動きを視ることができます。外部応力と内部に拮抗する作用がおきて、動的な平衡バランスを引き起こした形が見えてきます。この構造パターンを解析することは、現在まで発展してきたテンセグリティ(引張力と統合される基本構造理論)自然界存立構造の研究に繋がります。

原木玉切りサンプルの一部

❷ 枝元・入節の抗菌バリア_抗体分泌・防御の動き

ダメージ損傷の細部_埋め塞ぎ治癒は見事、修復も完璧。枝元には抗体分泌が集積し、枝を支える引張り組織が鮮明です。

❸ シウリShuri 樹名の由来 _アイヌ語樹名の苦い木〈swi ni〉ニガキとの比較

アイヌ語樹名「シウリ」siw〈苦い〉ni 〈木〉からの転訛とされています。芽吹き時の葉枝赤身が樹皮や芯央材色に蓄積されています。

「シウリ」の語源:「分類アイヌ語辞典〈第1巻〉植物篇 」知里真志保 著 1953年_日本常民文化研究所彙報〈第64〉

自然乾燥材を煎じ抽出物が魚網染めに使われたというアイヌ民俗文化の伝承記録があります。

 樹皮を囓ると暗褐色になり、苦いのは樹皮部分で次第に苦みが拡がります。重苦しい苦みがでてきて口腔に長く残存、直ぐに洗い流せない付着性があります。生木から剥がして乾燥してから煎じれば苦味が濃縮され、寄生生物除忌避剤として利用したと考えます。辺材・芯央部分は、噛みほぐすしても渋い程度で、入皮・枝元入節周縁濃色のストックが特に苦い。

ニガキとシウリ

漢方医薬に使う黄色い苦木ニガキと比較すると、このシウリ樹皮には、違う強い苦みがあり、毒性はなくジンワリ深く拡がり、残存して消えない感じです。苦さは、シウリが優ります。

アイヌは、このシウリ樹皮を染料にして寄生虫除けに使うことを会得していたのですが、薬理成分等は不明です。

樹皮が苦いトネリコ秦皮シンヒも藥用でした。オニグルミの根っ子には、川魚を痺れさせ仮死状態にする有害成分がありプカプカ浮いてしまうので漁撈を禁止されていました。当然ですが、根には防御する強い土中抗菌能力があり、樹皮も虫や菌世界に対抗し護る重い役割をはたし、木肌に付着し鎧状に生命維持を図ります。

❹ 虫喰い無防備で寄生微生物に寛容な樹性

辺材白太の虫喰いは使えないので耳落とし_歩留まりは低くなり、薪にします。

挽き材後3年経過すると喰い虫がドッサリ入りました。気絶したいほどですが、別の微生物ピスフラックスは、立木の芯央へと入ります。微生物侵入は欠点材にされますが、シウリさんには虫喰いガードに役立つ髄班です。

❺ マテリアルトリートメント・長期自然乾燥_養生寝かせ・熟成材質

自然乾乾燥を速め割れを防ぐため、背腹に溝切りをして含水率を下げています。

薄い樹皮の「こさんばらアオハダ」は、大根皮剥き程度の含水率下げ・乾燥割れ反りをおさえる伝統的な乾燥があります。この.二つ割り材で干割れ防止効果を検証した結果ですが、しっかり木喰い虫が入りました。

柿渋塗布効果:腐朽菌・黴は抑制でき数年間はとりつきません。3年後ぐらいから辺材白太に木喰い虫が入り、芯央近くまで拡がって止まります。

微生物ピスフレックスの共生抗体源

芯央赤身には入らず、していると防御免疫ができるのではないかと推測しています。人体も寄生虫がいると、アレルギー反応や免疫抗体ができる体質となり、疫学上の研究成果があります。詳しくはシウリさんに尋ねるしかありませんが、桜系には多く出現します。

❺緻密で刃物アタリが良く、変形・狂いが少ないプロ好み好感度良質材

❻ 樹性・材質感総合評価

各項目は、弱点が少なく、安定し優れた生命維持力を感じさせる性質が目立ちます。座材密度比重は、「桜」同等で冬目年輪層が薄く目立ちません。目通り・緻密均質で狂いがでない_目立たない性質です。

※ ④ 根系根張りは、枝葉の拡がりから推測した見立てです。葉・枝振りや花が似ているイヌサクラ・ウワミゾさくらは、水気のある窪地に生育し、花もソックリ_樹性や材質も似ているので原木樹皮は識別に必要です。

明治8年以来、ドイツ林学を手本としてきた大学教科や専門書では、辺材部白太は活きているが、芯材部は活動を停止したり、死んだ部分であると教えてきました。実際は違うのです。

❼ 二風谷アイヌ文化資料館_創設者による森林相・樹木案内 1986

館長萱野 茂さんからアイヌと樹木の関わり、シウリ・アサダ等の樹種について多くのご教示をうけ、二風谷森林の案内には、貝澤輝一 (弟)さんが同行しました。

この訪問は、旭川での日本デザイン学会学会参加後の家具木工部会イクスカーションでしたが、アイヌの暮らしに樹木の恩恵が多大で深く息づいており、重要で基本的な考え方が伝承されてきたことに感銘をうけた貴重な経験です。

後年。萱野さんは、アイヌ民族最初の国会議員となり、各方面に多大な貢献をはたしました。直にお会いして現場を踏むことで気がついたり、更に重要なことがおきます。

明治8年以来、学校教科や専門書では、辺材部白太は活きているが、芯材部は活動を停止したり、死んだ部分であると教えてきました。実際は違うのです。

木香微細放散やソリッド材の遮蔽・保存機能、キュア健康快適素材利用に加えて、存立する構造体の仕組みを考究する「テンセグリティ樹木論」が見えるところまできました。

総合学域は、星座のようにバラバラなものがある時点で意味づけがでる Consterllation 的手法から知覚が拡がり統合され、「ジョイントシステム」が有用な学識へと繋がります。

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木の総合学研究2023 「アイヌ樹名シウリの樹性・材質・利用」「向芯髄線の構造り替え構造パターン」「引張り応力がはたらく樹体構造・テンセグリティ樹木論」

 

 

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