「木」と医療工芸日本の自然色木の内科薬用樹木

健胃生薬、エコ天然染料「苦木」 ニガキの害傷セルフキュアー抗体反応と芯央色素移動 Insight 続 木の内科-31

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

黄色材には、苦木・黄蘗・漆があり、昔からその薬理作用を利用してきました。立ち木は、害虫や黴菌類微生物が寄り付かないように枝葉から香り匂うテルペン物質を発散したり、抗体物質を造り出し、樹体内で色素となって集積しています。木材の有色は、自然の生物が時間をかけて造り出すバイオ有機質ケミカルですが、樹体の生体保護・防衛抗体物質は、人間には有益な素材成分となります。イエローは、花や果実にも共通した目立ちマーク、動物本能を惹きつける活性作用もある注意・警戒色です。日本の樹木自然色は、湿潤で火山灰土壌の影響から赤や紫濃色は少なく、彩度が低い褐色が主流。青緑・黄色はマイノリティ。

樹脂をはじめ、赤茶褐色、黄色・鶯色成分には、抗生抗菌作用の強いケミカル成分が含まれ、医療・染料、塗料、食材、工芸素材などに有用樹として使われてきました。苦木樹皮・芯材有色部の鮮淡黄色は、草木染めにも使われ、染め織りの伝統色です。材は全体が苦く、樹皮が薄いので虫や黴びを寄せ付けない耐抗性があるようにみえますが、伐採製材後三年で樹皮、白太辺材部にピン虫が入りました。湿気の多い場所では黴びつきます。春材の導管は太く、樹皮近くの白太辺材を喰い回ります。微生物は入りやすいので苦い成分を貯え、攻撃ではなく、入り込んだら囲み抑えて静かに防衛しています。

生来、大径木には虫黴び対抗性がありますが、生育途上の若木は養分が多く、予想以上に虫喰いが出ました。喰われ易い個体は、苦労した野生的な暴れ材ではなく、樹皮付きの素性のよい上品な軟質材なのです。赤や黄色は、花実と同じような自然界の目立ち注意警戒カラー。生き物の生存進化から普遍的な戦略色ではないかと感じます。

白や淡褐色無地の樹種では、葉枝、樹皮層から虫菌類を寄せ付けない成分を発散し、根株や樹幹内部にも抗体防衛成分を含みます。無害のものがほとんどで、殺傷するほどの毒性はまれです。芯央部に樹脂分や色素を貯え、成長にともない細胞壁を堅く強化しつつ、傾斜組織的に芯込み構造体をつくりだす。年輪・木目は、倒れないように内部組織が立地環境に反応していく肥大成長レコードです。

岩手県久慈市産出  20 ~ 40年 2.1 -2, 2mL 8本の元木木口

伐採後にも芯央部からの色素移動・集積がはじまる。カット面鮮黄色から濃褐色に移行。

害傷患部に抗体色素のバリアー形成

#1  原木 元口径 270mm -末口210 mm 2.200mmL(MT 20080401 – 20110911- 20171012)

自然乾燥材  厚 60mmT- 45mmT  1,800mmL / 23枚  元木玉切り伴材

伐採後の微生物抗体・芯材色素移動 九年の変化 2008 – 2017

芯央部から損傷部へ色素異動、腐蝕菌抗体が動いていきます。伐採、製材後も、樹体内色素は動いて辺縁に集まり抗体機能をはたします。この八本の若木サンプルでは、節まわりと損傷部に芯材色素が集積に濃度が際立っています。辺材白太部は、年輪成長が著しく、木組織は肥大途中で動いており、不安定な材質。芯央の鮮黄色は、活性がありヤケやすい。ダメージ部へ芯央からの色素異動がおきて、抗体を集積させ芯央部は生命活動を持続してるのです。また、ケンポ梨の若木にも同じようなダメージ治癒の激しい組織材色拡散がみられます。(中間マテリアルトリートメント20101021, 20110911)

芯央部から損傷部へ色素異動。腐蝕菌抗体が動き、樹芯も生命活動をやめてはいない。

傷が治癒消滅するのではなく痕跡はそのまま。伐採、製材後も樹体内色素は動き、患部に集まり包囲して抗体機能をはたします。ダメージが拡がらないようにガード、バリヤーを巡らしますが、このサンプルでは、芯央色素が低減して褐色化、激しいキュアー樹体活動の様子が鮮明です。材料的には、元木木口をみれば欠点材とされますが、木の内科では、抗体・生理活性反応として観注視。切られても芯材部は活きており、更に数年間は細胞レベルの活動は続いてます。

害傷患部へ芯央部からのセルフキュアー・色素出動による芯材部色素抜け

 # 6  元口  20101021

#2  元木 樹皮下、素性の良い白太辺材のみ木喰い虫たちが喰い暴れます。

 

天然素材の薬理成分利用・漢方処方

白太辺材部でもかなり苦味があります。黴や木喰い虫が忌避するはずと視てていましたが、挽き材三年後、自然乾燥で材の水分が抜けはじめると、虫たちの寄りつきが多くなります。結果は、苦い成分はあまり耐抗成分ではない。鹿なども黄蘗樹皮をかじり、食べ合わせをしていますから、薬用消化健医作用を識っており、黄蘗と同じような森の薬局です。

苦みには健胃成分があり、漢方製薬材料など、民間伝承で利用されてきました。黄蘗樹皮と同じ伝統漢方薬材ですが、違いは内皮と芯材の有色組織です。漆も黄色芯材ですが樹液採取後ころされ、自然の大径木は希有。化学薬品ではない穏やかな樹木の天然有機物質は、その有用性もまだ未知の領域があります。樹木に親しみを感じ寛ぎ、穏やかで良い医療治癒作用があるのは、人体が森林樹上生活から獲得した形質ですし、現在の医薬品は自然由来です。

苦味質は「クワッシン」、健胃成分で日本薬局方にあります。

国土乱開発が進まない昭和初期までは国内どこにも生えて居るような普通樹種でしたが、最近は、自然林を伐り尽くし、大径木も若木も市場にはあまり出てこない樹種です。小径木は、チップ材にされています。最近では自然林伐採が進み、若木でも商業木材市場にでることは稀になりました。植林されることはなく、自然更新木で国内各地で普通に植生がみられたのですが、自然林掃滅政策でなくなり、商業材としても注目されない雑木扱い。

同じような黄色天然染料や医薬品原料となる「キハダ黄蘗」は、続いて掲載します。

草木染め染料、健胃漢方ヘルシー利用

40-30年生では若い樹勢があって、有色芯央部は全体に拡がらず、健胃成分利用や草木染めに向いています。元木玉切り樹皮付き、厚板伴材で提供板します。

※ 詳細は、お問い合わせください。ABEギャラリーにも別途掲載。

 

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木の総合学研究 2017    「ニガキの抗体反応とセルフキュアー 木の内科」 「天然素材色素の有機ケミカル利用」「樹木の健胃生薬と染色利用」「薬用・象嵌工芸木」「Hard Wood – Insight」

 

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