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千年の手工具「墨縄・墨筒・墨壺(墨斗)史料| The historical development of SUMITSUBO line markers for a thousand years ,now and in the future.|現役バリバリ建造現場で活躍_ハンドツールジャパン -59
工人才覚あらば、古きも訪ね、来し方・行く先々に伝えョ_糸張り墨打ち妙技、情け溢れる三界に
● 江戸期の墨斗_糸口頭落とし 瑞雲型 欅彫り(文化・文政期 )
墨糸が糸口でピタリ止まる斜落とし_細微完成された型です。
墨糸が糸口でピタリ止まる斜め落とし
■ 古書類
①「繩墨 墨差し(竹に心)百工具」 和漢三才圖會 巻第二十四 寺島良安編纂_江戸後期正徳二年1712
②「墨壷 」スミツボ番匠之具 同鍛冶之具 「新撰類聚往来 上」
丹峯和尚作 室町中期 明応~永正年間(1492~1520)書写本_慶安元年(1648)敦賀屋久兵衛書写版
③「墨差し_墨斗スミツボ 工匠之具」
和漢舩用集 巻第十二」 宝暦11年 1761 墨差し(竹心)_墨斗スミツボ 糸車、糸の端に指錐サシキリあり「かるこ」と云う」「搔手」銅鐡にて作る・・ 今 墨指と書く。 文政10年 1827 金澤兼光 編集 江戸中期大阪・藤屋徳兵衛出版
中国・朝鮮の史料
建築大工用縄墨 Tools for providing shelter LINE MARKING Carpenter’s Line Marker in Shanghai CHINA at WORK
④「繩墨」清朝時代
「China at Work」 Capennter’s Line Marking
建築大工用 縄墨 繩墨
Shipwright’s Line Marker 船大工用 墨縄 舟形墨墨差立付き
糸口は斜めに突き出る_糸さし止めは、でかくボリュームがあり、軽くはない「 太錐」 8.5インチ = 216mm
16世紀^17世紀初頭にポルトガル、英国船から伝わり、日本で刃物工具をを挽き切削に作り替えたという記述があります。各説明に附会された鋸・鑿・鉋は、日本近代のもので、中国に渡ったものが紛れて 6頁に伝聞・引用を挿入しています。
伝来はもっと古く、日本木工具の進歩、刃物の鍛造技術の発展は様々でした。近年の木工道具の調査研究で実際の変遷が明らかになりつつあります。
「CHINA AT WORK 」
An illustrated record of the primitive industries of china’s masses, whose life is toil,and thus an account of chinese civilization.
by Rudolf P. Hommel 1937 / M.I.T. First Press1969
Records of Chinese,Oriental and Other Primitive Industries being the Results of Expeditions begun in the year 1921
SBN 262 – 0835 New York
「墨筒」李朝時代
⑥「墨筒Mök – tong 」(朝鮮李朝時代)TONG-IN ART 觸覺의の美學
獣面墨筒 Animal-shaped Ink-pad Case _ Monkeys
墨筒彫りは、陰陽・ト占・瑞兆のシンボルをあしらい、頭糸口と墨入れ_糸巻き箱に分かれています。
形象は、おどけた表情が多い。「触覚の美學」解説には、神亀が90%と記載_実物をみると生命力長寿を願う儒教的時代背景が感じられました。
Aesthetics of Tactual Sensation – Concerning the Ink-pad Case –
by Shin Young-hoon
墨筒 Mök – tong 圖版 89点 19th Century P.116 188 x232 x 12mm 1977 出版社名 漢字不記載ハングル文字 Seoul Korea
※ 서울ソウル出版社名ハングル読みこなせません。
⑦「李朝墨つぼ百展」 Carpenter’s Ink-Pad Case 1981
織田有 1981年6月26日〜 7月12日 千代田区有楽町 1-12-1
「 李朝期の墨つぼは、棟梁が徒弟に技術の証しとして作らせた自作の道具と言われています。素朴でユーモラスな形の道具百点(19世紀のもの)を集めました。」展示品は、販売可能なものもあり高価でした。
⑧ 大工道具・道具図「桶屋・大工用墨壺_ブロムホフ・フィッセル・シーベルト蒐集品 – 文政年間 1820年代
ライデン国立民族学 博物館蔵 絵師・煙草刻み道具 銀細工・傘張り・左官、石切、足袋屋、仕立て屋之道具、鼈甲細工、桶屋、数珠屋、鋏屋、目鏡メガネシ之道具、織物道具(機織り) 職工画筆
⑨「木工術教科書 第一」 伊藤為吉 著 明治27年 1894
第二章工具解釋 書線器「墨斗(墨壺)」頁四五 「すみさし(墨指」頁四六 東京職工軍團創立事務所藏版所収 共益商社刊
⑩「日本建築辞彙」 中村達太郎著 明治39年1906 丸善發行
墨壺 p. 337に 墨縄 墨掛 墨打ち 墨掛け大工 猿子 假子の記載あり
⑪「図説日本木工具史」 中村雄三 著 1967
新生社 A5版 p.169
⑫ 「中国の墨斗モクトウ」 中村雄三 1985
日本生活文化史学会 「生活文化史 八号」 1985年8月発行
⑬「墨壷」コレクション 前塲工務店 前塲幸治 著 1993年11月
「大工道具 美の世界シリーズ」① (株)冬青社 188 x 227 x 9mm p.114 ハードカバー ISBN 4 -924725-18-8
江戸・明治・大正、及び李朝時代の墨壺名品コレクション_現職大工棟梁の著作
墨壺の品性に関する記載:「曲尺さしがね 鑿のみ 墨さし、墨繩すみつぼなどの大工道具に本地仏説を附会して木工具の聖性を伝える」「愚子見記」九帖_筭数度量八「三代巻」今奥政隆編 天和3年1683 (法隆寺蔵再版)からの引用解説があります。目を引くのは、猿彫りです。墨糸に結んだ猿子指錐の形状を想像しながら、洒脱・遊び心の意匠もあった事を知りました。
猿が壺を抱き、墨糸番をする彫物(模写)
⑭「墨壺は工匠の心意気」日本と中国・朝鮮の比較考 前場幸治
S;The アンティーク Vol.10 1991 「特集雑器の美」 世界の古民芸
墨斗・墨壺の中国・朝鮮・日本比較考証
元祖 中国「墨縄」は、「 Mòdǒu」「Inkwell 」糸巻き・墨入れ把手のセパレーツ。船大工用は、墨差し立てあり、舟形です。帆立て柱のように_ 広大な国土各地で使われいる墨付け道具は、構造的な違いや金属製までいろいろなスタイルがあり、墨入れ、糸巻き、躯体の構成をみると四類形に分類できます。
李朝時代の「墨筒」Mök – tong では、墨つぼと糸巻き部が独立し、 彫り物で装飾した筒状となり、日本では胴に糸車がはまり一体化。「墨池」Ink pond に大きく、彫物が乗りつきました。儒教の宗旨や造形観が強く反映しています。
日本の墨壺は、古代飛鳥時代の渡来形式が江戸後期まで継承され、様々な意匠がほどこされ、近世から手工道具が造り込まれ、職人技能のシンボル的道具へと発展します。
自作する余裕時間が流れている時代はずっと長く、使い込まれた骨董美術品としも蒐集されており、個性溢れる自作手道具の世界です。時代背景や地域性、道具に対する姿勢や比較考証するのはこれから。
大工専門職になると連続墨打ちで墨切れがないように大型化していきます。現代の墨壺は、個性・実力_職人のアイデンティティグッヅとなり、造るより買う人がほとんど_粋な道具は見せると遭難してしまいます。高度工業化で効率優先、せせこましい時代になりました。道具を自作して楽しむ時間が自尊心を育みます。使い込まれた道具は、その技倆や来歴を語り続け、品格評価は蒐集好事家にはウットリするほどです。
©ABE, 2023
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木の総合学研究 2023 「墨壺に関する図書・資料_縄墨 ・墨斗 mòdǒu 中国(清王朝時代) 墨筒 Mök-tong(朝鮮李朝時代) 墨斗 ・墨壺スミツボ(室町時代後期から現代まで) 」