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絶対にやってはいけない継手の欠き込み、穴あけボルトぶち込み・締め上げ柱割れ_世界にも稀な現存戦闘型の木造 430年、松本城天守柱組継手が損壊する前に|Never drilling and bolts fasenning of TSUGITE JOINTS impaired durability and strength, wooden pillar structure’s destruction in progress appeared the many cracks on Matsumoto Castle.|無残な修復による構造破壊 木のジョイントシステム-40. 継手論考-1.

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

柱組み構造は、ジョイント部分に最も負荷がかかり、耐えられなくなると継手から破断し、木造建築が倒壊します。修復再建造営後に国宝になり、丸見えの柱軸組は、あちこちで割れが目立つ様になりました。

この天守下・角柱継ぎ頭貫カシラヌキ材・周縁の架構も割れが拡がっています。

重い上層を支えるツガや脂気赤松の軸柱は、太く長尺物を使い中間で継いています。

見物客は、上等な香木栂ツガの柱に指を突っ込みます。誰も判らず、穴あけ位置のダブルミスでは重大なことにつながるのですが放置されてきました。本職の堂宮・数寄屋大工は、仰天気絶したのです。

穴あけ位置を間違えたままで傷をつけ、ボルト残部は破損のまま_木材繊維組織貫通穴あけは、継手自体の耐荷重強度が弱まり、割裂に到ります。

継手位置の間違い 頭貫カシラヌキ・芯割れ 上方の梁横架材を支えられず上下割裂・口あき

角材「打ち込栓」を抜いてフリーにして持ち上げないと継手は絶対に外れない緊結構造です。上層を総バラシして再構築するには膨大な作業と費用がかかります。

座金大小・ペンペラひん曲がり・ボルト破断

ボルト貫通穴あけで柱芯割れ

外れないようにと穴をあけ、余計なボルトを入れて締め付け、逆に芯割れを起こしました。ボルト穴から割れ、柱・桁材のクラックがあちらこちら目につきます。荒ぽい仕事ぶり_ぶっ壊れるのは時間の問題でしょう。

一番風圧がかかる外側ツガ角柱は太く、南面は④箇所もボルト穴あけです。ダブルで締めれば頑丈になると考えたのでしょう。ボルト緊結部から割れが入り、経年劣化による変形で緩み、座金もガタがきます。

・半分以下の強度になり、締め付けた部分は陥没しネジ山は緩みます。銑鉄押し出しによる転造ボルトは、寿命が木材より短く、風圧・自重による耐力は金属のほうが脆い。

・圧縮・捩れ応力に耐える木材質はゆっくり劣化し、振動でネジ山は緩み、ボルト穴は動きます。強木「栂」の冬目詰み節近くは、重く頑丈で、応力が懸かると座金はひん曲がり、ボルト頭はもげ、締め付けナットはすっ飛ぶのです。(④のボルト破断ナット画像)

・強木「栂」の冬目詰み・節近くは、重く頑丈で、応力が懸かると座金はひん曲がり、ボルト頭はもげ、締め付けナットは飛びます。(曲げ捩れモーメントは凄い力がかかる。)

・ボルトナットのサイズ・座金もバラバラ、ひん曲がり抜け_市内で拾いあつめて修復工事金具は、不揃いで間に合わせでした。脱落・割裂は、半分以上の欠き込みで一番弱くなっている部位をさらに穴あけ、ボルト締めつけで傷めてしまう。更に締め上げようとした気配が残ります。

このままでは、柱組み・桁梁横架材がガタッときて歪み、構造崩壊に繋がるのは明らか_現在、城内の太い頑丈な柱が割れて傷んでいることに気づく人は、下敷きになることは無いでしょう。

・栂ツガの大木は、既に伐り尽くされ、材木確保は困難極まります。築城造営を経験し修復できる本職の堂宮大工は絶滅。再建修復工事記録の指図や平面配置図、画像があり、細部の記録はありません。荒れた天守が崩れ、傾いて売り払われるのを市民有志が止め、修復再建されるも架構はかなり手荒な工事でした。寸法バラバラ、雑な手仕事が目立ちます。

・この継手では、打ち込んだ込栓を抜き、外すことは不可能な技法です。上方を総バラシしてから吊り上げないと外れません。巧みなロック機構ですが、外せないのにボルトを入れておけば合理的で安全に思うのは実際の刻み仕事を知らない学者素人なのです。

天守損壊が発覚すれば、作事方棟梁は打ち首・切腹でした。

・正調の技法・木造刻み工法を知らない建築構造専門家がボルト締めを説き、強引にボルト入れを指導されて現在にいたります。維持管理のタイムスケジュールやいずれ起きる総バラシ造営の準備、材料手当てもしないままに時が経ちました。

・細部の詳しい記録がありません。唯一「国宝松本城」非売品 昭和 29年・41年 松本市教育委員会編集 発行 の本があります。これだけ。世界遺産になろうとは夢にも想像出来ない時代に、なんとか元の姿に戻すことを急ぎました。松本城架構記録や実測調査研究はなく、これからが膨大な作業になります。天守がグラリ、また傾く前に。

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■ 松本城 非売品

解体・調査篇

昭和 29 年9月 保存工事事務所編集・松本市教育員会発行 / 昭和41年3月 松本市教育委員会発行

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木の総合学研究 2024  「柱組継手ジョイントの研究・実測調査記録」「木造架構・柱継ぎの技能伝承」「継手基本構造と木の材質」「An essential comment for the UNESCO technical committee of World Heritage 」

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