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木歴・木録-2 408年以上 ミュージアムクラスの水目(続)MTマテリアルトリートメント-01 Insight 木の内科-4.
阿部蔵之|木とジョイントの専門家
ミズメ材料学・用途・植生の未来など
日本固有樹種 水目材は、衝撃や摩耗にも強く、材質が緻密で優れた器具材。材質は、堅く重い。緻密で狂い少なく、弾力性あり。音響伝導性、耐燃焼性も優れ用途が多かった貴重な有用素材です。物性は、木材専門書に沢山でていますが、個体差バラツキがあり、データは古く再確認が望ましいので材料試験値は目安としています。
明治時代の産業用材料*には、敷居、杵、靴木型、織機、紡績木管、盆、三脚、度機、機械箱、洋家具、陳列棚、指物彫刻、算盤枠、木櫛、柄、琵琶胴などに多用。
現代では、機械切削刃物の進歩で幅広厚板が容易く削れるようになりましたが、嘗ては製作加工が難しい堅木。刃物が飛躍的に発達したのに削る自然素材がなくなるという状況、優良素材は姿を消し、自然環境の大きな変化とともに伐採が奥山に入り、大径材はすっかり枯渇してきました。当分の間、美しい「水目」は「見ず目」です。
水目 50年生樹皮 栃の王国20111106
「水目」呼び名の別記録
水目の名義:「水目ノ意ニシテ此樹皮中ニ(実ハ樹油ナリ)ヲ含ムコト多ク鉈ニテ横二切レ目施コストキハ忽チ其切目ヨリ水滴ヲ浸出スルコト他樹と異レルヲモッテナリ」 植物学雑誌10巻 S; 樹木民族誌 p.41 倉田 悟著 1975 地球社 2,300 –
ミズメの木工利用と植生
商名「ミズメ桜」は似ているからと誤用。サクラにすると高級材に化け「サクラの一種」にして高く売りつけてきました。「材質は堅くあまり大きくならない」と学術専門書にあるけれど、優れた有用材で太く、大木になる前に狙われて伐ってしまっていたのです。日本中の山から切り出され、尺モノ(300mm) 100年ものでさえ木材市場に出回ることもまれになりました。
戦後、雑樺類を民芸調に着色塗装、水目家具としてバンバン販売したインチキ・ギ装もそろそろ終わりです。現在、研究林外では特定樹種生息地調査もされず、日本固有原生種「ミズメ」が「見ず目」にならないようレッドデータ種にしないと絶滅しそうです。(在処を公開すると業者が直ぐに押し寄せるので危ない。最近開発された衛星樹林探査ソフトも大木が切られるスピードがはやまるので危惧します。)
VPM ( Very Important Material ) 丸太木口割り見立てと実際の製材
外観は、両木口のカビ変色が著しく、芯材部赤みと辺材部の状態が内部劣化進行を予想させるため、クオリティは、さほど高くないと診て値踏みし、内部杢目への影響を心配しました。
しかし、挽材が進むと赤みが張り、大きな死節・内部割れもほとんどなく、辺材部もしっかりした見事な杢目の材質で厚い最高の良材が全幅直径寸法でとれたのです。おむすび型の胴周りは、傾斜地で成長時に応力がかかり背側に膨らんだ凸部を形成。直胴ではなく若干の反りがあるものの、捩れ・回旋木理ではなかったので有効幅広材で「ダラ挽き:単純に一定の厚みに固定した製材」となりました。
厚板二寸挽きの事由
水目(赤)「巨木の行方」は不明
二寸板は直径1,030 – 830 W x 2,200H x 60T mm @30 – 40 ピーナッツで端材もほぼ完売。製材に立ち会った木材商人は、「こんなに良玉だったとは。しまった」とつぶやき、販売人は、ほくほく。産出地は、長野県南部とおばろげ、出所を明かしません。ムササビの住まいが上部と根元近くにあったことは神社などのサンクチュアリにあった巨樹でしょう。内部腐食、空洞化が進行し成長限界にあります。
厚板を購入した木工家は、大きなテーブルに仕上げて高価な作品に。私はこの巨樹を敬愛してDNAサンプルとしてAQ保存、水目最高の標本になりました。自然乾燥シーズニングも終わりましたので、これから次のケーススタディに入ります。
樹齢から元木根元部は腐り空洞が広がってきましたので利用する伐採タイミングでしたが、ムササビさんの住まいを奪いとり伐採したお話は絵本になりますね。水目は、自然再生しかできません。最後の巨木とならないように実相「木録」を公開しました。
*柿渋について:塗布後乾燥が不十分ですとカビ変色がでることがあり、材部浸透は0.1–.3程度ですが表面を着色しますので販売用のMTマテリアルトリートメントには不向きです。また、カビ・虫防止効果は2−3年程度で点検を要します。
誤植:p.21 本木→元木
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木の総合学研究 2014 – 2019「巨木の時間」「みずめ400年生」「木の自然遺産」「マテリアルトリートメント」「Hard Wood – Insight」
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