「木」と信仰「木識・木学」木の内科樹木調査環境

伴立ち樹・黄蘗とミズキの相性 VGTS Very Good Tree Spot 「ツボ」山の神

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

山の神が遊居されるベストロケーションは人里を離れて残る貴重な神域樹界。今、周囲樹林地が荒らされて無残、長期間連続で観ると普段は見えない変化が起きています。

自然のシードバンク・DNAストック庫、地表生命維持装置の原動機として重要な再生循環スポット

 関東方面に山越えの時は、県道R67 和田宿手前「山の神」大山祗神社の祠前が途中休憩地点です。ここは水流・水辺があり、古代から山の神が遊居される神聖な「ツボ」地、降臨する大木が数本残る重要な地域でした。新緑五月、この静かで特別な場所に異変があり、水が引き、一面の樹皮が喰いかじられ、全山唐松植林を外れた自然林にダメージが拡がっています。神社鎮守の森は、いろいろな樹木が大切に維持されてきましたが、山奥には地域生態圏を持続する再生循環の重要な役割を果たしているスポットがあります。そこは手をつけてはいけない神聖な場所でした。

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山の神「マエフチ」前縁(マイ淵・舞縁)水木と黄蘗   平成23年7月
自然良樹スポット Natural Good Tree Spot
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水木(青)推定樹齢 50yrs.  20110711ABE
樹皮喰い荒らしが深刻な山奥の現状、 扉峠越え
 今年の春は鹿が増え、樹皮喰い剥がしがひどくなる一方。入山辺 – 美ヶ原公園線一帯から山越えした和田籍までの県道法面の広葉樹皮はことごとく囓られてしまい無残な荒れかたです。天然唐松の樹皮まで被害が広がり、全山唐松拡大造林に外れた急斜面に生き残る広葉樹林がダメージを受けています。昨年の台風でも未間伐唐松が根ムクリで倒れ土面崩壊がはじまりました。施業・森林管理の実際を見ることができるルートです。
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キハダと水木 樹皮喰い剥がし 20140513ABE  平成26年5月

 小さな湧水池があり、林縁に樹形の良い黄蘗と水木(青)の成木がならぶ「マエフチ」 神域で残った広葉樹は、典型的な姿で10年程まえからマークしてきましたが、今春5月の芽吹き時期に再訪すると、ビックリ。貴重な二本とも樹皮が鹿に大きく喰い剥がされていました。池は蛙の繁殖地でもあり、谷窪地形で風雨緩衝され、生き物が集まる穏やかな自然環境です。
① VGTS : Very Good Tree スポット
山の神・和田大山祗神社   ELV: 910 m, N: 36°10’783″   E:138° 09,’934″
水木(青):目通り径 450mm     キハダ:目通り径 250mm    樹高:約15m
2018年春立ち枯れ倒木
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② 伴立ち樹例ー2 ELV: 1,336 m   N:36° 11, 195′  E: 138° 08, 955
水木とキハダ            水木(青)と真弓も「トモダチ」が多い。

 黄蘗・水木の相性、伴立ち樹は、鹿の樹皮喰い合わせで見つける

 黄蘗と水木を同時等量喰い囓りが新しくわかりました。黄蘗の内皮には、健胃成分があり漢方薬材として使いますが、この苦い薬成分を鹿が水木と同時に囓っています。内臓を助け・消化もよいのでは。少し登った斜面にも2ヶ所、同じような樹皮喰い矧がしがあり、同じ面積を食べています。この黄蘗や水木は日当たり良く、水気のある地形が好適地ですがキハダと水木(青)の相性がよく並んで伴立ちしています。野菜では、異種混植をすると生育がよい組合わせ(Companion plants)が知られていますが、樹木にも相性・なじみのコンビがあります。人が内皮を胃腸薬として服用するのですが、鹿もシカト知っている。薬味に毒空木の若葉も囓ります。
今回、同じように4ヶ所の樹皮が囓られて目立っていたので、二本の木が仲良し樹、トモダチ伴侶樹であることに気がつきました。環境・場所を選りこのむ広葉樹には同じような好みや性格があるようです。近くには、水楢・真弓・ブナ、山桜・カエデ類がまばらに。(樹種占拠競争ではなく多様性を維持する共助性向、相性・伴立ちを明らかになりそうです。)
 キハダには実をつける雌と実をつけない樹があります。重く材色の濃いものと逆の二種類があり、まだ特定できませんが。水木には、青と赤があり、「青」は樹皮が傷ついたり剥がされるとドス赤血色の吹きだしとりわけ目立ちます。樹皮が大きく傷つくと成長が阻害され、いい森林にはなりません。枯れて倒れてしまう木も多く自然損壊につながります。
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針葉樹天唐樹皮も囓られていますが、鹿毛がついておりダニよけヤニつけで削ったもの。
角で切り込みを入れた痕も見え、毛皮こすり化粧する高さです。
細かい棘がついているため、鹿は唐松樹皮を喰わないはず。素手で樹皮に抱きつくと厄介です。。
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鹿害:カエデ類も囓られ、樹皮剥がしが広葉樹林全域に拡がりました。
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台風唐松根むくり  間伐が遅れて唐松は皿根で林床表土を剥がして倒れます。
 ELV 1,265m  N: 36° 11, 102′  E: 138° 08, 958′
 長野県道R67 : 松本 – 和田線   扉峠越えはカーブのアップダウン連続の山林道路、ビーナスラインをまたぎ道幅狭く、行き交う車もまれな快適なクネクネ山道です。山菜・キノコとりが来るくらい。全山唐松造林地帯ですが、植林できない急斜面・谷筋・道路法面には、多くの樹種が生き延びています。ダメージを受けた個所はかたづけて、本来の姿に回復するために自然の治癒・回復力を見守りたい。(冬期は閉鎖)

山の神と「ツボ」「坪庭」「タタエ七木」

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「つぼ」は、諏訪圏では、古代から神が遊居される神聖な場所、降臨する大木をさす言葉です。ツボは、「局」「窪」にもつながる意味が含まれているようです。また、会津地方・岩手にも屋敷林に森の神が依拠する「坪庭」がありました。神降り樹は、タタエ(湛)樹とされ自然信仰の対象とされ祀られてきました。櫻・真弓・水目・桧・橡・柳・松の七木湛信仰が「諏訪史」に記録されています。石祠の後に神木山櫻。古代人は、鬱蒼とした杜の大木をみて生存環境基盤を確かめ、心安らかになって家路についたのでしょう。
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木の総合学研究 2014 – 2019 「トモダチ樹」「Companion Trees 」GTS (Good Tree Spot)「優良樹スポット」「つぼ」山の神木・神域

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