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美ヶ原亜高山帯の蝶と植物持ち去り 上條真俉先生の壁書 乱獲者への怒り檄文

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

25年で貴蝶種は、ほぼ絶滅。鬼ぐるみの若葉を食べるオナガシジミは卵付き枝を持ち去られ、一頭も見なくなりました。絶滅するまで捕り尽くすのでおしまい。沈黙の盛夏

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美ヶ原少年の家指導員 上條真俉 玄関壁書 平成元年八月一日

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紅シジミ P1080086-1                                                            スジボソモンキチョウ

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山の野生生物は盗り捕り採り穫り止まず

 自生していた白百合は15年前、鬼百合は7年前、アマナは、5年前に侵入者に抜かれて無くなりました。鹿が増え、畑のものやユウスゲも喰いつくし植生が激変。自然保全・保護は謳えど荒れ果てておしまいです。動物愛護監視委託員は、冬になるとハンターのリーダーになりまする。林務課の説明では「地元をよく知っているから」と。
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自然保護サインの大変な誤訳

 ヨーロッパの自然保護地域サインを真似て設置してから、そのまま100年経ちます。
英文では、WILDLIFE PROTECTION AREA「Wildlife 野生の生き物」とあり、日本語では「鳥獣」のみ、蝶や魚類、山野草は対象外です。これでは絶滅しますね。正しくは、「自然生物保護区」
当時は、蝶や野草・蘭は、まだ商品価値がなく、渡り鳥とカモシカを念頭にしたのです。マスコミが取り上げると、商売人やにわかコレクターが盗りに現れる。情報化されると、人が下界からやってきて荒廃の誘因となりました。

オナガシジミ卵盗りの現場、保護地域で捕まるときの逃げ方

 2011年12月5日  市道支障木の片付け作業をしていると、二台の車が林道方向へ向かい、夕方 5時に引き返してきました。この時期、閉鎖された県定自然公園に入る公道は一本。徐行し外の木を観ながら動いてきます。私と友人の造園職は車をよけ、顔を合わせても挨拶なく過ぎて、二人は車を止めて歩き出し。隣家の裏手に入り込み、木の小枝を伐り、抱えてでてきました。不法侵入、窃盗現行犯なり。近づいて用件を尋ねると、ゼルフィの卵を採取しているという。卵付き枝をみせて「自分は、蝶の繁殖をしており、仲間内では知られた存在で度々この地域にきて蝶の採取をし、松本市の教育委員会の誰サン、頂上ホテルの経営者と知り合い」ともいう。(地元の人に捕まったら、知り合いの名前を出せば関係者を装える、地元はいちいち確かめることをしないので、こいう追求を逃れる手口を使う。)
 畑や人家庭先に無断で入り込みモノを持ち出せば犯罪です。カーキ色ズボン、黒ヤッケ姿の若い一人に名前を尋ねると「言いたくない」と宣う。手にしたオナガシジミの卵付き鬼ぐるみ小枝束は離さず、そのまま持ち去りました。車(練馬ナンバー、カーキ色スズキエスクード4WD)を見られ、繁殖して売りまわしていれば人物は調べられる。もう一人の小太り背の高い男は、福島ナンバーのレンタカー、シルバーメタリックトヨタビッツ。単独行では危ない、男二人組みならば一人は見張り、万一でも怖くないから伴連れ。

こうして、翌春からオナガシジミは姿を見せなくなりました

 練馬区内でゼルフィ種を羽化させて山へ戻しにくることはなく、明らかに乱獲者。別件夏、捕虫網をもち、庭先に入り込み込みうろうろしているので、尋ねると「自分はモンキチョウの収集家で珍しいのがいるので見ているだ」双眼鏡は持たず捕網をどうするのか?質問すると、「飛んでいては、調べられないので捕虫網で捕まえてみる」腰には三角ケースがしっかり。路肩には、エンジンをかけたままで待機するおばあさんがいて、市内中心部の老呉服商店を名乗りました。
 愛好家が一頭づつ持ち去り、卵付き枝、食草まで冬期に採取にくれば自然界の蝶は絶滅。自明の理。高気温化もすすみ、とうとう四半世紀で稀少樹木、山野草も消え去ります。町外れでは、しばらく山野草臨時販売がでていました。山里にくる者は皆目的があり、モノ取りとみられています。

植物・天然キノコは、ベテランの現場指導範囲で採取

 春から秋までの野外体験教育施設「美ヶ原少年の家」で管理・指導をされていた上條先生にお会いして亜高山帯の植生を現場でガイダンスを受けることが何度かありました。夕方、自炊されていましたので味噌汁を鍋にかけてから林に出るキノコを採りに。辞典の中でしか知らない天然のキノコを自分の手でとる新鮮な感動がありました。毒ものは、生える場所も決まっていますので、ベテラン同行が一番確実です。荒らさない人物のみに伝授したいと話されていました。最近は、団塊定年退職組みが大勢入り込み、すっかし無くなりましたが、当時は、公有林で様々な種類の野生キノコが出る賑やかな林床でした。
 今では、山奥にも電波が届き、カメラ付き携帯・スマホで撮影、電送されてしまいます。人が少ない地域では人影・物音は直ぐにわかります。姿は見えずとも、誰か見ており、山には人の目があるのです。
蝶の趣味・愛好家はいても「木のコレクター」はいない
  小学教科もなくなり樹の名前も知りせんから一般人は関心も無く、緑は気分が良いけれど、空気と水と同様、木は特別に意識されることは希です。盆栽やガーデニングの趣味がありますが、木を集め楽しむコレクターはまだいません。貴重な珍しい木は材木屋が真っ先に喰ってしまう。サイズが大きく、重く置き場所も大変。値段も張り、集めれば使わないと厄介で資産評価されてしまう。趣味として成立しがたい経済的なわけも潜んでいます。昔から「キ」気が多いのは材木屋ですが、現在の材木商は在庫をもたない木無し。30年間、木の収集愛好家には出会わず、なぜ木のコレクターはいないのかを考えています。木を嫌いな人はなく、緑の森林環境に生存・適応し、材料・資源というコモンセンスが数十万年続いたからかもしれません。
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木の総合学研究 2014 –  2019 「蝶と樹 、鬼ぐるみとシジミ蝶」「自然生物保護の四半世紀末」「蝶ハンターの乱獲産卵樹盗み」

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