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相生樹 エノキ・サイカチの自生大木 VIT スポット・稀少日本自然樹重要遺産

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

共に生きて土地の分かち合い、寄り添い半分ずつ伸びてシェア。対で一体バランスをとる難しい共存関係の姿です。場所取り争う人間は見習うようなV樹景。

異なる樹種は、それぞれの生存適地で大きく成長します。根を張り栄養分を吸収し、地上部分の樹体をささえるため地面下と空に自分の専有スペースをとり太陽光を奪い合うかたちになるのが自然の姿です。二本の木が接近して「トモダチ」になるのと違い、同じ根元から成長するのは、片方に傾斜して伸びますので無理な姿です。木にも相性があります。このV立ちの樹は、都市化されて保存された貴重な対樹種・緑陰としてだけでなく、相生、共生の姿として平和の仲良し「シンボルツリー」になるでしょう。

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サイカチ(豆科)とエノキ(ニレ科) 共生相生樹

ELEV : 595 m  N : 36° 13 .883 ‘、E :137° 58. 119 ‘
樹高  約12m (目測) 枝張り域10m + 6m  枝下4.7m  目通り径755mm , 570mm    推定樹齢120年
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VIT(VeryImportant  Tree)スポットの来歴、松本市中央1-9   再開発花時計公園

2007年まで、ミヤノウ自動車(株)社主宅庭地に二代前から家守り木として大事にされてきた連れ広葉樹です。
庭に小さな湧水池があり、その燐縁にお稲荷さんが祀られていました。敷地は駐車場にかわり、道路が木の東側にでき、分断され公園の一部になりました。
市街地中心の繁華街に残されたエノキ・サイカチ伴立ち樹、他に類例のない異形樹景、しかし、貴重自然物には未だ認識されていません。長い捩れた実がぶら下がり、「柵無し」がよいです。
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サイカチは、水辺河畔に自生しますが、現在では護岸工事などで激減、滅多にみることは有りません。生育地は限られレッドデータリストに近い。ここは、水脈がある古代湖の埋立て跡地です。区画整理後、枝張りができず、幹の瘤が大きく目立ち脇枝が増えました。
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エノキは、欅に似て大木になりあちこちの村落に塚・社叢に繁殖していましたが、列島改造政策後、少なくなりました。
この二つ木が根元から分かれて相生に共生して大木に育ったのは、持ち主が二代に渡り大切にしてきたから。駅前の一等地でビル建設用地にかわり、とうとう湿地自然環境がアスファルト・コンクリートで固められてしまいました。再開発、市道・都市公園化により衰弱し、実が少なくなりました。成長限界になり、水脈が切れ、地面は呼吸出来ず、樹勢は次第に衰えています。
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1997 年10月更地・パーキングに改造され、稲荷祠とともに残されましたが、その後、都市計画道路で削られて公園に分離され、現在に至りました。撮影開始当時、樹勢は良く、サイカチが隣家の屋根に伸びて傾くため、稲荷祠わきから斜めに鉄骨支柱がはいっています。
枝葉は伸び、次第に成長すると斜め方向に伸びるしかなく、さらに枝張りが傾きますので樹勢の強いエノキは幹が肥大。一方のサイカチは、瘤脇枝がでて疲弊。力枝の割裂折れを抑えるため中空でエノキにワイヤーをかけて枝保持。環境変化ストレスで両樹とも衰微劣化しています。エノキのほうがガード役で傾いていますか。葉先端域まで根回りのコンクリートを土に戻してほしい。

エノキとゴマダラ蝶

榎木の葉は、ゴマダラ蝶の食草です。成虫は、雑木林がないと生きていけないので、落ち葉の残らない市内の真ん中では冬も越せず、歩くのは「夜の蝶」にかわりました。現在は、鳥のねぐらです。

実際に見ることが出来る長野スポット

サイカチは、河畔水辺を好み、優しい枝葉にぶら下がる長く大きい実(豆果)がサポニンという成分があり、実をくだいて水に混ぜると泡立ち、石鹸ができる前の洗剤に使われました。古枝が鋭い棘状になり、木登りが難しい。サイカチの木は、北相木村県道沿いに保存樹あり、また、信州大学上田キャンパス繊維学部構内に見ることが出来ます。
エノキは、長野県では「エノミ」鳥の餌になる実を沢山つけます。社寺・街道沿いの塚に植えられ、大木になるのですが、材料には扱いにくく忌み木でもありました。変色・カビ・虫つき、反り捩れが激しいのです。佐久市 根岸伴野 R142沿いの老人ホーム前の墓塚で欅大木数本にマジリで見られます。 どこか陰様でハレの木ではありません。エノキの生板は葬儀ブルー色で、木灰は白く骨色です。
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二本立ち自然樹 ネーミング思案

本来、樹は自立しますので他の樹がくっつくと競争で成長が邪魔され、時には枯れて倒れることになります。接近して双方が順調に大きくなる場合は、相互の馴染み・補完・互助関係がありますが事例が少なく、本当に親密なのかわかりません。友達・仲良し樹、結縁樹、共栄樹、コンビツリー、シェアツリー、ペア ツリー、連れ合い樹なども候補ですが、寄り添い相対しているので「相生樹」がピッタシです。樹にも相性が良く、伴立ちで伸びる樹種組みがありそう。ハリ合うライバルツリーの事例は、次回。

・VIT Spot : Very Important Tree Spot
・GPS  Garminで計測、誤差あります。
 
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木の総合学2014 – 2019 「家守りの木」「 相生・共生樹」「シンボルツリー」「稀少自然保存樹」

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