クラフトフェア工芸木工

ウインザーチェアー・シェーカーモダーンを拓く日高英夫・ 木の手仕事 クラフトフェアベストプロダクト- 8

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

クラフトデザインに大きな影響を与えた18世紀ウインザーチェアー、19世紀アメリカシェーカー家具遺産をコピー・習熟しても、更に洗練したフォルムを削りだすのは至難。シンプルで丁寧な造り、穏やかで気品のある雰囲気が漂う作品へとモダーンウッドクラフトの新領域を拓く一連の誠実な手仕事は、次世代のランドマークへと帰趨しました。

 静かな山里の古民家工房で、木材という自然素材を日々削り出すクラフト制作が続いています。私は、1985年に日高英夫に出会い、以来、折々に作品記録をしてきましたが、一貫したクオリティ・実直な木工制作マインドを評価してベストセレクションに。良材の落としも全て使い切ります。小物・カトラリーや器類の力強いしなやかさは、心地よく暮らしに寄り添い、静かな存在感を発しながら。デザイン先行では生まれない形を削り出す木への愛着や手練れのハンドワークは見事です。

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2015年  第31回クラフトフェアまつもと出展テーブルウエアー
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制作品目
・Shaker style :ラダーバックチェアー、セッティベンチ。カップボード、ソーイングテーブル、ティーテーブル、ボックス、スタンド 他
・Windsor chair : ループバック、ファインバック 他

・器・カトラリー・小物類・食卓・棚物 他

出展記録 1999 – 2015

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1999年  第15回クラフトフェアまつもと、クラフトセレクション100 in松本城 出展
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2010年  第26回クラフトフェアまつもと出展
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2011年5月 第27回クラフトフェアまつもと出展
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2014年  第30回クラフトフェアまつもと出展
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2015年5月第31回クラフトフェアまつもと 10月クラフトピクニック出展参加

タイムレスデザイン、シンプルモダーンのルーツ

  1970年代のダニッシュモダーンファニチャーデザインに登場したシェーカースタイルは、ハンドワークから機械加工の移行過程でシンプルモダーンが拡がる契機となりました。「共同生活の手仕事、自然素材のセルフメイド」信教ライフから派生するものは、純良でとても魅力的です。手作業の反復、ボリュームをこなすことに加えて、加飾や営利を求めないスピリッチュアルな姿勢が、無理のない独自の意匠・作風を導くようにも見えます。欲得を取捨て、汚されない素朴なものを生み出す難しさを深く知れば、この宗派の物作り遺産は、輝きを失わず時空を越えていくもの。建築・工芸デザインを学ぶものは、必ずこの道を通ります。
修道宗教生活に身を置き、至福の時間に歓びに包まれ、自分たちのために自作した家具や道具は、今でもピュアーな惹きつける魅力があります。世俗の人々には別世界のものでしたから新鮮です。

いろいろ工夫された治具・型がワークショップ資産

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 整然としたワークショップは、確実な定形プロダクションを維持できる治具・型・定規を充実。木工機械、刃物の性能を無理なく引き出します。きちんとした治具は、定番作品を直ぐにリピートできる構え。材料ストックは、自然乾燥・人乾を経て長期シーズニング。

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汎用木工機械設備:昇降盤・手押し盤、角鑿盤・自動鉋盤、ベルトサンダー・バンドソー・木工旋盤・ミシン盤・ボール盤 他

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 ある程度の専門技能をマスターしていないと、形と高速回転刃物とのマッチング、使いこなしが察知できません。治具のセッティングや個別作品の仕掛かりをプロセスで記録しないと判らない部分もありますので、作品の形状から工程をイメージアップ。整然とした工房内の様子は、個性・制作能力・機能治具の充実を物語ります。主な材種は、カバ・水目・トネリコ・山桜材。

HIDAKA「器中繰り箱治具」四方反り鉋仕事の荒取り機械加工

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器の中刳りを機械刃で削るために、自作の専用木製治具を制作。天井にフレームを固定し、前後左右振り子の可動アームを内蔵。ディスクグラインダーにウッドカーバー刃を装着して3次切削する機構を考案して作品制作。昇降盤の上に収納・設置しているのは、微妙な上下調節ができるため。省スペース設計です。クランプ固定ベースにダスト吸引穴をあけ、作業性を高めています。
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使わない時は桁天井スペースに収納
作品の形状や寸法に対応したヘッドの傾斜角・削り堀込み量を調節 天地左右の送り動作を加減
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動作アームに取り付けたヘッド角度可変軸部分
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中繰りR曲率や寸法に対応出来るように工夫され、いろいろな位置でセットできます。定番の作品をまとまった数量で制作できる機構です。振り子アームの動きは、フレームにあけた穴位置で調節します。ヘッドの動きを安定させ、様々なカットを検討した装置になりました。3次元ルーター加工をアナログで実用化。労作です。(写真は本人撮影 )
四方反り皿は、注目されきた作品ですが、楽屋裏をオープンされましたので追記しました。20151214
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安定して数・量を作れるのがクラフト製作者の存立条件

 一定制作ロットを確実に制作出来るキャパシティをもって制作活動を続けていますが、個々の作品の評価以上に工房ワークのアイデア・工夫を反映したハード面を特に注目。リピートオーダーに直ぐ対応できる仕事場は、作品の完成度や技能が安定しているだけでなく、前歴ギター製作従事の現場経験も反映。 細部まできれいな仕事振りは、楽器製作職に近い感覚。作品を並べた時に楽譜のイメージが出てくるのは、音楽的な素質があると感じてきました。 そう言えば、シェーカー教団では集合して踊りながら唱歌礼拝する儀式がありましたから、共同生活での物作りの形にも何か反映しているはず。 大人数の生活基盤を維持するために、製材・木取り・旋盤加工に動力装置・機械を使い、仕上げは手道具という、ほど良いバランスでした。シェーカーでは、早期から椅子作品を販売して経済基盤のひとつにし、信仰を通して顧客が拡がっていました。クラフトは、数量をこなすうちにスタイルが洗練され落ち着いていきます。
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Shaving horse・小物削り用馬

日高工房 取材記事・雑誌・本

・2002  「自然浴生活・vol.6  小学館 Green Mook  木の国の家具作家たち」¥ 952- ISBN  4 – 09 – 102066 – 6    雑誌62801 – 66
・2002 「別冊太陽 旬のクラフト作家32人 手が作り出す暮らしの道具 木工作家の木の道具  」平凡社  ISBN – 4 -582 – 94378 -x p.24 – 27  ¥2,400-
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・2003  「メイプル6月号 第6巻 Vol. 62   木工作家のテーブル」 集英社 p.148 – 149
・2004  「KURA 1月号」カントリープレス 雑誌 86279 – 01
・2005  「fu -chi  2号  アノニマスタジオ、KTC中央出版 ISBN 4 -87758 – 612 -1   ¥700-   p.36 – p.38
・2009  「手作りする木のカトラリー」西川栄明 著 誠文堂新光社 978-4-416-80974-7  ¥18,00-
・2010 「信州ハンドクラフト手帖」伊藤まさこ著  信濃毎日新聞社 ISBN 4 – 7840 – 7136 – 4  ¥1,500-
・2011  「KURA 5月号 手仕事の信州」カントリープレス 雑誌 86279 – 05  ¥780-
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・2012  「手作りする木の器」 西川栄明著 誠文堂新光社 ISBN 978-4-416-31215-5  ¥1,800-  p.58 – p.59

略歴

1956  山口県萩市生まれ
1978- 1981  大学卒業後、名古屋 ドラムメーカーギター部門勤務 アコースティックギター制作に従事
1981 -1983 アコースティックギター部門閉鎖により松本市のギターメーカーに転勤
1984 長野県松本技術専門校木工科入学 家具木工技能を身につける
1985 東筑摩郡四賀村中川にて古民家を借り、箱物主体の松野  泉とMOEKI工房を開設
第一回クラフトフェアまつもとに参加出展  以後 2015年5月まで ほぼ連続参加、運営協力
19867 – 2003  クラフトショップ グレインノート(松本市)運営参加、作品展示販売
1988 松野が青年海外協力隊モロッコ木工指導参加のため分離、日高工房スタート
1987 第3回クラフトフェアーまつもと 参加出展 以後 2015年5月まで ほぼ連続参加、運営協力
1999 クラフトセレクション100 in松本城 イベント選出、参加
2004 クラフトフェアーまつもと20周年「素と形 第二部セレクション40」参加
2006 第5回暮らしの中の木の椅子展入選 リビングデザインセンターOZONE主催 東京都新宿区
2010 佐久市香坂に工房移転
2016  2月11日 逝去
 木工のシンプルなオリジナリティを追求して自然の豊かな田舎暮らし35年。シェーカー家具の誠実な仕事を指針としているベテラン木工制作家の一人です。自然素材のリーズナブルなコストでオリジナル作品を制作。直接オーダー受注制作の他、クラフトショップで作品販売。
日高工房
385 – 0005  長野県佐久市香坂 1157-1
TEL.0267 – 67 – 7897
http://homepage3.nifty.com/hi-daka/

ⓒ 2016 , Kurayuki, ABE

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木の総合学研究 2015 「ウッドクラフト・ファニチャー 工房制作」「クラフトフェアベストプロダクト」「Shaker Modern Crafts & Furnitures by  Hideo Hidaka」

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