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「木挽き鋸 ・縦横根切り」世界最大・最強鍛造から最先端革命的高精鋸刃の開発・目研ぎへ 日本の鋸レビュー-1.

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

良質材がなくなると刃物は進化し、技術が補う。刃物道具は手仕事の象徴であり、産業技術から時代の気質や生業姿を物語る。木材がなくなると人工ボード・アルミや合成複合素材へ移行して超硬チップソーが出現、無機質素材へシフト。自然生物素材をないがしろにし,殺戮道具のはじまりが斧・鋸とは知らず。

杣職木挽きから指物用まで板材挽き割りに使われた大鋸(オガ)は、江戸初期の版本に登場。明治時代に鍛造大型サイズのものが使われ出し、昭和初期には終焉。山里から川下の都会へ出るにつれて、鋸のサイズや刃形、目方は小さくなると同時に、目数は微細に増え、さらに小型精密化。日本独自のユニークな挽き鋸の多様な形は、大正- 昭和初期に専門分化し高度の発展を遂げ、更に改良窓付きが精密化され新しい技術の扉が開きます。「開拓北海道向け改良刃窓鋸」が高精度の胴付鋸に進化することは、想像出来ませんでした。鋸の発達は、木工の技術史そのものです。

木挽き鋸コレクション  伐木挽鋸 前挽き大鋸 縦挽き

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① 575刃道(刃渡り) x 380重ね x 900L mm 2.0 – 2.2-3.4T   4kg   劔・菱マ刻印 柄付き仕立て(手入れ目立て済み) 現代鋼打ち

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②前挽き大鋸 縦挽き 540 x 330  重ね x 810L mm   1.9 – 2.0 – 3.2T   2.6kg  ヤマ正刻印 現代鋼打ち

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③木挽き鋸 横挽き 620 x 150  重ね x 930L mm   1.2 – 1.6 – 4.0T   1.4kg    小林米夫 作 大正 ~ 昭和初期  仕立て

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④木挽き鋸 横挽き 615 x 150  重ね x 930L mm   1.2 – 2.2 – 3.5T   1.35kg   小林米夫 作 大正 ~ 昭和初期  目立て・仕立て済み

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⑤木挽き鋸 玉鋼 横挽き 710 x 150  重ね x 955L mm   1.8 -2.0 – 4.0  1.8kg 染め  柄ナシ 目立て 玉打ち皹は玉鋼地肌の特徴 丸め頭

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⑥根切り 玉鋼 480 x 420重ね x 885L mm 1.5 – 2.0 – 6.0T mm 1.1kg  玉打ち磨き 土佐型  手曲がり・柄ナシ

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⑦根切り 炭素鋼 580 x 240重ね x 952L mm 1.2 – 2.2 – 4.0mmT  800g  手曲がり・柄ナシ 仲や利助 作(長期使用による目立て痩せ、土と油かぶり色)

(鋸職の木挽き蒐集秀品 仕立て・手入れ 2000年4月購入) 形・名称の違いは、それぞれ刃渡り、刃形・角度、鑢目立てが違う仕立て  重ね:鋸刃と柄部分を鍛接して伸ばした柄までの長さ

仕立て錆出し

鋸身は鋼スキ・研磨で地肌のままで、他の鍛造道具に比べ最も錆やすい。歪まないように仕事場に吊しておくので空気に晒され、使う度にこまめにおが屑を飛ばし油壺で油拭き。手入れが遅れがちになります。錆が付いたものは、椿油などでたっぷり浸し拭き、間をおいて浮き出た酸化錆の厚手の木綿布で拭き取りを繰り返します。スチールワイヤー研磨は打肌やスキ目を痛め要注意。多くの保存展示では、壁面に固定して錆ても放置されており、刃物は油拭き手入れが欠かせないけれど。錆前に鉋・鑿も酸化皮膜取り研磨が必要です。木部も植物蠟ワックス布拭きが望ましい。大鋸は錆出し後に染め・ニスひき仕立て。

日本の手鋸レンジ「木挽き鋸から大工両刃、指物用胴付き、押引き・畦挽き」まで

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刃長: 575 – 35mm    刃厚:2.0 – 0.15 mmT   目数:2 – 36 /寸 重さ:4kg – 45g
キコリ・木挽き鋸と指物鋸:寸法重量・刃型・刃数が10倍ほど違う 写真の並び中間に山林・大工木匠用、土木鐵道用の二尺から一尺五寸程の片刃ミドルサイズが入ります

雁頭・穴挽き  諏訪鋸

共に木の葉鋸の流れをくむ古型。縦目に近い横挽きに反りがついた「雁頭」、溝きりカーブも挽ける「穴挽き」は、鋸頭のカット・R刃並びの造りが微妙に違う。刃角度が寝た荒目の横挽き刃で出職現場用山林土木・土台周りなど、先端・中央・元エリア刃サイズが粗細に変化し、斜め挽き可能で材の形状に対応。切り口が荒くてもかまわない、捨て切りなど粗い作業向きの兄弟鋸です。

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雁頭:刃長さ360 x 幅 64 x 68刃 x コミ192mmL   厚み1.0 -2.3 – 3.4 Tmm   山林杣仕事用 刃先並び曲率Rは穴挽きより反り 刃高さは穴挽きより深め ストレート挽き 傾斜挽き可能 鋸身厚く腰焼き入れ硬度あり 185g    定正作

穴挽き:刃長さ360 x 幅 68 x 68刃 x コミ210mmL   厚み0.6 – 0.7 – 2.0 Tmm   鐵道・山林・土木・木匠用 木葉型鋸刃曲率Rは雁頭より緩め 刃高は雁頭より短い 鋸身やや薄くしなやか曲げ挽き・斜め挽き可能 187g 両角忠三郎作 昭和後期諏訪穴山系

鋸柄コミの仕込みジョイント

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大工・指物用は鋸身の込みを柄尻から玄翁で叩き入れますが、叩けば落ちる常識では逆。叩くと「コミ」が手許に上がって柄に固定されます。重力と逆方向に動くジョイントは、頭では理解できません。抜くときは刃を押さえ、柄頭から叩き抜く。

日本鋸種類と寸法 昭和25 -30年代の鍛造鍛冶汎用市販品

木挽き大鋸 前挽き・横挽き (刃渡り 尺八寸~二尺六寸)
木挽き根切り(尺二寸~二尺八寸)
木挽き挽割(刃幅 七寸~ 一尺)
山林用・手曲(尺二寸~二尺九寸)
山林・土木用雁頭(尺六寸~ 二尺)
鐵道・山林・木匠用 穴引(尺二寸~尺八寸)
山林・製炭用(一尺~ 尺六寸)
大工・指物用両刃(八寸 ~尺八寸)
大工・指物用片刃 横切りヒッキリ、縦挽きガガリ(八寸~尺三寸)
胴突付き(六寸~ 一尺)目数14 ~ 36 /寸
鴨居挽 (刃渡り四寸~五寸)
畦挽(刃渡り 一寸~三寸五分)
押挽(五寸~六寸)
挽廻(六寸~ 一尺)

船大工用 船手鋸(尺二寸~尺四寸)
笹刃(八寸~ 尺二寸)木の葉
穴抜(尺二寸~尺八寸)胴回
車屋輪型挽(一尺~ 一尺一寸)
炭鉱成挽(尺八寸~尺五寸)
植木屋枝挽(八寸~尺一寸)
剪定鋸(八寸~九寸)
根切り(九寸~尺一寸)
下駄屋鋸・突込み・ツンヌキ(九寸~尺二寸)

竹挽(八寸~九寸)
底廻(八寸~九寸)
炭挽(八寸~九寸)
弦掛(八寸~尺四寸)
腰鋸(尺一寸~尺三寸)
氷挽(尺二寸~尺八寸)

この他に、丸太玉切り二人挽き、櫛挽きなどの専門職用があります。(画像略)

鋸の名作実物で実技し実感 次世代へのハンドツールコネクション

刻印・銘鏨切りにも産地・流派が変化をみせる時期でした。一門銘ではなく個人名を打つ人が出てきたのは、門派束縛を離れ、自由な時代の物作りの動き表れてきた時代。
玉打ちは、炭素鋼ではなく刀剣用の玉鋼で甘い硬度と切れ味を活かした特注鍛造品で、職人の勢いがあった時代に長切れのする材質を賞揚したもの。横挽きと根切りの2点があります。炭素鋼と玉鋼の違いは、硬度が高く、鋸身・刃に独特の割れ皹が入り、ずっしり重い。(玉打ちの特長は、自分で目立てができるが刃が摩耗、堅木広葉樹には切れ止まりが早い。檜や杉の節のない所は切れ味がよく、節や釘には弱い。鍛造品質の良否が出やすく甘い材質といわれる一方、アサリ直し・くせ取りが自分でできるため目立てに出せない時に助かるので大正時代まで大工職に好まれたという。釘(洋釘)を切っても使える明治の角鋼鍛造品があります。

玉打ちは高価であり、硬度が高く値段も安い、性能で優れていた現代の平鋼に需要がシフト。経済性でオーダーアイテムから消え、玉鋼の鋸は現存品は少なくなり使われなくなりました。鋸身は他の鋼材に比べ錆にくく地肌が渋い味わい。日本刀材の神話的イメージがついてまわり、道具格付けを上げる思い入れから、特別貴重な扱いを受けて来たことも反映しています。制作者の精神的イメージに加えて、有り難みを感じ所有する歓びもありました。

大型で迫力満点の前挽き大鋸(オガ)は刃形もよく、造形物としても魅力的で雰囲気があります。キコリの山之学校、木の高等専門校に実習用に直ぐ使いたい優品です。最高レベルの作品でも、ミュージアム展示して錆らせるのでは泣く、使いつつ保存するのがベストなのです。危険物で触らせないのは刃物の命とり。

木の手仕事に使う刃物を全部体験すると、国産材の材質・性格がおぼろげに理解できます。様々な職業で進化したプロの道具を知り、姿形や切れの面白さを味わうことができますが、目新しい便利な道具に飛びつき、刃物に熱中するのは、手仕事職の楽しみであり、ウッドワークの本性宿命です。作業場に並べ飾るだけでも仕事が出来そうに見える。形の面白さは絵になり、デザイン素材にも使いたい。北斎漫画・絵本の世界は、これからブレークします。

鋸刃の革命的新開発 「長勝鋸・目立てから目研ぎへ」長瀬勝一の考案

木樵から炭焼き、木挽き製材、大工・指物、楽器・精密木工用まで手鋸最大から最小まで、職種により、いろいろなサイズ・形状、材質、形が生まれました。木工道具の世界で一番種類が多く、品質精度も高い作品が明治期から戦後まで続きます。オガコを排出する改良刃「窓鋸目」が考案されて以来、林業用木挽き鋸は改良刃として大きな進歩を見せ、製造産地メーカーも安定した時期がありましたが、チェーンソーが普及してからは急減、さらに電動ツールが登場。
機械化が進み、工業材料に変わり、手工具産業は衰退してきましたが、近年「鋸の革命」とも言うべき刃型研磨の新発明が開発されて技術の飛躍が起きています。切れ味・切削肌は鋸常識を覆しました。

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長勝鋸刃胴付き鋸 八寸    アサリ無し・異方五目/7mm 飛び窓ピッチ9mm  + 元ダブル目32mm  25目/寸  安来鋼   末身 52 x 元身35 x 0.4mmT   コミ180mm   155g  長津勝一 作  2014
鋸目の切削屑排出部「窓」開けの利点を異方目形と組み合わせたアサリレスの鋸目がベテラン目立職により考案されました。喰い込むように入り、切削面のバリがなく綺麗な仕上がり。従来の「目立て」では無く、アサリをつけない切り刃の「研ぎ」という新しい技法。長津勝一氏により、鋸の新しい時代が始まりました。鋸刃の研磨常識は、がらり変わります。昨年秋、仕事場を訪ね、お会いして教示を受けました。多難の時代を乗り越えられてきた現代の名工です。次世代を育成し、世界へチャレンジ飛躍される姿にも感銘を受けました。胴突き鋸もアサリレス。まさしく「開拓地向け窓鋸」から切削技術革新の扉を開けました。大工用両刃、押し挽き廻しも切れ味抜群、面取り仕上げしたような切削面です。
長勝鋸:京都市北区大将軍西鷹司町23 TEL: 075 – 888 – 5351  FAX: 075 – 888 – 5352

*二人挽き製材用長鋸は、大型伝統型がスイス・ドイツなどにありました。昭和30年頃まで輸出用両手鋸3.5- 5.5尺、内地型2.5 – 5尺。一人挽き鋸では、大鋸二尺八寸が最大です。

*木の手仕事に使う刃物を体験すると、国産材の材質・性格がおぼろげに理解できます。様々な職業で進化したプロの道具を知り、姿形や切れの面白さを味わう時間。目新しい便利な道具に飛びつき、刃物に熱中するのは、手仕事職の楽しみであり、木工職の本性宿命です。

*「鋸の技術史」は、古代から近代まで発展の過程を知ることができる鍛冶・目立て職の名著があります。鋸作品は、保管していると錆がきやすい。目立てして消耗し、また良い作品は使い減らし消えてしまう。墨壺や鉋鑿,ナイフ刀剣に比べ、大型で荒々しい雰囲気で趣味の対象になりにくい。鋸コレクターは少なく、記録や評価・研究蒐集されにくい道具カテゴリーです。大工道具でも美術的主役の位置付けではなく脇役。昔の刃物沙汰では、鋸はミンチ傷口はふさがらず、一番コワイ喧嘩でした。

鋸職の名著:

●「日本の鋸」吉川金次著 1966   私家版    昭和41年12月発行    ¥ 1.300-    165 x 227 x 25 Tmm  P.278

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●「鋸」ものと人間の文化史   吉川金次 1976   法政大学出版会 ¥1.500-  140 x 194 x 26mmT p.347  0320 – 21018 – 7710 (目次略)

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鋸の歴史文化研究:

・「産業文化史 鋸」平澤一雄著 昭和55年4月 1980 クオリ刊・産業技術センター発売 ¥3,300-   160 x 221 x 20Tmm  p.332

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・鋸の資料館

「三島郷土資料館」

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往年の脇野鋸・鉋刃鍛造に関する伝統技能、鍛冶屋仕事に関する産業歴史記録や資料を展示  各種実物と鋸制作工程や鍛冶職人の仕事場復元、貴重な関連資料・保存文化財は秀逸です。20100702 ABE
長岡市上岩井1260-1 みしま会館内  0258 – 72 – 2021

ⓒ2016 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2016 – 2019 「木工道具刃物の進化」「木挽き鋸から最新胴付き刃型まで」「鋸柄込みジョイント」「鋸研究図書資料現物」「窓空き・飛び目・あさりなし鋸刃新開発 長勝鋸」「Japanese Hand Saws of Modern Age」

 

 

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