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組手枘挽きは鋸刃セルフ目立て調整が基本技能 國政流相伝 -8. 微細鋸刃用目立鑢レンジ ハイハンドツールジャパン
高精度の組手枘挽きは、無垢材の材質・湿度変化により、胴突き鋸(鞘掛)の微妙なバランス調整の連続。ミクロンの精度で挽く技能は、切削刃物に左右される。その都度 外註目立出しでは間に合わず、出来合い新品は避けセルフ目立てが基本。道具刃物は、需要がないと職工消滅。鑢目立は、特殊な装置と高度な専問熟練技能がないと造れず、自作・転用ができない。
「菊枘・小菊」 変形枘の胴附き挽込み
プロの道具は可能な限り自作し、制作時間とおなじくらい十分な手入れ準備時間をかけます。材質・枘型により目立て・刃研ぎも微妙にバランス調整。鋸刃の動きを察知し、手の感触と目で音で聞き分けます。菊枘(大ひび)・小菊雛型:浅田木口にローズウッドハナ付け。鞘掛・胴附き七寸・八寸 鋸身厚さ 0.25 – 0.30mm、27 – 30目/寸。(欧米の枠付き鋸は立って作業するので押し挽きですが鋸身は引っ張りテンションがかかり真っ直ぐに降ります。日本では床座で引くしかできない。押し挽き鋸では0.25mmの薄刃となると、くねり歪み曲って使えず、極薄刃鞘附き鋸の考案発達がなかった。日本の優れた高精度木工技術は胴附き鋸の貢献が大きい。)
ⓒ 2016,Kurayuki Abe
枘挽き前の胴附き鋸目立て調整(13代國政雛形制作時)
鑢摺こみ・アサリ出し・上目側摺・剥き身・目攫い・歪とり・鋸身反り確認・挽き試し
通常、指物用 胴附き 27 – 32目 /寸には、鋸刃鑢「小挽切り」以上が必要。34 – 36 目/寸は、五・六寸の胴附き(鞘掛け)精密刃用。
高度な精密木工は、刃物工具の製造技術、クオリティも高めました。製造終焉により失われる前に、胴附き鋸の目立て技能の裏方にある日本独特の微細鑢規格について付記します。特殊な微細目鑢は廃絶したので買い置きストックしていますが、再現できるように産業歴史遺産メモリーをのこしていただきたい。
鋸目立て用鑢 仕上げ向き(世界最細微目)
指物・精密木工用「手挽鋸刃鑢レンジ」
「毛志・相中・小・中・大挽切 」(五種) 一箱 30枚入り 全国的に販路を持つ呉仁方のハイクオリティで高価な特産品。手打鑢から機械打に変わったのは正確には大正期からでしょうか。具伝のため実物をストックし、詳細を記載。鑢目の細度と寸法段階が数多くあるのは、鋸目の種類が多く職工需要があったため。切断することが仕事の質を左右し、効率と繊細な切れ味が要求されていました。
西洋に比べると木工用鑢手工業製品は、遙かに多種類。表にでてこない重要なハンドツールです。*相中(あいちゅう)は、「毛志」と「挽切」の中間特殊サイズ
規格寸法 (昭和28年卸資料)
仕上向大挽切 70 x 15 mm、仕上向中挽切 65 x 13 mm、仕上向小挽切 60 x 10 mm、ケシ 55 x 8 mm
並大挽切 65 x 15 mm,並中挽切 60 x 13 mm
大々挽切 67 x 30 mm、相刃 75 x 20mm、本中刃 80 x 23 mm 、大刃 85 x 25 mm、両手大刃 75 x 26.5 mm、 三寸両手 92 x 28 mm
その他、菱鑢並形、両手小刃付二渡切。鋸摺込鑢:3 インチ ー 9インチ 並目・細目(メーカーにより若干寸法サイズバラツキ有り)
① 毛志(ケシ 毛のように細く芥子粒のように微細な鑢目)
一枚撰り 胴附き鋸(鞘掛け鋸)30目/ 寸 以上の精密鋸刃用
頭 9.5mm x 鎬 55.7mm x1.32 mmT コミ25.8mm 3.6g
340目/インチ(0.075mm Pitch 送りをゆっくり三回切りで微細な刻み みじん切り状)極微薄刃の焼き入れで不良が出やすいので一枚づつ撰別された。鑢肌が粉体にみえるほど微細。鑢素材:ハイカーボンスチール(特殊鋼)安定させるため鞘掛けで使用することもある。
擦り込み鑢の「コバ」は鋭利のため、人造ダイヤモンド粒電着は表面がとれてしまうので摺りこみには使えない。
② 小挽切(しょうひっきり)
20 – 30目/寸の胴附き・枘挽きの目立て用
頭 12.5mm x 鎬 58.3 mm x1.37mmT コミ 26.7mm 4,4g
③ 中挽切(ちゅうひっきり)
細目鋸刃用 頭 13.5mm x 鎬 64mm x 1.55T コミ 28mm 6.6g
④ 大挽切(おおひっきり)
並目以上の鋸刃用 頭 15.5mm x 鎬 1.85mm x 1.85T コミ 30mm 9.1g
(並目と仕上げ向きの別製があり、仕上げ向きは三回切りで微細目)
⑤ 摺込鑢(すりこみ)75mm
摺こみ用 (一回目切り)頭 16mm x 鎬 77mm x 2.45T コミ33mm 15.2g
⑥ 油目鑢(あぶらめ)
90 mm 摺こみ用 (一回目切り) 頭 16.5mm x 鎬 88mm x 2.55T コミ32mm 16.3g
鑢の規格呼び寸法・定価 広島呉仁方鑢 卸定(昭和55年 1980 資料)
*「ネズミ」右二枚
中挽切りの上に「ネズミ」とよばれる仕上げ向き極細目がありました。昭和初期頃の指物職用、焼入色がグレー鼠色です。
*鋸鑢標準価格:製品価格は、産地問屋→代理店→卸→小売り販売店 流通段階で五割(五掛け)昭和55年1980 価格と現在では、二倍になっている。小売り価格: ケシ 54円、小挽切・中挽切・大挽切 38円 相中46円 昭和28年1953 当時比では、30倍です。
*毛志は、産地で10 – 20年前に順次製造終焉、現在は製造元がストック品を販売継続。毛志 @ 1,620- 小・中・大挽切り @1,350- (2016年 市販定価)
株式会社芳野鈩製作所 広島県呉市仁方桟橋通1511-31. TEL. 0823 – 79 – 5555
工業生産化されて、木の大工仕事がメジャーではなくなり、大工道具がすっかり電動工具にかわりました。鍛冶屋・大工道具店も衰滅し、手道具刃物・金具類・研磨材・塗料・本などを総合した木工道具専門機材店に変貌して行きます。名作鋸刃、鑢類は、廃業NET放出も散見。膠・漆の二の舞にならないようにしたい。大工は手道具を手放しましたが、細工物工芸・建具、楽器・家具類の小工道具の世界は遙かに多種多彩です。
*数世代分はストックあり、別途ハンドツールコネクションで頒布します。
* 鑢目打ち職(名工岡崎喜久治・高岡)の記録 http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/3315
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木の総合学研究 2016 「木工刃物・道具」「日本の鋸刃目立て精密鑢規格」「ハンドツールコネクション」「KUMITE Joinery work」「Doutsuki saw files – japanese files」
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