銅器金属工芸産業に無くてはならない鑢職。数少ない手打ちの名工の鑢は、一度使うと他の量産品は使えない。ミュージアムクラスの手仕事です。木の仕事にも恩恵が多大。
食い込み良く目詰まりが遅い。作業性が抜群、仕上がりが綺麗。価格が安く、長切れ耐久性に優れる。打ち直しで使い手の要望に適う。性能は、極めて高い評価でした。高岡市銅器地場産業のほか、東京の芸術・美術大学金属工芸科へもサプライ。木工では、唐木指物工芸や楽器工房では、鑢が必需品です。業界内では無双の存在ですが、ハンドメイドで制作数が限られ、周囲の関係者は人に教えたがらないほどの貴重な職人技でした。
日本鑢の頂点、最高の技術保持者です。焼き入れ技術にも優れているので、木の切削用工具バンカキなど他の刃物も制作していました。木工用は種類・サイズも限られていますが半丸などは共用でき、次世代のために実物を数セット購入。鑢の使用感・評価は、反復作業で相当使い込まないと判りません。使えば消耗して消える道具ですが、この貴重な実物コレクションは、クラフトハウス・ミュージアムに収蔵・展示したい秀作・逸品です。
地元に高岡工芸短期大学(1986年設立、2010年廃止、富山大学芸術文化学部へ改組)ができ、学科では岡崎さんの鑢が加工実習道具に使われ、また自ら学生に講義もし、広く地場産業振興に尽力されていました。更に制作技術は、学術調査研究対象になり論文紀要・資料もあります。
知識は後学に伝習されていきますが、技能は現場を経験しないと不可能。後継者なく、目切り・目打ち超熟練の両手両足は、もう再現できないでしょう。ハンマーの握柄指あたりのくぼみが深くなり、年季がつくりだす道具の見事な姿が目に浮かびます。(平成17年逝去)
「足を使う技」手と足同時の人体統合作業に注目
日本の職人仕事では、作業時に足を巧みに使うことが多々あります。木工分野でも、江戸指物や鉋台打ちなど床座位作業では両足先を加工物の支持、回転や送りの動作に使います。鑢手打ちにも足を巧みに使うことが目から鱗でした。全身のリズミカルな動きで精確にハンマーで鏨を打っていきます。
手で打ち、足指で随時固定し鑢地を送り。そのスピードは、想像をこえる速さです。作業場床は、木の簀の子板を座布団の下に置き、土間に合板をダブルに敷いています。冷えを防ぎ、疲れにくい。作業位置周辺は、手際良く効率をあげる道具や加工品の配置で無駄な動きが無く、集中できるように工夫されていました。手から手へ、有り難い手仕事が職人の間で伝わります。
作業塲は手仕事職人のミクロコスモス
・床座作業姿勢
足指(足袋を履き)で鑢地をつかみ、リズミカルに鏨で目打ちしつつ「左から右へ送り」。クランプ固定しないので作業スピードが速い。足と手を同時に使う身体の道具化が精密作業を実現。(平鑢は下目打ちを機械加工し上目打ちを手加工で仕上げる)木工用平・半丸は、手打ち目立て。鍛冶屋の土間作業は、大地のエネルギーが直接伝わり、身体が安定するのではないかと感じました。
※ 卸仕入れ価格ですが、取り次ぎ・店頭販売は別途です。
ワークショップ案内・ 技能プレゼン、製品紹介フォームを作成
従来の職人手仕事の取材記事や研究報告などが実際の仕事の魅力、現場の臨場感に乏しいと感じていたので、ならば、望ましいフォームはどのような形になるのだろうと具体的な内容をまとめてみました。
作業場訪問、制作聞き取り、写真撮影・現物購入、レポート編集記録
実際のビジネスでは下職と元請け、代理店など流通販路が複雑に関係しますので、仕事内容の詳細記事や型録などを作成すると支障がでる事もあります。作業工程・製品仕様・業務案内、プレゼン資料、取材プレスインフォーメイションなどに使えるコンテンツを考慮。作品内容・業種により体裁もいろいろな工夫が必要ですが、弟子入りした気分で鑢目を観察。材質から研削・研磨技術まで鑢の専門産業領域は広く果てしないミクロンの世界ですから、先ずは、ケーススタディ。道具の本質を伝えるには鑢がけをマスターしないと書き進めませんので概要を記載しました。
用途に応じて目次と取材や調査・研究レポートのページも差し込むことができます。Webコンテンツの雛形にするとグリッド型嵌めになるので、手軽で柔軟な編集レイアウトを意図しています。(金属加工や焼入れの専門知識がないので大まかな説明です。)
加工工程
① 鑢地 鋼材はプレス成型されたブランクで仕入れ
② 藁灰に一日半投入、770℃- 780℃
③ 地金鋼材を削る
④ 目付
⑤ ハンマーと鏨で目打ち
⑥ 塩を塗布
⑦ 釜に入れ熱する 770℃- 780℃
⑧ 取り出して、曲がりを直す
⑨ 再び釜に入れて熱する 820℃
⑩ 塩が溶融し浮いてくると820℃ で焼き入れ温度となる(塩の融点は、809℃ 溶けて浮いてくるとちょうど820℃になる)
⑫ 取り出して焼き入れ水槽(塩水)に突っ込む(ぶくぶくしない) 塩水でガスが入っていない。ガスが入ると泡がでて焼きむらが出来る (水槽は、50年前から継続使用)
⑬ 希硫酸液で洗う 酸化皮膜を落とす
⑭ 石灰水につける(中和)
⑮ 石灰水を沸かしその中に入れ、90℃ / 1分ほど(防錆処理)
⑯ 乾燥し油を塗る
⑰ 完成
木工用鑢 平/荒目・中目 木工用 鬼目(焼入れのみ)
半丸/荒目・中目 平/荒目
平/ 中目 平 / 細目・油目(焼入のみ)
五本組 八本組
八本組(大)
和洋 手打ち目立て比較
・ヨーロッパ型(フランス、ドイツ、スエーデン)
椅子座姿勢 バイスに固定したベットの上にセットし鏨で目打ち。元から打ち始め、手前に送る。加工物を手元と先の前後に皮ベルトをかけ、両足で押し固定。鑢地の送りは、一定の面積を仕上げて順次移動。目視、手指の移動で打つ。両足で固定し鑢地を横に送る岡崎スタイルを紹介するとMr. Auriouは、是非訪問して技術を学びたいと意欲的でした。
AURIOU フランス式木工鑢・タガネ目打ち
Auriou社(France) Mr. Michel Auriou 作 握り部:Wenge 口金:真鍮
山梨県河口湖町 輸入元:有限会社池田 20021115 AQ 取材記録・購入
*岡崎製作所 納入取引先 老舗メーカー /製品販売:株式会社石井(大阪府西区)
*ベストハンドツールコネクション:工藝家に譲渡します。( 製品価格は問屋・代理店卸下代 物価変動・物品税_上代小売り価格は別途)
*「バンカキ」は、前稿 漆匙削り用の酒井型特注作品に記載。
ギャラリーストック 木工用鑢荒目・細目 10 – 2本、金工用 荒目・中目・細目(油目)4 – 2本 、五本組・8本組(大)1セット、 8本組 3セット AURIOU France :両面打ち G01008,G1006,G1004, G1002, G01001, G1004 Wenge Grip 各サイズ1 pcs.
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木の総合学2014 – 2019 「ハンドツールコネクション」「手打ち鑢・焼き入れ」
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