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斧・鉞・鋸の杣職伝承_木曾地方筑摩郡読書村 總杣頭下林金之助の杣・木樵道具資料庫の記憶

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

總杣頭格による私設杣・木樵道具保存庫 「御料林」時代から実際に木樵杣仕事をしてきた職人の道具刃物保存は,極めて貴重な展示コレクション(約100)点でした。後年、後継者がいないため維持管理が出来なくなり、2005年、南木曾町教育委員会へ寄贈され博物館収蔵室に。研ぎ油拭き・手入れはなされず、そのまま長年サビ付き中。展示当時の貴重な写真記録と斧鉞柄楔ジョイント実測がありますので追補・再掲載。

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南木曽郡読書村与川 總杣頭 下林金之助使用・下林米男 資料庫展示私設 1988 -2005
道具刃物の他、帝室林野局東京支局からの任命書・顕彰なども展示、天城管轄請け下命記録も見える。
2kgを超える刃広鉞、チンチョウ、大鳶、前挽き大鋸、根切り・横挽き・木廻し鶴を使いこなすのは並外れた筋力・技能をもっていたと見えます。伐採・搬出技能のコツ、生木木材の知識、森林山中での心得、人足の手配、伝承、当時の官営事業の実際現場などを伺う機会は失われました。

「總杣頭」とは、別格の総取組役 杣師親方の呼称

山作業では危険と隣り合わせですから、現場管理、手配・段取り準備、判断力、統率力が必須です。近代林業変遷期の現場職の寄せ集めではない、系統・素性がハッキリしている重要なコレクションとなりました。(斧柄ジョイント部のみ実測記録。)

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1992年7月23日 見学訪問取材

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ハツリ鉞「刃広」の木柄握りの斷面は、長楕円形というより平角で丸み「成」に幅があります。「振り下ろし」がぶれないように、手と腕の正確な繰り返し動作を生み出す工夫です。(足元をつぶさない)
南木曾町民俗博物館分館収蔵室に移蔵  20141207AQ

民俗資料・文化財は手を加えず現状保存原則で手入されず、サビ腐れ放置。学芸員は技能保持、研ぎ手入れが出来る木工職がふさわしいのですが高学歴・資格・肩書きがないと採用されない。実務が出来る担当職員は皆無です。整理し保管するのも塲所が限られ、早い内に錆だし油拭き隊が出番になります。道具は「動具」_寝ていてはイケマセン。錆だしは簡単、お早めに。

道具は、技能や仕事を伝え教える「導具」なのです。

一昨年移転された大工道具館では、前挽き大鋸がポスターのイラストに使われ、展示物は「絵」になりユニークで迫力があります。何時から大工が杣・木挽き職を兼ねるようになったのか知りませんが、野球具に庭球のラケットを並べる類い_現場を知らない世代になりました。
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木の総合学研究 2016 – 2019  「杣・木樵道具刃物」「山林と職能」「刃物道具の保存・手入れ・管理」「木樵・杣道具刃物の収蔵庫」「斧・鉞刃先保護具」

 

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