仕事上、興味関心の高い対象は、目先の実物・現物。まず揃えなければならない道具や材料のベストマッチングから始めることが、紹介・連携の契機になり、最適な世話役務につながると思われます。その手順も検討しつつスマートな関係つくりに発展させたい。
ちなみに、情報しかり、仕事も道具・材料も人づてにくるものが最も確実です。
ベストマテリアルコネクション、最良の材料をもっともふさわしい人へつなぐ。
BTC : ベストツールコネクション、最高の道具を、最適な次世代の才能に渡していきます。この他、稀少文献・図書・記録資料も順次紹介し、ブログに掲載していきます。
全く収益にならないと参画・後継者は、出てきませんからボランティアではなく、支援業務にできるやり方を実現しないと単なる販売行為になりかねません。モノにまつわる由来・ストーリーが身体記憶と知識の習得を促します。
*ベストハンドツールコネクション
鉋・鑿、鋸、鑢、稀少工具刃物の頒布
・南京鉋制作記録とストックの頒布
東 敦史作・柏木工房リプロダクト解説
*ベストマテリアルコネクション
オノオレ・アサダ・シウリ・トネリコ、
鬼ぐるみ・姫子・赤ブナ・コナラ赤
白樫・青樫、ニガキ、黄蘗、桂、栃、
山桜・ウダイカンバ・朴・イタヤ
タモ・ハクジ・シデ 他
*稀少文献・重要研究資料の引き継ぎ
知的資産の継承・活用
職能伝承と世代交流の機会をつくることから始める
工房・アトリエ作業は、出職に比べて接触・交流の少ない居職ですので、「稀少材・名作道具・名著・逸品をみるかい」を開催することも仕事と人のを結びつきを強めるでしょう。弟子やアシスタントになれば、自ずと面識がふえ、人脈と技能が継承されていきます。共通の体験、仕事を共有する場が育成する時間になります。
同時に、ビジネス感覚を養い、知見を拡め、共感を集める場となり人間関係も重層的に構築されます。人に寄り添うこうとで覚える多様な経験は、創作の礎です。専門用語も、テキストだけでは修得しきれません。顔を合わせ、共通の生活行動、仕事時間の共有が基本なのですから。
Net検索で知識を集め、スーパーの商品陳列棚にあるものを選び取るような工具・機材の使い方では、剃り落ちてしまう大事な現場のコツや工夫、ノウハウも沢山あるのです。
ビスポークBespokeは、ファッション用語で衣服・靴の注文・誂えですが、語彙は「話しをききながら」の原意。既製・量産品流通では、制作者と対話することはありません。顔を合わせ対話することは、ハンドメイドの世界で極めて重要な職能です。 急速なデジタル・NET化されていく社会変化にアナログ・伝統工芸産業の本質が変容していることも大きな懸念です。木の文化産業衰退の前にできることを手がけて参ります。
親方筋・世話人・恩師をもてば、仕事を拡げ、キャリアが耀く。
英語圏では、良き指導、優れた案内,適切な助言をしてくれる人物を意味する「Mentor メンター」という職責あります。
日本では師匠・恩師。最適な先達・先輩に出会うことからキャリアーが始まり、人生行路を豊かなものにしてくれます。 職人の世界では,「親方筋を持て」と先人から教わりました。親方や先生が居れば、何かかと相談でき、仕事のシェア・高い利便性もあります。最近は、親方も経済的に大変で雇用も減り、面倒を見てくれる御仁が少ない実情ですが、訪ねて押しかけるぐらいの度胸が欲しい。親方の手足になりかわり、仕事を覚えるのですから。
制約がない自己流では、「型なし」で、仕事の流れや業界の関係が稀薄になり、技能の修得も遅く、基本が疎かになる。逆にフリーな作家志向には、従来の職人修行の世界は、息苦しく、個性的な作風を目指すには、新しい修得コースも選択できる時代になりました。いろいろな専門学校・教室・講座・塾が活動しています。
いずれにしても、ベテランに習うことから仕事を覚え、作品を創作するために努力。やがて独立する過程に、手本・目標となる素晴らしい人に巡り合うことが一番の課題、「学ぶ」は、「まねぶ」からです。
玄人が、指導できる得意な分野・独自の才覚はいろいろ多彩・多能です。作風や工房スタイルも個性豊かなタレントもいれば、地味でも正統な技術を保持する伝統工芸職、エンジニア上がりのモダンなセンスで新機軸を切り拓く制作家も少なくありません。
個人で工房作品を手がけ、長年経営してきていますから、アドバスできる領域は多岐にわたり、材料・道具・機器、加工技術、デザイン、プレゼンテクニック、工房運営マネージメント、作品販売、情報・資料など 現場のノウハウが蓄積していますから、学校教育とは別の次元で生業直結、実践的です。
ウッドワークサミットメンバーは、この指導的先達として次世代の有望な若人に対面し、これから、世代間の継承をはかり、助言・支援者として最良の役務を担うでしょう。
危機的な木材産業、伝統工具・刃物産業構造の現実と社会的な環境変化
木の国・木の家具・木の文化が、石油・金属にかわり、身の周りには化学製品・人工合成無機質材料があふれ、電磁波の空間に住み続ける毎日となりました。伝統的な木の仕事である建築や家具、室内調度品、楽器、食器、工芸品が急激に姿を消し、その制作をささえてきた木材産業・資材、工具刃物生産が衰亡してきました。
需要がなければ、製造現場は立ちゆかない。最近、松本盆地、安曇野地区では、製材所がいくつも閉鎖、人工乾燥サービスもほとんど消えて、もはや裾野周辺産業が廃業。人工乾乾燥輸入材へ移行しています。自然乾燥だけでは、ビジネスが成り立つのは、小規模の工房制作に限られます。多くの道具店・木材商がたたみ、最近まで手に入ったものが絶える瀬戸際です。次世代の担い手は、生活していけない仕事には、寄りつきません。
次世代への仕事の継承は、原材料・研磨剤・接着剤や塗料等の加工資材、刃物道具、金具など、一連の裾野関連産業の成り立ちも考慮しなければ十分ではないのです。時代の急速な変化で、産業構造が大きく変わり、存亡の影響を受けています。
針葉樹ばかりの林業政策が長く続き、広葉樹は、素材も枯渇し、レッドデータの樹種も散見されます。山に多様性がなくなり自然環境が大荒れして、生態系全体がおかしくなってきたことも見逃せません。国内木材市場では、高樹齢・太径木が枯渇し、輸入材に変わりました。
日本にある優れた木が伐り尽くされ、山になくなり、数百年後まで良材が手に入りません。その間、外国の森林を伐採し、針葉樹集成・人工ボード加工材に置き換わるのです。今、日本の自然樹は、ビンテージクラス:貴重材になりました。実際の自然林には、樹種・生態の確かなデータは見当たりません。林業従事者も減少の一途です。
次世代の育成、産業振興・サポートは逓減し、技能訓練校の減少も続いて統廃合、次第に存在感が霞んできました。入学志願者は、上松技術専門校の昨年入学では、全国から少ない木材造形学科に集中して、倍率6.8 。指導技能職員も、減少の一途です。この教育機構の将来展望は、木の産業分野の総合的なオペレーションで新しい方向性が見いだせますので悲観的では有りません。人口減少・産業収縮、生産品目の収斂が起きてきますが、自然循環素材、エネルギー源として活路が開きつつあります。見渡せば、あちこちで煙立つハイリスクスポットが不気味な静かさを漂うといった印象です。
モノ作りの現場は、製造販売していく基盤がなくなると崩壊しますので、まず直面する道具の手当を優先したいと思います。
方策として、製造者の現場コンタクト、仕事のすべてを記録データ化、及び、現業の先行購入で一時的しのぎ。廃業後は、ストックの融通・譲渡頒布で継続。再現・復元して技術を伝承して新しい開発に結びつけていく「シード保存庫的な産業技術バンク」を目標。途中でパンクするかもしれないが、構想だけはイメージできます。生業として持続し、製品を供給できる内に時間稼ぎのスペアーをストックをしておくのが精一杯。そのストックがある内に、次世代が再生産できるきっかけがあるでしょう。絶えて消えても、実物ストック・現場取材記録・資料保存をしておけば、どこかで役立ことが必ずあるもの。
木材資源・周辺関連産業、訓練・養成プログラム、デザイン教育、資料コレクションなど、それぞれは連携してはいないので横断的に総合的なプログラムを作成することも求められるでしょう。フレキシブルで有用なMC:マテリアルコネクションが今後の課題です。
生体としての人間がどこまで人工物質やハイテク環境に耐性をもつのか、安全性やその生存まで考慮しなければモノつくりが難しい時代ですが、ふさわしい作り手に、取って置きの材料が行き着くものです。静かにストックされている銘品・最上品は、以外にも現存しています。使い手との出会いがなく、紹介できる格好のメデイアもありません。
しばらく混迷の後に、人・材料・道具・仕事の新しい結びつきの形がこれから生まれてくるでしょう。
木工家、工芸作家・アーテイストの経済的シチエーション
木工は、材料手当、乾燥ストック、機械設備・ゴミ処理、刃物工具、接着・塗料、研磨材等、大変な施設費用がかかります。
作家志向ならば、ショウルーム展示施設もほしい。材料コストは、長期先行経費ですし、注文を受け、デザイン制作してからやっと入金なんてかわいそうなフトコロが主流。経済的にバランスがとれない楽しいあきれる仕事になります。好きな仕事ですから我慢を続けますが、見えない経費が大きいので、気が付いたら収支は混沌で、ご本尊は青くなり、家計の預かる奥さんは、赤くなる…「楽・極」には、木の字がつき、囲まれると「困」は、やはり木が。
「三代と続かぬ材木屋」巷の格言は、木の産業の寿命を言い当てています。不況といわれてきた産業の中には、忙しく「夜なべ」状態のところもあります。低迷は、おしなべてイメージ・ムードが支配している結果、ネガティブな見方になりがちですが。
嘗ては、高度成長期、木材販売や量産家具で収益をあげた時期もありましたが、現在では、生産性が下から二番の製造業レベルです。賃金ベースも低い先細りイメージですが、品目や販路により、発展盛業企業もあるので一様ではないのです。ちなみに、クラフト分野では個人営業自営、フリーランスが多く、複数業務で生計を維持している実情です。
利益追求より、楽しみながら生活の糧にしているケースが多く、友人・知人の家計は、バンク口座に長期居残るほどではないと聞くことあまた。主要産業ではなくなり、構造的な制約が重くのしかかる現実は、次世代の育成まで余力が無くなっています。材料・加工機材・制作・販売、次世代継承、環境問題に直面して、まさに危機的と感じます。木は、人間ができる唯一の再生・循環素材、生命維持資源ですから、重要な命題そのもの。
安曇野会議は、続きます。
ⓒ 2013 Kurayuki, ABE 「木の総合学研究 2013」