シナの木「赤」伐採カット後のセルフキュアー色素分泌・連続抗体の出現、細胞死モクローシス Insight 木の内科-25
ダメージ・損傷を感知すると、芯央・年輪層から抗性色素析出。放射状に紡錘形白化呈色、次第に混濁し酵素分解による変色斑になり、辺縁周囲に黒黴びが付着して腐蝕崩壊にいたる。年輪層からの色素移動、変色痕跡が放射重層的に現れ、樹体内組織・致死細胞のダイナミックな経時変化をみる。和風イメージをもつ固有のソフトな材質感、シナ青と赤の材色差や経年変化、類似の性質・DNA・物性は未知の領域。
直ぐに芯央・年輪層を通過し微細緑色班が拡がる 元木と枝上樹皮の違いは大きい
辺材との境界面、芯材赤身部の識別はなくプレーンな樹幹。色素は、髄・年輪・中間層に均一に含有している。
髄芯部から橙赤色素を放射状に拡散 。 幹木部は、樹皮・芯央部に橙赤色素を含み、水中浸漬した丸太をカットすると芯央部からの色素移動が起きセルフキュアがはじまる。初期にシナ独特の鶯微細色素が年輪層から分泌放射され拡がり、更に重層的に芯部から橙赤色を放出。色素侵潤が観られ、更に2日ほどの短時間で放射白班が現れる。所見は、ケーススタディです。
酸化や酵素分解による呈色、菌類の侵入で連続した複雑な抗性生体活動が観られる。
シナの木「赤」径:265 mm 53yrs. 玉切り後の木口死斑・乾燥後に劣化硬質となる 201305 – 201405
肥大成長は春秋材差がなく均質フラットで年輪は目立たない。芯央部からの色素移動により、辺材境界隣接部は緑色線が出来る。清潔感のある白太材質は軟く緻密で、逆目・倣目差は弱く目立たない。高樹齢材は年輪幅が狭い糠目となる。芯央部には、油気があります。
木部は、灰白・薄藁色に淡赤色混じり。シナの木「青」に比べると淡い赤身混じりの縞模様、いずれも火山灰・腐葉土壌に立つ樹体に取り込まれる色素が反映して淡褐色系の木材色を形成します。
シナの木赤 A 元口 径920 x 末口 900 x 60T x 2.1mL 390 yrs.
B 元口 径800 x 末口 750 x 60T x 2.1mL 300yrs.
岩手県産出材・盛岡木材センター落札20051117 木口柿渋塗布後割れ止め剤塗布MT 天乾 20060222−20160720
「榀の木」と「オオバボダイジュ(大葉シナの木)の識別・材観について
シナの木には商材名で「青・赤」の区別があり、実際の樹種は違い芯央部材色も「青」は白系、シナの木「赤」は芯材と辺材白太」の色差がハッキリして人肌に近い褐色系淡緑混じり。シナの木の葉形は小ぶり、「青」はオオバボダイジュ(オオバシナの木)の別種で厚みがあり、倍サイズ大振り。幹・樹皮肌の質感は、よく似ており同類に扱われている。
材質は、共に軟質で枝上部の樹皮は近似。外皮は、厚い赤褐色の割裂状と表面層が青白の樹皮で識別できる。
「赤」は 1m 程の大径木になり、大径老齢芯材部は、目回り・ヒビ・てっぽうが入りやすく、内部応力による歪で収縮反り捩れが出る。
年輪木目が目立たないプレーンな「青」は、材質が均一で加工しやすいので有用樹の大木になる前に伐採されている。山里低地で水気のある塲所、谷木が多い。枝葉、樹皮、花実、幹樹形の外観相は既知でも、内科細胞レベルの活性は、まだ未知の領域です。
シナの木(赤)約 50yrs.中央高速駒ヶ根SA園地20160728 、三島町淺岐 シナの木葉 20090704
長野県は、「科の木」から「信濃の国」の語源ともなり、植物民俗学的にも深い関わりがあります。
シナの木は樹皮繊維を条材や繊維をシナ布に。内皮は、モアダ編み工芸材として循環再生利用してきた大事な山林資源・素材でした。内皮モアダについては次回掲載。
*「モクローシス」:外部要因による細胞死を「Necrosis」といいますが、樹の臨死細胞変化を「木ローウシス(死す)」と造語
*挽材作業・マテリアルトリートメント協力:柏木工房 柏木 圭 20060207 – 0422
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木の総合学研究 2016 – 2019 「シナの木赤の臨死細胞変化」「シナの木の内科」「シナの木録・木識」
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