ジョイントシステムデザイン工芸木工

稀少材ソリッド「木口寄せ木モザイク・熱風絶乾・表裏同等」 自然素材の最上美質 ハイエンドクラシック・ノーブルデザイン Tranekaer Furniture 続

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

 エキゾティック美麗貴重材の選りすぐり、気品と格調高い雰囲気をもつ最高級家具としてデザインされ、城主伯爵が手掛ける工房制作は家具製造関係者の羨望を集め、ブランドの存在感は大きいものでした。1970 -1980年代のダニッシュモダーンがポピュラーになる中で、銘材ソリッドの木口材色・テクスチャーをいかす斬新なアプローチは、リスクを超え制作要素技術を向上させるとともに、ステータス・ハイエンド家具デザインの系譜を刻み、工業デザイン消費財の饗宴にクラフツマンシップの本流として危うい姿を止め輝く。

従来のSawed veneer 単板張り、突き板化粧板練り物から離れ、ソリッド真物を思い切って使う制作理念は、貴重な銘材使いの真髄とみえました。熱風絶乾による材質精度の安定、寄せ木ブロック木口モザイクパターン造形手法と木口接着各部のソリッド主材使用は、当時の家具メーカーやデザイン関係者をうならせました。木口を魅せるデザインは、無垢材でなければ出来ないものですが、長い時間を経てきた自然素材の見事な美しさ、クオリティや工芸価値を直感的に伝えます。20 世紀デンマーク家具の最上の品格でした。

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貴重木ソリッドの主材使用、新しい木口寄せ木モザイクパターンデザイン、生来の材色を持続する絶乾熱風乾燥処理から、素材の個性・テクスチャーの魅力を最大限に活かすクリアー塗装法、表面・裏地同等、細部の仕上げまで、パーフェクトではないにせよ、前例のない最高品位を追求した手仕事です。

20-25年経過して材色は少し退色 留め切り・ズレはなく安定 20160915 ABE

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■Conference Table 196 x 196 x 72 cm H Cherry Padouk Wenge フェノール樹脂接着剤によるモザイク寄せ木角ピース周縁にブラックセクションがでている初期作品。黒い接着縁をとるため尿素樹脂系に変更された。
引き出しフレーム:Oak 引き出し側・先側 : Birch
Design by Gorm Lindum Architect

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■Table NIPPON1 125 x 62 x 38cmH 寄せ木モザイクデザイン:林 重雄 1981

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■デスク・テーブルトップ:モザイク樹種 Teak   Rose Wood   Padouk   Cherry    Beech   Ash  Walnut   Kosipo   Tiama   Bog-oak   Wenge (Standard)  1975 -1980

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p1250467-1Backer 同等材仕上げp1250478-1 p1250525-1

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■裏面バッカー:寄せ木薄板同等材・モチーフなし ブロック木口カット薄板を6枚リピィート Cherry   Teak   Padouk   Walnut   Wenge

練り物(接着)表裏同等材の原則

接着すると表面材は温湿度、外気の影響を直接うけ、膨張収縮、反張りが起きます。板厚にもよりますが、接着層は動き、塗装面にも影響するので、芯材コアーも一体で安定するものにする基本の一つです。造作・建具も「裏同等材」は同じで、裏・バッカーの構造は見えないけれど、練り物(接着)の基本原則でした。表の狂いは裏側をみると判ります。

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テーブル脚ジョイント部  初期モデル

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改良モデル1980

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デスク脚ジョイント 脚Wenge無垢柾材

最高の工芸アートに既製市販量産パーツはそぐわない。露出しアンバランスでは、手仕事イメージを損なう。

全てを内製化し、最高品質を創作し完成度を上げることまでは手が届かず、ハードウエアーは既製量産品を調達装備しています。当時、そこから最高品質イメージを損なう問題が派生することまでは予測出来ない。当時の家具産業では、木部に装飾・機能金具 Fitting を取り付ける考えが定着し、自社でハードウエアーまで手掛けることは機械設備や表面仕上げ処理までは不可能でした。デザインと実作加工技術、ハードウエアーのテクニカルバランスは、資源材料調達、周辺産業基盤・流行トレンドに大きく左右されていきます。

露出する金属部は、製品のクオリティ・イメージを大きく影響しますから、乗用車のニューモデルは、必ずホイールデザインを新規に装着することで既視感をぬぐうのですが、工業デザインの世界でもインパクトを与える部分には類似品を装着しません。個有の際立つスタイルにはならないからです。

ここでデザインと構造機能金具のマッチングについて検討するのは、あくまで設計段階に潜む経時変化への対応・予見をどこまで持つべきか、常識的な技術を超える課題は、どのようにリカバーし支えることができるか。実物の経年変化記録と専問的な知見を後付したいと考えて記載しました。

KD Knock Down ハードウエアー金具は、専用オリジナル・内製が望ましいが無理難題

当初のモデルは、脚の外側に真鍮アングル材(ゴールドカラー仕上げ)にスタッドボルトを溶接し、内側コーナーに入れた隅木ブロック(Wenge)をあてボルト締め。デザインアクセントを兼ねていますが、真鍮ヘアラインマットフィニッシュは早期に曇ります。光沢が鈍くなると磨く手入れが必要となり、高級イメージを損なうので、次のモデルから脚内側からのコーナー金具アセンブリーに仕様変更されました。
しかし、画像のようにフレーム下端に切り欠きが露出し、メタルカラーむき出しのまま。既製汎用部品を取り付けて高級感を損ねる結果となりました。鉄板プレス・ボルト締めレンチ作業はマシンイメージ丸出し。最上仕様の美的な雰囲気をぶち壊します。組み立てれば再分解することは少ないのですが、金具を隠すかパーカライジング、塗装仕上げにできない事情があり、連結ジョイントの開発は手つかづで完成度は低いままでした。本来は、ハードウエアーを既製から選ぶFittingsではなく、構造一体で設計制作、自前で用意すべきもの。異質の属性を不用意に抱え込むことになります。

輸出家具のため分解組立構造は必須でしたが、ジョイントハードウエーアーは経験ノウハウが少ないために市販品を調達して凌ぎ、オリジナルデザイン構造金具は後回し。小さな工房で本格的なジョイント金具まで手掛けるのは、メタルワークの機械、表面処理の設備コストが大変です。脚物につけたブランド銘板は、日本製の電鋳プレートでした。

 熱風絶乾炉・高温重合反応による色素安定、絶乾状態で材質を安定させ退色を抑制する

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柾小角材(四方・追柾・二方)の乾燥炉は、縦型ラック積み・熱風上昇循環式でした。約2週間の熱風人工乾燥後にシーズニングして柾角材に木取り、モザイク種木の木口面を縦型プレスでブロックを制作。デザインモチーフをワークトップ化粧材に使用 Wenge Teakの無垢材でフレームをつける。寄せ木用角スティック絶乾サンプル 30年経過し退色は微少。1980 – 21016ABE

厄介な接着層のクラックではないヒビ状ライン・導管内析出 白い微班

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無垢材は、厳しい人工乾燥後も経年変化で動き、品質クレーム・制作技術上のリスクがつきまといました。戦後からのダニッシュモダンスタイルは、機械加工量産ものが主流でハンドワーク技能の蓄積は浅く、トライアンドエラーの連続から少しずつ完成度を上げていきました。

木口寄せ木ピースによる装飾的モザイク表現は、独特の華やかな雰囲気を漂わせる。突き板化粧板練り物では出せないソリッド感は類例はなく、自然素材の最も魅力的で贅沢な使い方は、この作品で終焉です。

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貴重なソリッド材をふんだんに使い、本物の材色を強調したハイステータスノーブルデザインは他のメーカーは手が届かない独自のクオリティです。中世からヨーロッパ圏では居城の床を、寄せ木で施工されてきた歴史があり、その伝統的な室内装飾技法を木口寄せ木としてモザイクテーブルデザインに活かした孤高のハイエンド作品です。

Woodwork Summit 1991 の際、ゲストルームでは二台の小テーブルを用意しましたが、ゲストのKurt Naef 、Pierluige Ghianda夫妻、Siegfreid Schleiber 各氏は、寄せ木に関心を示さない。突き板張りウレタン塗装に見え、日本の寄せ木細工「ズク」張りものを知っていたためと想像。ウレタン塗装膜は厚く、製造現場をみない限りソリッド材木口張り(薄板)モザイク本物とは見えない。木口は、研磨で凸凹波うち、塗装も難しい上に並べ寄せるという常識を超えた知られていない手仕事です。

ハイクラス、エグゼクティブ用の家具としてデザインされ、日本では首都圏のインテリアブームで相当数のテーブル作品が家庭用に販売されました。パーケット表面の塗装クラックや木口接着表層の剥離が起きて難しい修理がふえ、多湿で空調ドライに晒される無垢材が動きクレームへとつながる事態は予想していなかった。最高級家具品質は、僅かな傷・隙間ズレも欠陥とみるユーザーが多い。個性的な素材の濃色芯材木口接着にフラットクリアー仕上げではシビアーな要求です。当初はDanishi Oil 仕上げでしたが、水拭きに空調でドライクラックが拡がりました。割れるのは、木が悲鳴を上げているから。人にも居住環境が厳しいというサインですと問わず語り。それでもビジネスとなると、クレームに対応せざるを得ない事案でした。

Tranekare Furniture に関する資料 1979 – 1981

デザインアーカイブスに残す貴重な歴史記録になりました。

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デザイン専問誌では紹介される記事は稀で出版本にも登場したことは少ない。作品ヒストリー解説、制作技術やデティール、現場取材記録は見当たりません。一般配布はされませんから、デザイン教育現場では手にできない生の顧客説得納得メディアです。

Tranekaer 社 Tranekaer Kirke城主 President Count Preben Ahiefeld-Laurvig 伯爵自らが経営する工房で貴重木の寄せ木練りつけ最高級オフイス用デスク・テーブル類を製作。日本向けに寄せ木モザイクの超高級炬燵板特別仕様も手掛ける。 日本への高級輸出家具数量は多く、2000年頃まで製造販売が続き、その後他社に経営移管・吸収される。Tranekaer Furniture : Tranekaer Castle , Langeland DK 5953 Denmark

*仕上げ塗装の変化:当初はチークオイル仕上げ、アミノアルキッド樹脂系、ウレタン系と変わりましたので、制作年代により仕様が異なります。

日本では田園調布の(株)テーブル館が輸入販売、後にテーブルを山品木工、三好木工が取り扱う。現在は別会社に吸収され、ブランド名Tranekaer Furniture、製品の残影もあります。ほとんどの作品はまだ現存使用されているので、再生修複など、これからの仕事になります。

この内容は、1981年テクニカルアドバイスでTranekaer社を訪れ、その前後の「テーブル館」との交流支援から改良記録、事例研究として記載しました。

飽きが来るデザインもの 10ー20年周期 材色樹種の流行変化

ファッションは、景気が良くなると明るいカラーが流行り、不景気になると地味なダークカラーへと移り、汚れが目立たないほうがよいと考えるようになります。家具・室内・建築も同じように素材・仕上げ色やスタイル変え、好みが振れて目先をリニューアル。
さまざまな生活道具の登場で、耐久消費財の絶え間ない感覚刺激を受けて新鮮度は薄れ、モノの存在感が稀薄になります。目は見慣れると意識することが薄れやがて飽きてくる。楽しむには、新しいイメージや気分をかえる違うものに惹かれるので、時間が経てば陳腐化してしまう繰り返しです。

明るい素木地(白木)が受ける好景気では樺・シオジ・タモ・栓・楓メープル、暗色系のブラックウオルナット鬼胡桃、楢・栗・槐は、経済不況下で増えます。経済変動でデザイン傾向が変わると、影響をうける商材樹種、仕上げ塗装・内装色も同じように色調が揺らぎます。

美しい木目をみせると、「うそぽっい」という印象をもつ人が増えました。節入りのほうが真物木材にみえる。本物のテクスチャーを知らない世代は、実物を体感する期会はなく、防火内装制限・消防法で駆逐され、プリント化粧・擬木が溢れて感覚もおかしくなりそう。最近の北欧レストア再生家具人気はソリッド感ですが、21世紀は上質の天然素材はドンドン姿を消し、集成材・人工植林木、プリント合成ものが主流になりました。現在、プロでも識別しにくい精巧な木目導管エンボスプリント工業製品が出回り、混乱してしまいます。

ⓒ 2016 , Kurayuki ,ABE

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木の総合学研究2016 「貴重材・銘材の美質 – 木口寄せ木モザイクワーク」 「熱風絶乾による木材色素重合固定」「ノーブルクラシックスタイル・ハイエンド家具デザインの実録」 「脚物KDジョイント金具」「High – end Furniture Design」「家具の基本構造デザインケーススタディ」

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