絶乾加熱材色安定・樹脂分の滲み出 Padouk 契り_レンジ乾燥テスト
濃色優良貴少材の鮮やかな仕上がり、美しい色調を長くとどめたい。「退色・やけ・劣化」を抑えるには、材色素の高温重合反応をするのが基本テクニック。
前稿の熱風絶乾炉で長時間加熱し、材色を安定固定化する方法は、人工乾燥技術から派生した色素重合反応によるものです。最近では、人工乾燥による色素移動を起こさせBlack Walnutの辺材幅を減らし、品質を擬装、高値販売する商材がまかり通るのはインチ木。
桜・楢・鬼ぐるみなど国産材大径優良樹はなくなりました。日本国内では「調質木材」が考案され、欅原木・高級材の割れ止め・材色安定技術として、丸ごと蒸し焼き乾燥が実用化されたことがありますが普及しませんでした。
1970年代の低周波乾燥では、大がかりな電磁シールドが必要でしたので使われなくなり、現在では電子レンジを利用する便利な芯部からの一体同時加熱方法があります。そこで、彩色化粧を兼ねる銘材Padouk で「契り」を家庭用50kW 電子レンジ加熱絶乾テストをしました。
■加熱:120 Sec. 樹脂煮沸しみ出しを観ながら間隔をおき、回転皿上で 3回 加熱。室温冷却後、シーズニング放置二年ほどで白い微粉がつき、材色は濃赤褐色のまま良好。この白い黴びにみえるものは、酸化した脂分で導管内にも残ります。拭き取れますが、塗装後では塗膜下で出てくる厄介な脂分です。オイル仕上げでは周囲と馴染んで判りません。
■安定した一年後、更にレンジ加熱180Sec.
表面についた脂物が溶けて焦げ目がつき、スモーク燻製状態。過加熱乾燥。
材色変化の傾向
濃赤褐色材・紫系には色素に酸化鉄成分が含まれ、酸化退色する。パドック・紅木・赤樫・アサダ赤・花梨・紫檀・ローズ・ブラックウォールナット等。
黒柿・黒檀・栗埋もれ木などのBlack系実用は安定しており、ブラウン系Teak・槐などはさほど退色が目立たない。
赤褐色の芯央材は、シーズニングして安定する1-3年放置後でも良好です。電子レンジは、材内部から分子構造を強制加熱ドライ、材色樹脂性分を均一に安定する効果が認められます。繊維組織材質の劣化までは不明。表面の酸化、陽光によるやけなどから材色を守るにはクリアー塗装で長期劣化が遅いもの、再塗装出来るものが望ましいのですが、完璧な塗料はなく、経年変化で当初の鮮やかさは失われます。契り、象嵌などには有効です。
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木の総合学研究 2016 – 2019 「高温加熱材色安定処理」「稀少木材の調質加工技術」
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