「木」と産業デザイン工芸木工

北欧住宅家具デザインのオーソドックス・スエーデンモデル 「MÖBLER」1968 Gセレクション1000総覧 家具デザインベストブック- 04

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

 スエーデン家具グッドデザインセレクション1,000    MÖBLER 1968

デザイナー作品を主力にして輸出用にデザイン開発してマーケット先導していたデンマーク家具産業にくらべ隣国スエーデンでは、個性的なデザインを売る作品より、実用的な住宅向け近代デザイン家具の普及、品質向上をめざしていた時代のムーブメントです。

「家具の選び方アドバイス」「家具の品質表示」に続いてグッドデザインセレクションを刊行、家具品質試験や仕様・寸法ISO規格など スエーデン家具工業試験場の研究成果も反映されてガイドブック教本となり、主要な意匠作品記録、設計資料・著作物としても注目されます。

自然素材・手仕事が反映した工場製品でもインダストリアルアート・クラフツと見なしていた時代に、スエーデンアートクラフツ協会の産業文化振興から、総集・選定出版された貴重なデザインブックです。北欧家具産業の中でも、輸出用のファッショナブルな造形や話題性は求めない、むしろ普遍的・規範的なユニバーサルデザインを志向していました。中身を想像できない常識を離れたユニークなカバーデザイン。一般消費者向けの理解し易いコンテンツです。

MÖBLER 家具

SVENSAKA SLÖJDFÖRENINGEN  1968
スエーデンアートクラフツ協会    発行

Appelbergs Boktryckeri AB, Uppsala  1968 印刷

300 x 170 x 13mmT  p.226   Pris25:

スエーデン国内メーカー98社掲載

15,000の製品モデルから1,000点を選定

家具の知識と解説、選定モデル写真、製品ネーミング、寸法、材質、価格、デザイナー、製造販売メーカを記載。機能性、造形的要素、制作技術品質、商品力など優れた製品としてユーザーに推奨。

MÖBELINSTITUTET   The Swedish Furniture Research Institute, Stockholm
スエーデン家具研究所の刊行物「Möbelråd 」家具アドバイス「Möbelfakta 」家具品質表示規格等 の内容を反映しています。19810512 ISO TC-136 AQ

内容                                p.

Inledning  前書き        3

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Innehåll   目次  4

Pallar  スツール        5

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Stolar  イス         7

Karmstolar  アームチェア        11

Vilstolar リクライニング・安楽イス        12

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Bänkar och soffor ベンチソファ         18

 

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Bäddbara soffor och bäddsoffor ソファベット        22

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Sänger    ベット       24

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Låga bord   低いテーブル        33

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Mat – och arbetsbord   食事・作業テーブル 36

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Förvaringsmöbler  収納家具         43
Barnmöbler  子供の家具       32, 49
Något om träslag   樹種について         50
Bildavsnitt   製品事例       53

カテゴリー別選定数

スツール 24

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小イス 104

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アームチェアー 72 + イス張りクッション付き 84

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安楽イス・リクライニング  51

ベンチソファ 107

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ソファベッド/ベット 81
二段ベット 11
折りたたみベッド 3

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小テーブル・ワゴン・ベンチ 131

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食事テーブル 74

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デスク 10

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棚・収納家具 95

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子供用家具 28
Fabrikanter 製造社名  224

画像掲載979

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家具製品のネーミング・ブランド1968 デザイナー・メーカー別リスト

 

Børge Mogensen, Hans Wegener, Carl Malmsten、IKEA 各デザイナー・メーカー別の作品選定実例から、デザイン評価の傾向や観点を知ることができます。
家具製造販売からみると、ネーミング・商標ブランドやデザインイメージが製造物のウエイトを超え、実際の販売ビジネスを押し上げるマーケティング戦略へと結びついていくプロセスの始まりと見えます。現在では、「クオリティ」「耐久性能・安全な作り」より、イメージとフィーリングやセンスが重視され、手が届く低価格が購入マインドになりました。

代表的デザイナー作品例クローズアップ

① Børge Mogensen Design +ABKarl Anderson & Söner
ソリッド材・ブナ・パイン・オーク・チーク、木地クリアー塗装  工場生産に「Workshop method 工房手法」を併用した「Social Furniture Program 」ソーシャル家具プログラム を展開。
ABKarl Anderson & Söner社は、優れたデザインをベースに、真面目な品質の高い堅実な製品を作り続けています。デンマークが生んだ最優秀家具デザインナーが手掛けた作品は、現在も続くロングセラー。ブランドネーミングは、シリーズ名「Asserbo 」都市名と「Öresund 」サウンド・海峡 二つのみ。デザイン選定 23点 デザイナーは、キャビネットメーカー職人資格を持ち建築家としても活動、実用秀作を多く残した FDB Fællesforeningen for Danmarks Brugsforeninger デンマーク生活協同組合連合会 1942 -1950 ヘッド ザイナー。壁面収納ユニット・パーツ構成家具デザインが開発されたドイツ国内ですっかり姿が消えた後も生産されているのですから「タイムレスデザイン」と呼ばれる秀作となりました。

② Carl Malmsten
針葉樹・Birch・ブナ等地物材  ストックホルムの伝統職人手仕事スタイルを持続 クラシックモデルが多くスエーデンククラフツの代表的作品
二番目に多いデザインセレクト38点  量産工業デザインへシフトはせず、ハンドワーク工芸作品を制作。製品ネーミングは、国内の名馴染みの深い愛称・地名等、民族生活文化のイメージを使う。情感的でクラシックな雰囲気を装うものが多い。後継者育成学校を運営。

③ IKEA Design
ローコストシンプル  松・樺材・合板ボードを多用。持ち帰りCash & Carry KD組み立て構造 国内・輸出向け低価格・量産モデル ペイント塗装仕上げ多い。畳める板状フラット形状を主体にしている。最も多いデザインセレクト66点
インダストリアルデザイン・カジュアル家具 ネーミング・ブランド戦略は、愛称・海外地名などポピュラーな商標をつけて商品イメージを強化する販売手法で直営販路拡大。他社に先駆け、北欧デザインインテリアイメージを演出し、現在は、低価格家庭用グローバル商品へと拡大、世界最大規模の家具産業となっています。当初のころからの製品ラインも継続販売。

デザインによる差別化が働く時代の始まり

マテリアル・加工機械・刃物・刃物。接着剤・塗装・金具が同じ業界で共通しているので、どこで違いを出すのか。基本形があるので樹種、面取り・表面仕上げの違いで商品を工夫、結果として有為差が少なく際立つこともない。同じ業界内部の交流があるので 見本市では、各社一同に展示されるので、雰囲気やデザイン傾向を比較し参考にすることが起きる。家具の構造基本型パターンは、ほとんど出尽くしていますから、隙間の形やコンビネーションにより新作を手掛けることになります。歴史的に観ると、戦争や天変地、新素材開発、テクノロジーイノベーションが起こると、家具デザインは大きく変わってきました。

デザインプラットホームとして価値あるリソース

敗戦後の復興期に家具産業は、勝利した国は先に、敗戦国でも後から生産拡大振興が起きました。いわゆる復興成長期を迎え、新しい製造技術はデザインニーズを喚起し、各国の工業試験場が品質技術の基礎研究をリード。家具メーカーは独自の商品開発を進めます。産業界全体を支え、基盤となる工業規格の構築や研究成果を共有・推進する時期がありましたが、デザインソリューションに役立ち、デザインを育む土壌となるプラットホームとして整えることが重要な作業となりました。一方では、種・ネタ情報は欲しがり、自園畑の外には手を貸さない国内の家具製造業は衰亡し、実際に牽引していくものを見失ったのです。即効性のある技術導入やデザイン指導というやり方は、切り花で根がついていませんでした。

「デザインは著作物」という新しい評価・知的財産権が動き出す

デザイン作品は「著作物」知的資産・公知として記録され、無断利用・模倣が出来ない。
コンペティション・個展・見本市の他、セレクションも公的に評価・認知されたクリエイター作品として認識されるようになりました。著作権は、歿後70年まで。
著作物として意匠権(特許20年間)に加え、著作権としても法制化される新しい動きが出ています。
実際の展示公開記録、印刷物、報道など認証できる関連資料も備えることが必要ですが、創作と平行して既存事例をチェックしないと類似、転用とみなされ権利侵害に問われます。偶然似ているとか、少し変えればクリアーできるという杜撰な認識では立ち行かない。先行事例・類似を徹底的に調べるのが必須となりました。ブローヒャー・作品集・ガイドブック類も印刷媒体はツキモノ。古い資料、アーカイブスもバックアップ・検索対象となります。
アートクラフツ分野でも、オリジナリティーを補強するために、非類似立証ワークが必要になる方向に進んできました。デザインルーツの確認も時系列で判明するようになりました。デザインが商品力を牽引する熾烈なビジネス環境が迫り来ると感じます。

公的なデザイン作品記録重要資料・産業文化遺産として

デザイン記録資料は、先人の知的資産であり、メーカーの製造販売権、意匠権・著作権に重要なビジネスリソースとなっています。デザイン創作と平行して既存事例を十分に把握しないと、剽窃、パクリ・写しコピーととられかねません。歴史上、家具類の作例は非常に多く、生活用品・道具は世界共通ですから「既視感のないもの」を創り出すことが難しい時代になりました。可能な限り、各国のデザイン関連資料を集積しています。

*この本は、ストックホルム図書館蔵 閲覧可能です。日本国内では,1969 年日本橋東光堂書店が20冊輸入販売 ¥2,680-。当時、デザイン事務所やデザイン美術系大学へ納入されています。

ⓒ 2016 , Kurayuki, ABE

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木の総合学研究 2016 –  2019  「北欧スエーデン家具Gデザインセレクション」「木製家具とアートクラフツ・インダストリアルデザイン」「スエーデン住宅用ファーニチャーデザイン」

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