ハンドツールコネクション工具・刃物木工

巨匠 James Krenov も作品制作に使った「和風鋸身こそげ薄手スクレッパー」実用化メモリ1984 – 1993  ハンドツールコネクション-10

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

新しい改良刃物は、発祥地現場で支持されないと使い手は限られ、品質性能が優れていても感覚的にマッチしないと広まらず、継続して売れません。鍛造伝統手打ち鋸産地の職人が実用化した「和風スクレッパー」は、日本では知られずに幻の工具となりました。微妙な部分の表面極薄削り、修複・汚れ塗膜剥がし等に便利なコンパクトハンドツール。

新しい腰のある薄手スクレッパーの開発・製品化1984

本場の西洋スクレーパーは、0.6 – 0.8 mm厚の鋼板です。メーカー・職種により、いろいろな形状があります。分厚い鋼材で鉋の代用にもなる切削刃物ですが、薄く削れるしなやかな鋸身技術を応用した改良スクレーパーがアメリカ人Robert 氏から製造依頼を受け、諏訪鋸メーカーで数年間制作されました。日本人の繊細な刃物品質は、従来のものに比べ微細デリケートな切削屑がでる新刃物の趣。この和風ささげ削り・こすり削ぎ板刃は、塗装面の修複、材表面の極薄削り出しに優れ、重宝なものですので実物サンプルを紹介し、修複・洗い屋・漆塗などの応用に可能性がありそうですから復活製作したいと思います。日本刃物は、新しい使い方やイノベーションの可能性があります。堅木のナデ具合調子はピカイチ。

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*オリジナル極上手打ち ドラゴン印スクレッパー   真道鋸製作所 1984 -1993

鍛造手打ちスクレーパー製作 アメリカ人ロバート氏の発注、4種・Ryuブランドで輸出 1984 -1989
大 70 x110 x 0.4 mmT @ 800-      70 x 150 x 0.65 mmT   @ 1,000-
中 80 x 80 x 0.4mmT    @700-
小 50 x 85 x 0.25mmT   @ 500-
(0.45、 0.65mmT も制作)

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Wood Work Summit / AQデザイン特注型 1992

両刃鋸身の制作工程と同じですが、焼き入れ温度、冷ましが微妙に違う。
Type A. 50mm x 80mm x 0.4mmT @ 500-
Type B. 80mm x 80mm x 0.4mmT @ 900-
Type C. 70mm x 100mm x 0.4mmT @ 1,050-
Type D. 70mm x 80mm x 0.4mmT @750-

裁ち切りのままでは、ただのへライン鉄板に見えるので、ブランドマークをつけました。
個装パッケージデザインはなく、バラ売りではクオリティイメージを損ねます。手間に見合う価格ではありませぬ。
購入後は数年間はリピートオーダーはなく、あれば便利で収益の少ない補完的商品ですから、数量の販売は難しい。知名度が重要です。(価格は製造下代)
私は、自分で使う分の他に、CR College of the Redwoods CA / Fine Wood workinng Program用に受注して35枚送りました。僅かにしなり、曲りをつけられますので表面粗さを調整できる局所部分に有効。通常のスクレーパーは、平面精度を出すため、通直で曲げられない硬度です。

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両刃鋸の製造工程 ( 成形・油焼き入れ・木板冷まし、鋸身切削研磨、目立て・歪取り)

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製造:有限会社 真道鋸製作所 長野県諏訪郡原村(現在は廃業しています)930206AQ

こそげ削りの実際

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斧ヨキの樫柄装着に「ヒツ差し」嵌合度調整に便利、塗装面の下地調整、塗膜の剥離にも至便です。

手打ち鋸制作技術を活かした新しいスクレーパー刃物の開発から困難な輸出直販後の不作為

楽器メーカー以外の国内の家具木工では、この刃物は使いません。アメリカ向け販売は長続きはしませんでした。
商品単位が小さく、両刃鋸にくらべ付加価値性が低いだけでなく、志向地のクラフトマンが刃物の使い手が薄手のしなりを使いこなせなっかったことも工具の著しい特長が伝えにくく、個人販売では拡がりが限られたといいます。流通するには、試供品サンプルの国内PR、代理店などのルート販売が必要でした。ベテラン造り手は、おしなべて製品の装いや商事販売に長けていません。

主力本業の伝統手鋸産地の衰退

伝統的に制作していた片刃鋸は、昭和40年頃に両刃鋸に切り替え、研磨などの主工程は機械加工へ。量産方式でも目立て・歪取りなどは手仕上げです。他産地でも量産化が進み、過当競争に陥り、更に替え刃が登場しすると製品価格は従来の半額となりまし。電動工具の普及で、さらに手鋸や手工具の需要が減少。量産鋸が広まり、目立て職も立ち行かない時代になり、こうして鍛造手打ち鋸は消滅しました。

良い品質を誇り、担ぎ屋さんにの販路で岐阜・長野地域で販売。産地ブランドをつくらないでいたため知名度がなく、他の地方へも問屋流通制度ではばまれ、販売ルートがなく転廃業に至りました。量産自動化とデザイン開発、ブランドイメージや現代の流通機構変化に対応出来ない伝統地場産業は翻弄され、ハンドメイド両刃鋸技能は衰亡してしまいました。

同時期の通販 欧米のスタンダード製品例

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CLIFTON SCRAPER  0.8mmT  England
・Rectangular for Flat Surfaces
・Convex/Concave for Round and Grooves
・Gooseneck for Awkard Curves

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SANDVIK 475   Stockholm   Sweden
150 – 62 – 0.80 エッジコーティング (0.6 -/0.8mmT)

刃先研磨には、平鑢油目、ダイヤモンド鑢でエッジを直角にし、Scraper Burnisherでかえりを出し刃をつけます。

*穴山信州鋸の記憶・資料

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S:家具産業 1968年 一月号 「新春カメラ・ルポ=のこぎりの古里 穴山をたずねて」
この他、信州鋸山地穴山の産地調査では、千葉大学工学部工業意匠学科で発表された研究資料があります。

ⓒ2016 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2016 「手打ち極上スクレーパー」「鋸制作技術の転用・薄切削刃新用途」

 

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