MT マテリアルトリートメント木の内科木工

木の内部変化は、まだ未知の世界。「木の内科」から、はじめてわかる樹木の本質と実相。

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

樹木辞典等では、葉・花・実・幹の外観・外部が主体。生体としての内部はほとんど解りません。学説・教科では同じように説明しますが、実際は樹種や土壌・地形で違う。伐らねば解らないだけでなく、大木は高価な上、大型重量生物を切り分けるには大変な労力と設備が伴うので、研究領域から外して来ました。地表に立つ樹体の「木の内科」は、まだ無い科なのです

 木の研究では、外観写真やイラスト、細胞組織、製材・乾燥後の木目、材料的な扱いがほとんどでした。生木の内部を観るには、木を伐採時にカットして、木口・板目・柾目・節部・根元などを現場記録することはありません。現地伐採から製材場所まで搬送してから撮影すると、既に数日間は経ち、木材市場へ出ると一月以上になります。
更に、落札してから業者をへてサンプルを作成するには、だいぶ時間が経っており、生木からの素材は2-3週間は、毎日観ていないと、どんどん変化しているので、立木、及び、伐採直後とは違うのです。樹種ごとに木口に現れる組織の動きは差違があり、出会った個体を逐一記録することから「木の内科」が始まります。外観外科的な分類・観察記録や細胞学の他に、新しい研究領域が見えてきました。

「木を読む」から「内部経時変化を記録する」

外観から木材の性質や内部木目を判断する「木を読む」という経験に基づく見当は、ベテランでも難しい仕事でした。物性・材料的な善し悪しの判断です。マグロの仲買人が尾の切り口で魚肉を鑑定するように、木口は、内部組織・性質をチェックできる部位。伐採から製材・乾燥、木取りまで連続追跡記録・知見を集積することにより、今まで気が付かない木の性質がさらに明らかになります。
 色の変化は化学部質成分の動きとしてみることができます。また、材質の特長も従来の文献とは、だいぶ異なるので、産地現場から実物を手に入れて、研究サンプルとして実際にカット・微細観察作業を続けることが従来の研究を補完できます。大型Scan/PET 装置が出来れば、丸ごと非破壊検査・観察が可能ですが。 今は、巡り合わせに左右され、手間と時間のかかる体力仕事です。
木之子ならば、採取直後にカットできます。樹体は大きく重量物、切るにも大変な労力がかかり、下敷きになる危険も。現在、標本学も引き出しに収納できるカットサイズで、全体は保管出来ません。シードバンク、植物標本は管理できる範囲の静的・永続的なストックで、経時変化のダイナミズムは除外されています。木の変化を連続して捉えることは、カビ付き・乾燥終局まで続行、「き」の遠くなる長い行程です。
今朝は、オオツガタケ沢山でてきましたので、部位カット。ツートンカラーの清潔な固く締まったボディ内部でした。高貴な香り成分は、不明。
生の生物学的時間、乾燥からの材料的時間の連続的なリアル「木の内科研究:Wood Internal Study」「Wood Insight」は、これから始まります。

© 2013, Kurayuki , Abe

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木の総合学研究 2013 – 2019「木の内科はじまり」

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