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鬼ぐるみの銃弾射創ダメージ_被弾傷は広がり、樹体内で消えない 「木の内科」 -1
阿部蔵之|木とジョイントの専門家
ハンターの樹木射創は「つきもの」。外れ弾は、百年後にまでダメージが見えない弾痕の傷痍を残す。製材職・木工家を泣かせている。
サンプル用丸太を製材をしていると、たまに散弾銃やライフルの弾丸が撃ち込まれて傷になっている部分にぶつかる。いわゆる銃創です。弾丸以外にも釘・ボルトでバンドソーの刃が当たり、刃こぼれしてお釈迦になることがあります。アメリカ産のブラックウォルナットでは、ライフル射撃の試し撃ちにされたことが多く、何度か傷ついた材をみました。時間挽き仕事をしているので製材所は怒り、木工家はがっくりです。
市場に出品される素材は、現在では金属探知器で検査されているようですが、ハンターがいる限り、樹木の射創はつきまといます。弾丸は貫通せず木の中に入り、木目の一番大事な当たりに。樹皮外部からは判りませんので、長さを切り分けた際に、木口年輪の一部に組織色変化がでることもありますが、挽き材前に現場検査することは、ほとんど不可能。高価な良質材がダメージを受けると使い物にならず、木材は、専門家でも商品リスクが高く、品質判断が難しい世界です。
オニグルミ ライフル弾銃創
元木の木口面に銃弾痕形変色(鉄分)、周辺部色素集積(木取り: 工房ブレス 須藤崇史 2010)
製材加工は、角材や板材をとるため繊維方向にカットしますので、弾痕は創傷を包み込むような形で現れ、木の内部組織が自ら癒やす物質を出してガード、取り囲んだ内出血変色部ができます。木の内部瘡蓋です。
丸太切りで木口に弾痕を見つけるのは、数万本に一本あるか、ないか。
写真・上は、近くの県有林道路際の支障木伐採時の鬼ぐるみ(30年生)です。薪作り時にチェーンソーで玉切り作業中、偶然に散弾痕部に当たりました。鉛玉が平たく変形し、そこから年輪に沿って組織が腐り・変色が拡がっています。鉛散弾は、鳥獣食物連鎖で猛禽類や小獣にはいり、中毒を引き起こして、自然保護の問題になってきたのですが、樹の散弾銃痕の写真公開記録はないので、得がたい「樹の内科」傷つき標本にしました。
ハンターに聞くと、水平撃ちは禁止され、鹿・イノシシを射撃するのは、谷から駆け上がる方向で撃つと。毎年、人にもシカト当たり。外れれば樹内や地面に残るため、県林政部のハンター狩猟目的税は、有害獣駆除と同時に森林樹木ダメージを残すことに。射創と同じく、人里の大木には、五寸釘やコーチボルトが打ち込まれていることも多いのです。木材市場では、ダメージリスク・伐採場所・伐期情報がありません。
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木の総合学研究 2013 – 2019「木の内科 – 銃弾痕のダメージ受創」
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