「木」と産業「木」の皮膚科伝統文化工芸日本の自然色木工自然の造形

樺細工作家 菅原政光の卓越作品_伝統外的工芸品の美質を放つ孤高の異才は早逝し、アウトサイダー傍系が示唆する品位と樹皮の美装は見事でした。

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

自然木の樹皮から美質を弾き出す造形センスは、エレガントで、粋で風雅味わいを賞揚する手仕事の究極にあります。樹皮・膠の生物素材の相性なじみは絶妙。人間が手を加えられない生物素材の美麗なテクスチャーは得がたく、侘びさびや幽玄数寄の趣もある、厳しい木の時間造形そのもの。樹皮を愛で、工芸美術にする木の文化圏の逸品です。

 伝統的工芸界では、アウトサイダーの新しい才能が活躍できるステージは限られ、既存からは無視排除のバイヤスがかかります。皮肉にも、先達にこび囚われず、売れ筋を意識せず、集派に帰属しないゆえに、珠玉のエッセンスを見出し引き寄せる。本流の商工系譜から離れ、しがらみがなく完成度の高い作品を追求していた早逝の工芸家が放つ、オーセンティックな美質をクローズアップ。

ⓒ2017 , Kurayuki Abe      All Rights Reserved.  No Curation and No Business Uses.

孤高の樺(山桜樹皮)細工制作家 菅原政光   菅原工房 宮城県栗原市金成沢辺字西大寺

樺細工角館では、組合で内部統制しているので制作法や情報を外部へ出さない。伝承館で伝統工芸士栗樔氏には手ほどきを受けるももの、修行したくても外部者は受け入れないので、やむなく自力独学で制作を始める。履歴不詳

作品は緻密で丁寧な造りでしたから評判は良く、工芸店で販売しました。

■主な作品:茶筒・抹茶入れ・香合・筆筒・箸入れ・眼鏡立・印鑑薬入れ・名刺入れ等

2009年(平成17年) 第六回倉敷民藝館賞者に名前があります。優れた若手として嘱望されはじめた頃。この年、9月24日に工房を訪問。直接、材料から加工まで樺細工について伺うことが出来ました。素材を厳選し、妥協しない几帳面な性格でしたので作品は洗練されていきました。

詳しい経歴は分かりませんが、この樺細工を始める前はレストラン調理師をしており、20代後半で転向。お会いした当時、37歳でしたか。この時、既に体調は優れず、闘病生活で数年後に逝去。クラフツフェアへの出展参加もかないませんでした。訪問では仕事の一部始終エッセンスを語っていただいたので、メモ書きとともに伝えます。追悼合掌

■作品  箸入れ    山桜樹皮(最上びびり皮、微細縮み皺入り)

242(243)L mm x 20 – 27mm  筒内径:11.5 – 19mm   長円筒小判形 38g – 40g   19951026  平成7年  蓋嵌合は滑らかで密着エクセレント、懐中小刀の拵えに似ています。桜樹皮は、許可を得た釜石地方大槌町国有林からの採取でした。

 抹茶筒  (最上びびり皮)

径 66,5 x 75 mmH    67g    1995年 平成7年 樹趣は茶人向け

*自然光で樹皮の趣は変化します。作品販売はギャラリーに掲載しています。

伝統技能を持続し固め増強しょうとする地場ベクトルは、逆に利益を守り、技法ノウハウを外部に見せない遮断がはたらき、基軸は閉鎖的にシフトするので、あぶない新外来の才能をはねつけるようになります。ひしめく商圏に入り込める余地もなく、部外者には厳しい制約がたちはだかる。リスクや攪乱を排除するため様々な統制、逆噴射が起きるのは当たり前。既得安定を守り、逸脱を抑圧する環境では、時代をブレークするような新鮮な創作アイデアを希求するのは背反します。枝葉傍系が育たず、無視と排除を続け、新しい才能を呼び込めず、「皮肉」にもつかないものが「伝統の的」なのです。

 専問技能の世界では、長い時間を経て到達したもの個有の次世代を牽引する作品の芽は内包されていて、ユズリハのように芽吹き新生するのが健全で望ましいのですが、いつしか池の水は溜まり濁ります。モノつくり流行の世界では、年中、凌ぎを削る競争が続いているので、売れ筋の類形化が起き、マンネリ・商品の陳腐化が繰りかえされてきました。

外部ブレーンの知識やセンスがまさり、世代交代が揺らぎかねないところで、ようやく気がつき問題意識が生まれるも、新参ツブシによる世代間ギャップは拡がります。突出した才能は抑えこむ産地の呪縛、枯渇する天然資源、デザイン手法のアプリ化と需要のダウンサイジングの複合連鎖では、振興活性化デザインオペレーションはお手上げになります。

立ち枯れた深山桜の樹皮20170107ABE

 自然材料の永い持続、制作技能の相伝はもとより、オーセンティック(正真性)オリジナリティー(独自性)の補強、販売収益と次世代の育成、類似品のガードと同時に創造力のある新しい才能をいかに呼び込み引き上げるかが問われます。歴史をみれば、工芸品の伝統と流行は職人の手仕事から生まれてきました。地上の生命の美質は森林伐採が進み被圧されてしまい、樹木界野生の逸材も絶滅危惧種になり、危ういところに来ています。

ⓒ2017 , Kurayuki Abe
All Rights Reserved. No Business Uses.

複製・変形・模造・転載作り変え・画像転用・ロボット、Ai無用、業務利用を禁じます。

木の総合学研究 2017 – 2019「樺細工樹皮工芸」「中子経木成形と樹皮膠鏝貼り仕上げ」「Traditional Mountain Cherry Bark Crafts」「茶道具」

▼ お気軽に一言コメントをどうぞ

次の記事: