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Prize Designs for Modern Furniture MoMA 1948 – 1950 アートからインダストリアルデザインへのシフト 家具デザインベストブック-6

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

ニューヨーク近代美術館モダンアートのカテゴリー拡大や主導するアクションプログラムは、ファインアート作品のキュレーションからシフト。オブジェや家具、プロダクトデザインやビジュアルデザインの美質追求にも拡がりました。アートとデザインの境界が溶融したのです。

 絵画以外の彫刻・オブジェ・ファーニチャー・テキスタイル・グラフィックス、プロダクトデザインも収蔵対象となっています。1948年ニューヨーク近代美術館主催の International Competition for Low-Cost Furniture Designコンペティションが行われ、入選作品の多くは、実際に製品化されます。デザイン界にガイドポストとして大きなインパクトを与えてきました。以来、MoMAでは絵画の他、「Objects and Furniture 」のカテゴリーがモダーンアートの主要なコレクションになっています。

 第二次世界大戦、太平洋戦争の後の戦勝国では、武器戦闘物質生産から経済発展に伴う生活用具・アートクラフツ産業へのシフトが始まります。ニューヨーク近代美術館のこのプロジェクトでは、産業振興に結びつくニューデザイン、ローコストファニチャーのIndustriali Design フルーツは、Harmann Miller社やKnoll International社の業績を伸ばし、デザイナーを数多く輩出します。モダーンファニチャーデザインが大きく発展するイニシエーションとなり、モダン家具デザイン開発ムーブメントにも大きな影響を残しました。

平和な時代になると、戦争軍需技術革新がそのまま転用され、民生機器や家財に使われるという古代からつづく産業史の本質です。

 

「Prize Designs for Modern Furniture 」

from the International Competition for Low-Cost Furniture Design .

by  Edgar Kaufman, Jr.

THE MUSEUM OF MODERN ART NEW YORK 1950

Contennts

6  NEW DESIGN FOR LOW-COST FURNiTURE

8  INTERNATIONAL COMPETITION FOR LOW-COST FURNITURE DESIGN

FIRST PRIZE, SEATING UNITS

13 Don R,Knorr

16  Georg Leowald

SECOND PRIZE, SEATING UNITS

19  Charles Eames, and the University of California, Los AngelesCampus

24  Davis J.Pratt

 

THIRD PRIZE SEATING UNITS

26  Alexy Brodovitch

HONORABLE MENTION, SEATING UNITS

32  ohn B. McMorran, Jr.and John O.Merril,Jr.

FIRST PRITS, STORAGE UNITS

34  Robin Day and Clive Latimer

HORNABLE MENTION,STORAGE UNITS

42  Ernest Race

DESIGN RESEARCH TEAM ENTRIES

44  Robert E. Lewis,James L.Prestini, and Armour Research Foundation

48  Donald A. Wallance, and Midwest Research Institute; Yale School of Forestry

49  Carl Koch, and Massachusetts Institute of Technology

53  Harry M.Weese, and Armour Research Foundation

56  Marcel Breuer, and U.S.Forest Products Laboratory

Chair Designed by Charles Eames, Venice , California

Institute of Design

OTHER ENTRIES

58 – 75

76  BIOGRAPHIES  OF THE RIZE- WINNING DESIGNERS

 このコンペは、世界のモダンデザインを長く牽引する事につながりましたが、個人ワークを凌いでUniversity of California、, Research Institute、 Research Foundation、Forest Products Laboratory の大学・研究開発機関からのチームアプローチに注目が集まりました。 Yale School of ForestryやForest Products Laboratory のような森林環境、木材資源分野からも参画していることがわかります。

デザインコンペは、ローコストデザインアイデアがテーマですが、産業界では逆に高品質・高級家具耐久消費材へと変貌していきます。家具デザイン開発に関する資料では、ドローイングや一般図書の刊行は少なく、各企業のカタログ・セールスマニアル、プレゼン設計用マテリアルが実際のデザインマテリアルになります。コンペの記録本は実務のみならず、専問教育資料としても貴重で一級のものです。(家具デザインの図書は、著名作品集が刊行されていますが、カタログ以外の現場のいろいろな販売グッズやセールスマテリアルは廃棄され、研究者やコレクターでも入手が難しい。)

バウハウスの流れを汲み、入賞作品はNew Industrial Artsの造形作品として、美しく機能的なオフイス・家庭用家具が生まれ、デザインファーニチャーの発展期を迎えました。建築家やインダスリアルデザイナーによる創作は、その後のデンマーク北欧家具、イタリアンモダーンへと展開していきます。

 成形合板技術やFRPによるシェル構造はもとより、入選作品のSEATING UNITSプレゼンパネルにある「Testing for Comfort 」研究装置が目を引きます。学生時代の研究室で手掛けていた椅子座面体分布厚の研究 Human Engineering 「Ergonomics」(人間工学の源緒研究)、収納システム家具やKD ノックダウン構造ジョイント化のアイデアが、既にアメリカではじまっていたことを知りました。

 このデザインコンペは、戦時軍需産業の技術成果から民生用として転用され、新素材FRPや成形合板やジョイントシステムの開発、量産テクノロジーのブレークスルーにもつながりました。

ハーマンミラー社の成功のように、大にして、コンペで次席や佳作の作品がブレークします。今後は、画期的な新素材技術が現れるまでは、センチュリーモダーンとしてノスタルジーとともに、修複や復刻レプリカが増えてくると推測します。

MoMAコンペプレゼンEames 記録資料 / Exhibition catalog 及び成形量産ファニチャーデザイン作品

 

「Eames design   The work of the office and RayEames    John Neuhart  Marilin Neuhart  Ray Eames 1989」

Appendix I Chronology :The Work of the Office of Charles and Ray Eames 1941-1978

Edited by Charles Miers     p.465    227 x 300 x 31T mm   Harry N. Abrams Inc., Publishers, New York

 ISBN 0 – 8109 – 0879 – 4

 

Knoll Design   by Eric Larrabee and Massimo Vignelli 1981 ( Larrabee,Eric,1922-)

p.307   300 x 306 x 32T mm   Harry N. Abrams Inc., Publishers, New York

ISBN 0 – 8109 – 0907 – 3

家具のデザイン資料

 一流家具メーカーの生産販売現場で使われた写真・図面・カタログ類、販売プロモーション、広告宣伝まで総集されており、実際のデザインワークの全貌を知ることができます。家具デザインのノウハウを学ぶにはベスト資料でした。

家具を彫刻やオブジェ、アートと観る西欧美術界のキュレーションや修複保存とは対照的に、国内の雑貨・荒物カテゴリーに扱う文化の違いは歴然です。Arts and Architecture やMøbel Arkitekten (Denmark 家具設計家)Innenarchitektur( Germany 室内建築)のように格が高い職能としていますが、日本では室内装飾、家具建具屋職人造作イメージとなります。

 上層階級の家財とは別に庶民生活の家具や造形品の歴史は、高度成長期の応接セットやダイニングキッチンの団地モデルから始まります。桐和箪笥の削り直しは僅かに残りますが、古い伝世品を修複して使い、受け継ぐことはしませんでした。近年、アンチーク回顧ブームが起きていますが、和家具優品は既に国外へ流出しています。

ⓒ2017 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2017 「木と修複・保存」「成形合板技術・KD システムファニチャーのデザイン開発」「コンペプレゼンテーション」「Moulded Plywood Furniture and Knock Down」「Assembly and Joint System」「軍事兵器技術の民生活用」

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