MT マテリアルトリートメントジョイントシステム木工産業イノベーション

Wood Bank 1998「木」の銀行 / 福島オペレーション-1.

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

Wood Banking : ウッドバンキングサービス業務を新開発、山直・木材産業のイノベーション

会津地方は、深い山里が連なり、大木を産出してきた木の国。森林資源が枯渇するにともない、原木伐採・搬出、製材から加工・販売まで業務を統合し産業構造の変化に対応しています。都会・町場では、地価高騰や環境問題で木材乾燥・ストックが次第に難しくなり、建築工務店、加工工場や工房が資材置き場をもてない現状。同時に、山里では労動力・仕事量の減少が起きています。

この両者のどのように魅力的に結び付け、多くのメリットを付与できるか。木と人のベストコネクション、グッドマッチングから「木」の価値を最大限に引き出すことが実現できれば、新しい出会い、新規物流が生まれ、ビジネスセンスも会得できます。

次世代の「木」の産業を考えると、加工・販売プロセスが一過性でなく、次工程を誘接し、何度も付随したワークを要請されて累積してお金になるマネージメントを創り出すことが望まれます。そのマルチソリューションとして、カット製材工場の業務に「ウッドバンクサービス」を新しいステージへ導く方策としてプランニングしました。繋ぎ結び付けるジョイントシステムからの戦略的発想です。

私のアイデアは、そのころ「精子バンク」や「高級毛皮のケアー付き保管サービス」、「蔵書本の預かり管理、随時宅配デリバリーサービス」が現れ、優良商材のストックビジネスやメンテナンスと保管の組み合わせが材料加工のハード面と預託トリートメントというソフト面に結びつく可能性を嗅ぎ取ったからです。ヒントは、何度も持続的なサービスを受けられ、ユーザーの労力・場所・経費負担をセービングできる利便性。都会をサポートする山里の力を有償実務に変えるための有効な手掛かりとなれば、自走出来ると判断しました。

原木伐採現場・製材見学イベントからマテリアルトリートメント、天乾シーズニング、プライベートストック、人工乾燥、材料管理、デリバリーまで一連の作業工程を引受けてユーザーのメリットを高め、リーズナブルな収益を重ねて得る仕組みを具体化しました。原木購入・製材したら、必ずやらなければならない後作業を取り込み、次工程までを自社の業務にできれば利益も増え、相互の依存関係も強化されます。

木を使う人は、貴重な材料のケアー、管理、保管がかなりの手間とスペースが必要であり、専門的な知見・基礎技術指導やアドバイスがあればユーザーは助かる。地価を考慮するとコスト面でも委託するほうが良い。製材直販で安く購入し、ベストコンディションで保管出来れば、建築工務店、内装工事業、家具工房、建築家、専門学校のほか、一般の人でも住宅建築材、家具材料手当・発注にも手を出せる等、利便性が高く潜在取引・販売ニーズの開拓が見込めました。また、山里に都市部の人が訪れることにより宿泊や飲食等、実際に地元経済波及効果が大きいのです。

WoodBank-2WoodBank-3

「預木」には、適正なトリートメント・管理がされれば素材を最大限に活用でき、材質を低下させないマテリアルサプライが実現、材料ケアー・加工アドバイスや専門知識を「利子」として受け取ることができます。必要な数量を引き出し、使用予定は変われば、リセールも可能。材料を寝かす場所と管理は、山里の力があれば、材料確保とストック、有効活用・使いこなしが実現します。金利よりも高く貴重な「マテリアルバリュー」を創出するのです。

ウッドバンクサービス業務は、区画貸し出しで多数のユーザーから預託され、樹皮付き材、耳白太付き、虫喰い材の混載で木喰い虫の移住が起きる可能性もあります。また、豪雪地帯ですから、雪かぶり・出水が懸念され、建屋の屋根むくり雨漏り、場所により、風雨吹き込み晒し等、課題が残りました。

建屋の構造・設備強化、樹種・カット材用途・仕様ごとの個別ケアーもこれからの課題に。クライアントの信頼性・評価は、時間がかかりますが、利用者同士の相互交流も触発されています。

この「ウッドバンク」システムは、新月伐採で新産業を起こしたErwin Thoma氏が講演で2003年に訪れた際に、「自分のところでも採用したいGアイデアだ」と高く評価。いかに、新しい発想でユーザーサイドの恩恵と業務の高収益を計るかが重要な「木」の産業オペレーションの目的です。

この新事業プランのほか、実物サンプルとテキストを組み合わせた「月刊木くばり」「ワークショップ手仕事講座」「自然木職人仕立て」などの派生業務も具体化して相乗効果を生みました。安定持続していれば毎日の繰り返しが続き、時代の変化が起きれば業務も反映して変わります。木材産業は、旧態のまま手をこまねいて衰亡減退してきましたが、新しい産業イメージと活路は、それぞれの現場や足元にあると。

所在地は南会津町舘岩 有限会社小椋木材(株式会社オグラ)、1997年4月提案から、1998年 試行操業を経て現在まで15年間、一定量の更新・新規受注を継続しています。業務ノウハウは、まだ細部改善の余地あり、脱皮途中ですが。
( デザイン開発業務:AQデザイン開発研究所 阿部藏之、Wood Bankサイン:デザイン・制作は、守谷知洋 2001年)

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木の総合学研究 2013- 2019 「木材産業のデザインイノベーション」「マテリアルトリートメントとウッドバンク」

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