「木」と芸術ジョイントシステムハンドツールコネクション修複・保存

特別講座「木と修複・保存」MoMA Conservatorレクチャー後のワークショップ見学訪問-1  保存額装の実際シークレットワーク  上田市立美術館・工藤保存額装工房

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

レクチャー翌日からの講師同行の工房訪問見学は、専問家の共感を増幅し、はたして実質上のレクチャー続きとなりました。現場訪問・取材イクスカーション 5月28日 ~ 29日

①保存桐箱制作 渡邉木工所(大正期から三代続く桐箱装木工)上田市

❷上田市立美術館 学芸・展示係 収蔵絵画保存額装作品の実物ガイダンス 上田市

❸保存額装ワーク 工藤額装工房 Conservation Framing 実務の解説 作業ツール・機材の展示紹介 東御市

④藍染工房  浜 藍染工房 (明治から三代続く染色伝統工芸)松本市

⑤造形木工・陶芸  柏木工房(木工・陶芸制作家)旧美麻村(大町市)

オリジナルを損なわず、傷んだ部分を手直していくアート作品の修複保存には、作品に対する心からの敬意やいたわりが溢れて、くもりのない優しい目と誠実な手がふさわしい。

今回の特別講座受講者の中に絵画のConservation Framing 保存額装技術保持者工藤正明氏がおられたので、工房訪問の前に手掛けた作品を収蔵する美術館の裏方を訪ねて実物見学の貴重な時間をセットしていただきました。保存作業課程では、預かり品はシークレットですから外部へ見せることはできません。作品の画像は、版権・商業的バリューがあり、職務上の慎重な配慮が求められています。

上田市立美術館「所蔵絵画作品の保存額装実例ガイダンス プロの保存額装ワークと国際交流」

美術館収蔵作品の油絵・版画の保存額装の現物を開示していただくと同時に、制作した工藤氏から保存構造設計の重要性と基本的なアプローチについて解説をいただきました。

保存額装では処置の中心は額縁の裏側

作品にダメージや影響を与えない仕様設計は、素材の耐久性能を吟味するだけで無く、原画の動きや固定による二次負荷を軽減し、額装内微気象も察知して納まりを熟慮するそうです。表面ガードは、低反射・紫外線カット・帯電防止性能アクリル、裏面ガードは通気プロテクション・透視・緩衝材としてポリカーボネイト複層中空パネル、木部は、緻密でネジジョイント接合圧着硬度のある素材を使用。

ネジ固定には精密インサート・高品質ネジファスナーを併用、木部を損壊する木ネジ禁止表示を添付。後世の修複技術者への明快な手法メッセージを刻みます。細心の注意といたわりの環境が美術品を最良の状態に保つ、素晴らしい仕事にふれることができました。

作品の額装は様々で保存処置は作品毎の異なる。額装の裏面に慎重な保存装置が設置されて、大切な絵画の収蔵と展示が持続できる。保存作品をいたわり、画面素材・フレーム・バックにダメージを与えない、展示・点検・再補修を想定して控え目消極的な手当を施す。建築の納まりデティール設計に近い印象でした。

背面バックユニットを構成するアセンブルエレメントは、接着テープ類、ネジファスニングなどの巧みなジョイント機構設計から成り立ち、綿密なアーキテクチャーがつぎこまれています。

普段は見えない美術館の学芸バックヤードでは、作品に対する敬意と時空をこえる文化財への熱情が強く伝わります。このハイレベル専問家国際交流は、美術館の積極的で特別な配慮によるものです。(資料室にてレクチャー)

開示研修協力:上田市立美術館 UEDA CITY MUSEUM OF ART

サントミューゼ 学芸員 中村美子 (学芸・展示担当係長)Cooperation:Chief Curator  Ms.Yoshiko Nakamura

〒386 – 0025  長野県上田市天神3 – 15 – 15  TEL.0268 – 27 – 2300  FAX.0268 – 27 – 2310    nakamura-yoshiko@city.ueda.nagano.jp  www.santomyuze.com

続いて工藤保存額装工房・絵画保存額装の現場を訪ねる。

 

 

修複・保存用プロの道具用品・機材も紹介開示していただきました。全ての作品記録は整然として見事に記録ファイルされ、完璧な作業をクライアントが信頼し、安全で自然豊かな環境にあります。世界最先端の良質な素材を手配して、最上の仕事を納める極めてクリーンで機能的で魅力的なワークショップ内部を惜しみなく公開していただきました。アートを慈しみ、誠実でなければ出来ない仕事です。

保存額装に関するレポート・論文・著作・研究発表

・絵画修複報告 No.7  額縁の裏側  和田英作「マダム・シッテル像」の額縁を修復して (論文) 工藤額装工房 工藤正明 山領絵画修複工房2006   p.22 – p.25

「The verso of frame on the frame treatment for Madame Sitter」Notes on Yamarilyo Art Conservation Studio   KUDOU, Masaki

・絵画修複報告 No.8 「紙を支持体とする作品のための保存額装について」寄稿 p.22  The Conservation Framing for Drawing and Prints  山領絵画修複工房 2013  Notes on Yamarilyo Art Conservation Studio   p.22

・研究紀要 第23号 山梨県立美術館  「ジャン=フランソワ・ミレー「眠れるお針子」額装報告書 2011   工藤正明

Bulletin of Yamanashi Prefectural Museum of Art  No.23   Jean-François Millet. The Sleeping Seamstress : Framing Report    Masaaki  Kudou

・富弘美術館 収蔵・展示計画 収蔵と展示の間 2001 ~2005  工藤正明

・信濃デッサン館ニュース 「無言館収蔵庫”時の庫”建設を終えて」2000

・文化財保存修復学会 第34回大会研究発表 2012  草間彌生「INFINITY – NEXT WHXOTLO 2006」縦2m 横10mの大型木枠制作

工藤額装工房概要

 

 工藤額装工房 絵画保存研究室 工藤正明

Conservation Framing Architect  Mr.Masaaki Kudou

KUDOU Conservation Framing Studio  〒 389 – 0406  長野県東御市八重原3533 -527    TEL.0268 – 67 – 2983    FAX.0268 – 67 – 2974    E-mail : kcfs@ta3.so-net.ne.jp

※工藤額装工房の最新作は、クライアントの様々な要求に対応し、更に高度なオペレーションを進めており、制作責任上も継続してフォローされています。類似模造は無用にて。

※特別講座後の伝統工芸技術伝承工房訪問、取材イクスカーションレポは次編に続きます。

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木の総合学研究2017 「木と修複・保存」MoMA Conservation 特別講座  保存額装工房及び美術館訪問記録  AASCF : Art Archi-Scientific Conservation Framing    ACFA: Art Conservation Framing Architekt

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