「木」と産業「木」の道具・工具工芸

本藍染め伝統工芸技術を支えてきた染工具・出刃糊篦スキージ木部端の割れ多発 輸入物台桧木目材質の間違いが染色手仕事を追いつめる。本藍浜染工房ツールジャパンの現実

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

篦専問現職が居なくなり、木目の性質・使い方を考慮しない輸入品が、染色・織り物伝統工芸の手仕事を脅かす。海外依存にシフトしていくと技能の継承はゆらぎます。

 伝統染色工芸用糊置き(付け)出刃篦の角割れ。この2~3年で急に質が悪くなり、スキージ飴ゴムの割れ・曲がり、傷みが早くなりました。よく見ると、補強されている糸柾目の端は斜めに切れ、ネバリなく脆い。木部の柾目使いを板目使いにすれば解決しますが、良質材が少なくなり、加工手間が増え単価が上がって行き詰まるという事情は、需要が減ると更に加速します。

国内では篦専問工は消え、織り物「杼」もご高齢のベテラン職が一人となりました。本藍染め手仕事は、原材料素材・織りから染工具まで深刻な瀬戸際にあり大変です。

 最近の出刃篦は、藍染め工房の糊置き篦の口が傷み、割れ曲がり、すぐ使い物にならなくなる。原因は、台湾檜の糸柾目の木目木取り間違い。糊置き(つけ)は大豆糊のネバリが強く力仕事ですから、元の端部と飴ゴムのスキージ上端は銅片で補強されています。側面に真鍮細釘打ち留め。出刃包丁に似ているので「出刃篦」

染工糊付け出刃糊篦 18x 3T x 95 Lmm   25g

握り柄を一体に成形して飴ゴムスクレーパーを挟み細釘で固定、元口に割れ止銅袖金具打ち込み。

台湾檜(紅檜)は、軽く軟い材質でネバリはない。作りやすく、見栄えもよいのですが、最も力がかかる重要な部分は斜目になり木目が割れて角が欠ける。ゴムが曲がり捩れるようになります。外形を倣い、木目の材質・耐久度を無視した作りです。

困ったことに、販売側では買換寿命の短いほうが望まし、作業塲に傷んで使えなくなった篦が溜まります。

糊付け篦飴ゴムスキージの咥え改良  目詰み良質材の柾目と板目材ジョイント

 従来は、刷毛・篦の最適材として檜の目詰み端材・落としがつかわれてきました。糊置き篦は柄が傾斜していますのでゴム咥え部を薄板でクロスバンド積層別パーツにして、柄につければスクレーパー飴ゴムには無理な力がかかりません。

国産優良材と専問職がいなくなり、安く簡単につくって輸入されるために、糊付け染工具の品質が落ちています。

最近では、藍染めに糊付けをする本職がいなくなり需要は減り、また消耗品なので値段は高く出来ず、国内では篦を制作する専問職がいなくなりました。

細かな染め渋紙型模様には、手製の木べらを削って使用。因みに、木篦は販売品では十分な性能を果たさず使えません。消耗すると使い捨てにしていますが、先端部の替え口式嵌め込み構造も考えられます。

木工産業では、木目だけでなく樹種・材質のミスマッチ、誤った使い方が目立つようになりました。

台湾檜(紅檜)の薄板柾目使い

 芯材は、赤褐色、辺材は淡褐色 台湾温帯亜高山林に巨木が多かったが、日本軍統治下で伐採が進み、木材資源を多用したことによる枯渇が起きる。

ソフトな材質で感触がよく、加工性は高樹齢材は特に目詰み、脂分が多く水に耐久性があるが薄板の柾目使いは割れやすい。木目は美しく、上質な建築材・建具材として利用されてきましたが、森林保護のため伐採禁止になり、現在では商業材としての流通は見かけません。

国産材檜・杉の刷毛木地 柾・板目使用

訪問取材記録 20170529 : 浜染工房  浜 完治

Blog :http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/1577

〒 390 – 0828  長野県松本市庄内2 – 2 -41   TEL.FAX. 0263 – 26 – 3945

※染料材料取り扱い:東京「藍熊染料」 京都「田中直染料店」

(出刃篦:サイズ:豆 小・中 一番 ~三番 大一 大々 @ 1,800- ~ 5,000- )

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木の総合学研究 2017-2019  「台湾檜糸柾目材利用」「針葉樹木目の用途間違い」「染工具・出刃糊へら」

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