巨樹見学紀行木と人間の関わり木の内科木工

栃の王国−5 栃巨木製材見学会「栃には、赤・白・ピンク・瘤栃がある」

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

新月伐採の次は、巨木切り分け、内部をみる挽材立ち会い、まさしく木の内科ライブ見学です。

木材は、水分を上げている期間に伐採すると、カビ・腐りが起き、水分抜けにより細胞収縮が大きく、反り変形・狂いを引き起こします。冬の新月伐採は、素材の安定・色調など品質価値を高くするための月齢にあわせ、自然のリズムを尊重した特別な作業ですが、良質な素材を得て、最高度の配慮をし、貴重なサンプル材を残す試みでもあるのです。
はじめに、木目を読み、挽き割り方向・寸法を検討します。一番狂いの少ない挽材割り付けをします。私がカット前に生木の内部診断・墨付けをしているシーン「木口割り」。
栃巨木製材のガイダンス・木樵の五十嵐 馨氏と
栃の樹には、芯部の赤褐色部が多い「赤」、周辺部白い部分が多い「白」、中間のピンク、全身瘤入りの「瘤」があります。実際に多数の個体を切って現場で知り得ることですが、樹皮の違いにも傾向があります。
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栃(白)
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栃(赤)
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栃(ピンク)
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栃(瘤)
製材機にかける前に樹体を良く観察し、曲がり・凹凸・節目・虫喰い・内部腐れや性質を見抜き、台車にのせると、どんな木目がでるか視線が集まります。バンドソーから切り離された瞬間が一番美しい。木の命のボリュームが現れ、鮮烈な美しい挽き肌がでると感動します。表面から芯材に近い部分ごとに木目や色の変化がでてきて、鮮度の高い質感・表情が魅力的にみえます。
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用材には、乾燥したあとに切削しないとわからない事が有り、生身の魅力に惹きつけられるとイメージを膨らませ、欲がでて高い買い物となるも多いのです。時間経過とともに、材色は空気にさらされてどんどん変化し、木材の標本・サンプルは乾燥されて削られた生きていない死んだ材を見ているのです。生の時間は、2週間ぐらいです。(製材:堀木材(有)会津坂下町)
製材後のカビ止め作業と材質チェック、2寸厚板談義
製材時頒布・購入特典は、森直、見学者特別価格。
樹の本には、樹種の中に赤や白、青、黒など材質・科学成分・DNAの差違はまだ記載されていないのです。これからの面白い研究課題。
タモ・コナラ・アサダ・タブ・楠・檜・唐松・水目・ブナ・鬼ぐるみ・黄蘗・ニガキなど多くの樹種に色違い、材質組織差があります。色調の違い、硬材軟材、目詰まり・粗目、牡丹状の入芯の有無、香り成分差など、亜種や個体差ではなく、雌雄・別種とすべきものがあります。
更に、立木の場所での経年観察・取材から伐採・挽き材サンプルを得るのは極めて困難、各地の全樹種サンプルは、きの遠くなる終わりのないプログラムになります。出会った木の記録・資料集積を順次進めて行くしか有りません。30年以上かかりそうです。
全形標本は大きすぎて部屋には入らず、樹種の多数、標本学では引き出しカットサイズになります。「木」はまだ小さな標準的カット標本のままです。産出地・伐期・どこの部位なのかは判らず。恐竜は全形標本があり、見世物で人気を集めますので博物館が成り立ちますけれど、木の研究は地味です。
未知の領域が沢山あり、既存の専門知識は、かなりおおざっぱです。出会った機会に現物収集を続けてきましたのでDNAサンプルや木の内科研究資料をどっさりストック 。お楽しみはこれからです。
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「木の総合学研究 2013-2019 「栃の大木製材見学会」

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