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柿剥きフルーツ鉋レビュー  孟宗竹と柱時計ゼンマイ再生鋼刃を活かした鉈割り平反り台 KAKIの優れた手仕事道具を伝える。ハンドツールコネクション-18

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

機械剥きが出来ない形でも、一枚刃の棹鉋は剥き実肌を素速く整え、瑞々しい果肉を痛めず。抗菌作用のある天然竹材と柿渋は衛生的で絶妙な取り合わせ。成長の早い孟宗竹に柱時計ゼンマイ鋼を再生利用した柿剥き鉋は、近隣で使われる便利でおおらかな村役手仕事。シンプルで安く、地元だけの需要伝承からパティシエ・調理道具にも出世させたい「KAKIフルーツ鉋」エコツールジャパン。

名産渋柿「伊自良大実」は、渋含有量が最も多い品種で皮剥き、吊るし連柿にして干し柿をつくります。その柿の皮剥きは機械向きが出来ない形で、果肉もやわらかく手剥き仕事。膨大な数量を剥くために、素速く剥ける専用刃物を考案して地元専用で伝承されてきました。再生鋼と自生する自然素材だけでつくる柿剥き道具は、シンプルで衛生的、しかもローコスト。KAKIは、世界に広まったフルーツですが、この果実皮剥きは、台鉋の最も単純な原理的な構造なので、応用できる分野・職種も拡がる可能性が大きいと判断しました。竹製、薄刃と角度が決め手です。

柿の実皮剥き鉋の手仕事

秋に柿の実が熟れ始めるころから、竹台材と時計ゼンマイ鋼の刃を調整して地元柿栽培農家用に制作されています。梅田弘司氏の仕事場に二月に連絡し、秋に始まる定番作業を訪ねました。

柿鉋工程
① 孟宗竹4-5年ものを裏山から伐り出す

② 節を落とし玉切り・鉈割り 荒取り


③ 自然乾燥 軒下で約50日 から2ヶ月


④ 切り刃 柱時計ゼンマイを鏨で切断 グラインダー・砥石で研磨して刃付け

 
⑤ 定寸に鉈割り整形 鉋と金鋸で巾・長さ・厚みを揃え刃口部分を台鉋で平に削る

⑥ 刃入れ位置を頭部に定規をあて墨付け 固定刃型に差し込み刃角度を写す


⑦ 台抑え治具に挟み、頭部を鋸挽き

 
⑧ 台抑え治具で台表から鑿で刃口を削り、切出し小刀で刃口・コッパ(皮)返しを整形

台表・刃押さえ溝位置出し墨付け治具と寸法定規


⑨ 刃抑え溝角度治具で墨付け


⑩ 金切り鋸刃で押さえ溝挽き
⑪ 頭先端部カット


⑫ 鉋刃打ち込み 刃先と刃口調整 試し削り。
刃の戻しは「やっとこ」を使う。

 

*刃の仕込み・刃角度は目見当で切り、測ってはいない。滑らかに削れるように刃口・刃の出具合を調節。

刃角度は寝かせると刃先の引っかかりが良くない、滑らかに剥けない。刃を起こし過ぎると、むしりちぎれる。刃先の出と刃口の調節が切れ味を左右。長い削り皮がでるのが理想的で、素速く剥くことができる。

鉋台材料

竹は裏山で自生している 4 -5 年生の孟宗竹で元側は堅く太い。肉厚が厚過ぎるのと先っぽは細いので、中間の1/3 部分を使う。台裏・表皮側は緻密、繊維が通直で内側・台表へ向かうと軟質になる、しっかりした材質なので切り込み、刃口削りはしやすい。割り竹台肌は、曲面で両木端反りを活かして刃口部分だけフラットに削り、果実にあたるところだけ削れる天然の反り台となります。

水を揚げなくなる八月末から9月初旬に裏山で伐採。節をはずして荒割りし、50日 ~ 2ヶ月間 軒下で自然乾燥。

孟宗竹は成長が早く、衛生的で堅い表皮には油気があり、緻密で内部は傾斜組織でネバリや抗菌性があるクリーンな材質です。自然乾燥は薄日影干し、表裏返して反りを抑える。

 

鉋刃 柱時計(一週間巻き)ゼンマイ鋼の再生利用

ゼンマイは、鏨で切り、グラインダーで成形し砥石研磨、刃付けは紙がすっと切れる程度
ゼンマイ刃は薄くしなやで、しっかりしてこわばる皮に滑らかにあたります。
因みに、カッターナイフブレードでは、硬く両刃で良く剥けません。
ゼンマイは、時計修理をされている弟さんから供給されていますが、次第に入手がむずかくなり懸念される。

 

仕様:

鉋台 孟宗竹 寸法:頭部 30mm x 尻 28mm x 台厚 9T mm x 台長 142 ~143Lmm /182 ~185mmL  (1~2mm の変動あり)

鉋刃:時計ゼンマイ鋼カット 22 – 20mmW x 19H x 0.4Tmm 刃付け研磨

刃仕込み角度:約50° (50 ~53°) 刃口クリアランス 0.3 ~ 1mm

頭部斜めカット34°~ 38°  総重量 22g− 25g   / 長台 32g – 35g

手作業で切り削りは目見当、自然物が相手なので量産品のように型にはめず、精密寸法に仕上げない。

頒布:@ 500- (地区内ボランティア価格)

鉋刃は研がずに1000個ほどは続けて剥くことができる。
柿渋で色が変わり、切れなくなると湯拭きして清掃。植物性オイルで油拭きすれば使い続けるが、1シーズンで使い終わる。刃先渋からみをきれいにして手入れして翌年も使う人もいます。
刃を抜いて研磨することはしない、使い切り鉋刃。因みに、カッターナイフブレードは、堅く両刃で良く剥けません。小振りで刃先も小さく、刃当たりと握り手と持ち手の動かし方を工夫する小脳訓練にもってこいです。素朴な構造ですが、果肉を痛めずに滑らかに綺麗に削れる優れものです。

手持ちで柿実皮スピード薄けずり


先方を掴み、鉋刃をあて、回転させつつ蔕周りから削り始めます。次に縦に下ろし周囲を削りおとします。伴侶の美津子さんの手剥きは十数秒。機械より早く、さすがのベテラン。お見事です。

親の背中で覚えた技能

子供の頃、父親が制作していた仕事場で見ていた記憶で再現復刻されたもの。教えてもらった手仕事ではないのですが、歴代続いて地元柿果樹農家を支える村役となりました。孤高現職の82才です。

柿剥き鉋制作技能者:梅田弘司 氏

〒501 – 2131 岐阜県山県市平井691 – 2 (旧伊自良村平井地区)

TEL.0581 – 36 – 3629

 

*この「柿剥き鉋」は、「岐阜県のカキ 生活樹としての屋敷柿とかかわった暮らしの歴史」の著者 石垣和義氏のご紹介から、梅田弘司氏の仕事場で制作に関する教示をうけました。

他の品種で削り試し

 

松本渋柿では、皮剥きは良好でした。紅玉林檎では、肩・尻の水平部分は削れますが縦方向には果肉がくずれて刃口詰り。柿に比べ皮が薄く弱いのですべる。刃角度を少し寝かせ、球が大きいので刃口をあけ刃幅を拡げると良さそうです。柚・レモン、チーズ、チョコレートでもためしませう。細く握りやすい。刃先が台頭の真ん中に僅かに出る程度なので,子供にも使わせることができます。

 

刃物・鋼材の再生・転用 「包丁・時計・鉋・小刀・鑢」

明治から昭和初期まで木工二枚刃の台鉋の裏金には、煙草包丁が使われていました。煙草葉を刻む鍛造薄刃は、専売公社払い下げ品でしたが薄刃で手打ち鋼材ですので、切断して耳を曲げるだけですぐ使いのべんりな工業資材でした。ゼンマイ鋼も刃物に転用されています。品質は高く、焼き入れが上手く、硬度とネバリがあり、職人が転用するのに好都合なもの。この柿鉋は、指物・木型職の竿鉋に近い構造です。

■雑誌取材記事:「ナイフマガジン 2013年4月号 No.159  p.80 – 85  はたらく刃物 柿剥き」  文:かくまつとむ 写真:大橋 弘

伊自良平井地区の柿栽培

伊自良大実の果樹園 (岐阜県山県市伊自良平林地区)

「青檀子」種 元接ぎ木巨樹 樹齢三百数十年 目通り外周 2m  樹高18m 余

病害虫に強く長年渋柿実をたわわにつけきた江戸時代からの古木

柿果樹林 大型品種「冨士」

昨年は、表年で豊作。今年は裏作にあたりますが、大豊作となりました。例年、養蜂業者が入りますので蜜蜂受粉が良い実りをもたらしたようです。

「カキ」に関する歴史資料が多い事由

江戸時代の俳人松尾芭蕉は各地を歩き、「里古りて柿の木もたぬ家もなし」と詠み、至る所にみかける生活樹でした。柿の用途は多く自然の恵みですが、近年では海外でも栽培され、KAKIは世界のフルーツになりました。

まだ国内の柿産地は多く、地方の家の庭先、畑の縁、道路などにも育っている姿をよく見かけます。果物だけで無く周囲の環境を清潔にする暮らしに根付いた樹木を大事にしてきたのです。日本を代表する身近な果樹ですから資料も多く集まります。

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木の総合学研究2017 「柿皮剥き鉋」「竹材・再生ゼンマイ鋼刃のエコReユース」「共生生活樹」

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