「・・・の木」薬用樹木

メグスリノキ  薬用レッドリスト樹木−1. 

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

疾病治療用天然薬木は多く、森は多様性に富む薬品資源ストック・民間医療現場です。

この「目薬の木」は、伝統医薬材として古から「薬用樹」として重用されてきました。その化学成分が眼病予防、抗炎症、目の視神経、肝機能に作用する物質を含有していることが近年、薬学的に実証されています。
名前からして、民間伝承もの、個人的な服用ならばフリーです。カエデの系統ですが、独自の樹相・テクスチャーがあり、稀少木です。サンプル材を得る機会は、個人所有林内で偶然に出会うことを期待。今まで見た数カ所の自生スポットは、谷沿いの傾斜地です。水気を好むのか、伐り出しが困難な立地。薬名がそのまま樹名で、重要な用途だったなごりです。
「目薬の木」の基礎研究や、伝承だけで無く実際の採取治験、治療記録は有るんだろうか? 薬学分野では、成分医療効果が目的ゆえ、生態・樹木学・材料学、民俗学の分野での資料、調査・研究記録が手元にありません。「カエデの一種」程度の扱いのようです。
薬理成分は、動けない樹体が化学部質を生成しての昆虫・菌類・動物を寄せ付けず、自己防衛をはかるためのガード物質。森林から進化してきた人類は、そのホームグランドで健康薬用に食べてきた生得依存ソース・本能的な知恵があります。未文明化で現存している密林生活民族には、祈祷・治療師が「森には、全ての薬がある」と説明する取材番組を時々みました。メディカルハンター・製薬会社のターゲットです。
P1100568-1
乾燥樹皮
P1100583-1
P1100576-1
翼果・枝葉
P1100589-1
樹皮・枝葉を乾燥し、煎じ薬として昔から伝承され、現在でも使用されて山間部の物産店頭で見かける事があります。薬理効果をうたうと、薬事法違反になるため、薬として一般販売が出来ません。乾燥樹皮は、前頭葉に染みこむ高貴な独特の薬物の香りがします。翼果をみれば直ぐに楓系ということがわかる形状・質感。専門書・ネットに記載あり、現物標本写真は見当たらず。
現存、重要保存樹、天然記念物指定で残されています。長野県では、指定天然記念物。北相木村下新井の小さな神社祠の裏にあり、大木です.相木川とうだの沢合流地点にあります。谷沿いの湿った環境に成長。この木の薬効成分がすぐれ、高い値段で売れるので見つけると切り尽くされてしまう。儲けて長者になり、財を成したお話や壮大な姿から別名「長者の木」。大事に大木で残され、わずかに残存しています。
知る人ぞ知る貴重樹木の一つ。会津地方でも最大級の大木が人里の墓場脇にありました。(公開すると、たちまち伐られてしまうので口外しないこと。長野県では、北相木村・松本市に指定樹、植生調査はごくわずか、未確認レッドデータ樹です。)
樹皮は、薬用で高価ですから,見つければ直ぐに業者は嗅ぎつけて伐ってしまう。皮を剥いだ原木丸太は痛み、市場には出せない上、産出もまれです。また、強靱な堅木で家具・道具に使われるようです。DNAサンプルを残したいのですが入手困難樹種の一つです。目薬の木を使い、染色や釉薬,工芸材料の活用などは、これからの研究テーマ。人間の活動で姿を変える森林、ハナノキ同様、自然繁殖が難しい樹種なのかも知れません。
近代薬は、自然生物薬材を化学的に合成医薬にして発達してきましたが、未来の生命医療資源植物を保全し、伝承されてきた活用方法を次世代へ継承していくことも重要な責務です。自生地スポットをご存じでしたら、口外しないでいただきたい。
木の総合学研究2013 「薬用樹木」
 ⓒ 2013 Kurayuki, ABE

All Rights Reserved.  No Business Uses.

複製・変形・模造・転載作り変え・画像転用、ロボット・Ai、業務利用を禁じます。

▼ お気軽に一言コメントをどうぞ

次の記事: